婚約者に婚約破棄かお飾りになるか選ばされました。ならばもちろん……。

こうやさい

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「おまえとの婚約を破棄させてもらう」
 事前に約束したにも拘わらず、家を訪ねたわたくしを延々と待たせていた婚約者さまは、待っていた部屋きゃくしつの扉をあけたとたんそう宣言いたしました。
 一部が壁と婚約者さまの身体で隠れているけれど、女性が支えるように寄り添っているのが見えます。
 ……まぁ、このところ連絡をしても会いすら出来なかった事を考えると良い方なのでしょう。

 婚約者さまがそこから動こうとしないので椅子から立ち上がり婚約者さまのところに向かいます。
「近づくな」
 小声ながら鋭く言われます。
「婚約の破棄は致しません」
 なので立ち止まってその場で告げました。

「は?」
 婚約者さまが惚けます。
 いやだわ、売り言葉に買い言葉で了承するとでも思われていたのかしら。

「ふん、お飾りにされると分かっていても妻の立場にしがみつく事を望むか」
 気を取り直した婚約者さまが悪態を吐きます。
「ならは好きにすればいい。愚かだな」
 完全に怒らせようとしてらっしゃいますわね。

「ですから妻に」
 なので答えました。
「たとえその立場でいられる時間が短くとも最後まであなたの傍に」

 婚約者さまは完全に固まりました。
 ……そこまで予想外だったかしら?

「す、すぐに離婚すると分かっているなら……」
 婚約者さまの声がところどころかすれています。
「そういう意味ではありませんわ」
 思わずころころと笑ってしまいますわ。

「死が二人を分かつまで一緒にいたいと言っております」
 婚約者さまの顔色が凄いことになってますけれど、これは会話内容のせいですわよね?

「…………っ。結婚してすぐわたしを殺す気か」
 そこまで悲壮な表情でおっしゃらなくても、その程度で傷ついたりはしませんわ。
「まさか。できうる限り長くその日々が続けばいいと思ってますわ」
 それでも終わるときには終わってしまうものですけれど。

「あなたが病気になったという話は知っております」

 気が抜けたのか婚約者さまが身体をふらつかせたので慌てて駆け寄って支えます。
 真実味を出そうと後ろの彼女以外をこの状況で遠ざけるからそうなるんです。さすがに男一人を支えるには文字通り荷が勝ちすぎでしょう。

「あ、いや、彼女は……」
 ちらりと彼女に視線を向けたせいか婚約者さまが弁解を始めそうな気配がします。詰めが甘いですこと。
「母親の違うお姉さまだそうですわね」
 お若く見えますけれど。
 湾曲にいって若気の至りがあったそうで……きっと婚約者さまがこんなことにならなければ忘れられたままだったでしょうね。
「!? どこまで知って!?」
「話はとりあえず席に着いてからにいたしましょう」
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