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永遠のための宝石
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昔、とある国に美しい令嬢がおりました。
その令嬢には同じ屋敷で暮らしている叔父がおります。
叔父は姪をそれはそれは呆れるほど溺愛しておりました。
けれどその溺愛は家族としてのものではありませんでした。
姪が幼いうちは自分ですら区別の付かないものでしたが、長ずるにつれそれが違うものだと自覚しました。
けれども叔父と姪はこの国では結婚出来るものではないですし、そもそも結婚出来ればそれでいいという感情なのかもわかりません。
それでもいずれは姪も結婚が決まるでしょうし、そうなれば叔父も何時までも同居は出来ないでしょう。
姪の両親はきちんといるのです。本来叔父がここにいる必要はありません。もしかしたら先に叔父が家を出される可能性もあるでしょう。
叔父はどうにか姪とずっと一緒にいられる方法はないかと考えました。
その頃巷では「宝石病」という奇病が流行っておりました。
病にかかる条件は分かりませんが、高熱が出て必ず死んでしまうのです。今のところ治す方法はありません。
それがおそろしい病ではなく奇病と呼ばれるのは、亡くなった途端遺体が瞳と同じ色味の一握りほどの量の小粒の宝石になってしまうからです。
呪いだとか、逆に祝福だとかいろいろな説が出ましたが、死ねば宝石になるという結果は変わりません。
それでも遺体のはずだからと棺に納め埋められますが、墓荒らしが掘り返して売ってしまうことも多く、そのせいで普通の宝石までも値崩れをおこし、余計に見分けがつかなくなったとか。
それでも普通遺体であるものを分かって買う人はいません。原因が分からない以上その宝石から移る可能性もあるのですから。
けれども叔父はその石を買い集めました。
なぜなら姪を宝石にして永遠に自分のものにしてしまおうと考えたからです。
その執着は存在そのものに及んでおりました。
叔父は姪にせっせと宝石を贈りました。
叔父が値崩れした宝石を溺愛している姪に贈ってもいつもの事だと誰もまだ不審に思いません。
ましてや遺体を贈っているなどと考えもしないでしょう。
それに罰が下ったのか、あるいは単純に遺体に触れすぎたのか。
宝石病にかかったのは叔父でした。
こうして叔父は亡くなってしまいました。
けれど墓に入れられたのは叔父の遺体ではありませんでした。
瞳の色の宝石になってしまった叔父の遺体を、姪が手持ちの似た色の宝石と隙を見てすり替えたからです。
叔父に貰った物といえど叔父当人には替えられません。
折に触れ形見となった宝石を眺める姪を見て、かわいがってくれた叔父の死を悲しんでいるのだと周りは涙しました。
誰も姪が持っているのが叔父の遺体そのものだということも、満足気にしていることも気がつきませんでした。
姪は叔父がなにをやっているか気づいていました。
気づいて宝石を受け取ったのです。
どちらが宝石に、いっそ両方がなったとしても構わなかったのです。
それでずっと一緒にいられるのなら、と。
こうして姪は永遠に叔父を手に入れることが出来たのです。
その令嬢には同じ屋敷で暮らしている叔父がおります。
叔父は姪をそれはそれは呆れるほど溺愛しておりました。
けれどその溺愛は家族としてのものではありませんでした。
姪が幼いうちは自分ですら区別の付かないものでしたが、長ずるにつれそれが違うものだと自覚しました。
けれども叔父と姪はこの国では結婚出来るものではないですし、そもそも結婚出来ればそれでいいという感情なのかもわかりません。
それでもいずれは姪も結婚が決まるでしょうし、そうなれば叔父も何時までも同居は出来ないでしょう。
姪の両親はきちんといるのです。本来叔父がここにいる必要はありません。もしかしたら先に叔父が家を出される可能性もあるでしょう。
叔父はどうにか姪とずっと一緒にいられる方法はないかと考えました。
その頃巷では「宝石病」という奇病が流行っておりました。
病にかかる条件は分かりませんが、高熱が出て必ず死んでしまうのです。今のところ治す方法はありません。
それがおそろしい病ではなく奇病と呼ばれるのは、亡くなった途端遺体が瞳と同じ色味の一握りほどの量の小粒の宝石になってしまうからです。
呪いだとか、逆に祝福だとかいろいろな説が出ましたが、死ねば宝石になるという結果は変わりません。
それでも遺体のはずだからと棺に納め埋められますが、墓荒らしが掘り返して売ってしまうことも多く、そのせいで普通の宝石までも値崩れをおこし、余計に見分けがつかなくなったとか。
それでも普通遺体であるものを分かって買う人はいません。原因が分からない以上その宝石から移る可能性もあるのですから。
けれども叔父はその石を買い集めました。
なぜなら姪を宝石にして永遠に自分のものにしてしまおうと考えたからです。
その執着は存在そのものに及んでおりました。
叔父は姪にせっせと宝石を贈りました。
叔父が値崩れした宝石を溺愛している姪に贈ってもいつもの事だと誰もまだ不審に思いません。
ましてや遺体を贈っているなどと考えもしないでしょう。
それに罰が下ったのか、あるいは単純に遺体に触れすぎたのか。
宝石病にかかったのは叔父でした。
こうして叔父は亡くなってしまいました。
けれど墓に入れられたのは叔父の遺体ではありませんでした。
瞳の色の宝石になってしまった叔父の遺体を、姪が手持ちの似た色の宝石と隙を見てすり替えたからです。
叔父に貰った物といえど叔父当人には替えられません。
折に触れ形見となった宝石を眺める姪を見て、かわいがってくれた叔父の死を悲しんでいるのだと周りは涙しました。
誰も姪が持っているのが叔父の遺体そのものだということも、満足気にしていることも気がつきませんでした。
姪は叔父がなにをやっているか気づいていました。
気づいて宝石を受け取ったのです。
どちらが宝石に、いっそ両方がなったとしても構わなかったのです。
それでずっと一緒にいられるのなら、と。
こうして姪は永遠に叔父を手に入れることが出来たのです。
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