我が罪への供物

こうやさい

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全てを背負う

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 たとえばこんなことを考える。


 社会情勢は悪く、世間は厳しく、そして個人的にも不幸なことが重なり。
 とうとう出た死人の葬式のために親戚が集まり。
 膳を用意するために女性ばかりが台所に集まった。
 ただでさえ慌ただしいのに、このところの負担が重なって多くの人が苛ついていた。

 粗相をしたのか、それとも八つ当たりか。
 一人の娘が払い除けられた拍子にふらついて、壁にぶつかり頭を打った。
 どこか愉悦を感じながら眺めていた人たちも、ぐったりと崩れ落ちる娘に慌て始める。
 娘は既に事切れていた。
 葬式に遺体が増える。笑えない。

 この子はすぐ側の海にいる海神様にお嫁にいくのだと、突拍子もないことを言い出したのは払い除けた女だろうか? それとも他の誰かだろうか?
 回りが次々に同意したのは雰囲気に飲まれたからだろうか?
 両親を亡くし、幼い頃から親戚をたらい回しにされていた娘だった。
 こき使っておきながら食事もまともに与えず、問題があれば真実に関係なく娘のせいにして追い出していた。
 そんな扱いをする皆が集まっているのだから、娘の葬式代なんて出すつもりはないのだろう。
 その死に責任をとることも。

 そうして死者に鞭を打ち、娘は海に流された。
 最初は遺体が見つからないかと戦々恐々していた女達もばれる気配のないことにいずれは安堵しはじめる。
 それ以外の人も、娘がなまじたらい回しにされていたために違う親戚の家にいるのだろうと、姿が見えないことを不思議がりすらしなかった。

 その出来事は女達に秘密の共有という連帯感と不思議な精神の高揚感をもたらした。
 状況が変わっていなくても気力が増えれば出来る事が変わる。
 どうしようもないと思っていたこともそれで乗り越えられてしまった。

 これを、海神に花嫁を捧げたためだと思った人がいた。
 娘が不幸を背負い、その不幸ごと海神様が娶って下さったのではないかと。
 そしてそのことを皆に言った。言ってしまった。

 それからこの血族では女性達が秘密裏に、何かがあれば、あるいは起こらなくても間が開けば。
 他の女達の鬱屈を一身に受けた花嫁を海神に捧げるようになったのではないかと。


 昔は海に流せばそれで終わりと思われていたと祖父に聞いた事がある。
 霊や穢れなど目に見えないもの。
 汚れやゴミなど誰にでも分かるもの。
 すべてを海が飲み込んでなかったことにくれると。
 後者は海に影響が出ると現在は分かっている。そして海からわたし達に違う形で返されるということも。
 あるいは前者も無茶なのかもしれない。
 いずれはこちらに返ってきてしまうのだろう。

 それでもわたしが嫁ぐ意味が本当にあるのだろうか?
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