悪役令嬢が攻略対象の幸せを願っては駄目ですか?

こうやさい

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始まったはずの何かと現実の

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「そうだね純粋に義兄だと思ってくれていた方が嫌われなかったかもしれない」
 いえ、別に嫌ってないというか、……むしろ嬉しいんですけど。
「けれどここで隠して、もし中途半端な時期に知られてしまったら、今度は準備する余裕もなく出て行くかもしれない。それはさらに心配だから、だったら事情を聞いてくれるうちに説明しておこうかと」
 ……妙な喩えですけど、ストーカーに悩まされて、相談した人が引っ越し先を紹介してくれたけど、実はその人がストーカーでしたとか? 確かに事情を聞くより先に逃げますわね、やばいフラグしか見えません。
「決して騙すようなことはしない。信じてくれ」
「信じ……ます、けど」
 というか、だとすれば逃げる理由がなくなっているような気が。
「……お義兄さまは妹としか思えないのに婚約を押しつけられそうになって悩んでいた訳ではありませんの?」
「誰がそんなことを?」
「誰って……」
 ゲームのお義兄ルークさまが。
 ……そういえば確かにこちらでは誰も言ってませんわね。少なくともわたくしは聞いておりません。
「近頃何かお父様方と頻繁に話し合っていたのは?」
「逆の理由だな。婚約者候補の末席に加えてくれないかと頼んでいた。そんな話だったらむしろ早く終わっていたと思う」
 それでは婚約者候補が複数いるように聞こえるのですが?
「殿下に婚約破棄された女の婚約者になりたがる方なんていないかと」
「あれはそれでも幼い頃の話だし、お前の評判はむしろいい。少なくとも政略上はそこまで問題にはされていない」
 意外ですわ。誰も相手にされないせいもあってゲームのリーゼロッテはあそこまで執着していたのかと。……そんなに好きでしたのね。
 なにか、改めて緊張して参りました。
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