40 / 48
花嫁にはなれない
しおりを挟む
気がつくと、海岸に流れ着いていた。
どうも殺され損なったらしい。
海神に花嫁を捧げること、そのことを女性の血族のみに伝えていくこと。
そんな伝承を持つ一族がある。
ただあたしは違う。偶然知る機会があっただけだ。
その伝承は継母の血族に伝わっていた。
父は子連れの再婚で、継母は初婚だった。
だから伝承の血はあたしには流れていない。
ただ継母は実母と結婚する前の父と付き合っていたという過去があった。
ぶっちゃけると酔っ払ったあげくの一夜の浮気の末に子供が出来たので継母と別れて結婚したらしい。
それをわざわざその出来た子供に教えた辺り実母の親戚はくそったれだと思う。
そんな状況なので結局父と実母は別れ、あたしは父に引き取られた。そして晴れて父と継母は結婚した。
順を追えばあたしと継母に血縁がないのはわかりきっているのだが、継母の姉の娘……要するに義理の従姉妹には詳しいことは知らされていなかった。うっとうしい親戚がいなくて結構な事だ。
だとしても父の連れ子だということぐらいは知っていると思っていたのだが、そうでもなかったらしい。それとも邪推して実は継母も妊娠してて子供は父が引き取ったとでも思っていたのだろうか? なら実母の妊娠は狂言か? 今時昼ドラでもそんなものなさそうだ。
オマケに父が亡くなって、実母が既に再婚していて引き取ることを拒否したせいもあり、継母が育てることになったと続く辺り本当に安っぽいと思う。
……ある意味、誤解も仕方ないのかもしれない。
海神のいけにえは一世代に一人いればいい。
つまりあたしがもし血族で海で死んでしまったならば従姉妹は死なずにすむことになる。
その花嫁を誰にするかの話し合いを本来部外者のあたしが耳にする機会があったのだから、従姉妹もきっと知ってしまったのだろう。
だから従姉妹はあたしを海に突き落としたのだろう。
けれど血族じゃないものを海神は受け入れる気はなかったらしい。
だからあたしは生き残った。
これからすべき事は従姉妹及びその血族の女性に生存を知らせることなのだろう。花嫁はまだ捧げられていないと。
けれどあたしは帰る気はない。
帰ったら従姉妹に今度は口封じとして殺されるんじゃないかとの考えも少しある。
けれどそれならばそれでいいとも思う。
あの時、父を失い実母に拒否され継母に迷惑をかけていると縮こまっていたとき、大人はきっと建前だけで本当はうっとおしいと思っていると邪推していたとき、同年代の従姉妹が受け入れてくれたことがどれだけ嬉しかったか当人は分かっていなかったのだろう。
それこそ血族であったなら代わりに花嫁になる事もやぶさかではないと思うくらいには感謝していた。
――それを裏切られた。
年月と状況が変化したせいであって、あの時の従姉妹の行動は打算ゆえだったとは考えていない。
けれど成長していなかったあたしはそれを受け入れられない。
今すぐ死にたいと願うくらいには。
目の前には水が広がっている。
花嫁にはなれなくとも今度は殺すくらいはしてくれるだろう。
けれどもここに飛び込むことはない。
水の中で従姉妹と顔を合わせてしまったとき、どうすればいいか分からないから。
どうも殺され損なったらしい。
海神に花嫁を捧げること、そのことを女性の血族のみに伝えていくこと。
そんな伝承を持つ一族がある。
ただあたしは違う。偶然知る機会があっただけだ。
その伝承は継母の血族に伝わっていた。
父は子連れの再婚で、継母は初婚だった。
だから伝承の血はあたしには流れていない。
ただ継母は実母と結婚する前の父と付き合っていたという過去があった。
ぶっちゃけると酔っ払ったあげくの一夜の浮気の末に子供が出来たので継母と別れて結婚したらしい。
それをわざわざその出来た子供に教えた辺り実母の親戚はくそったれだと思う。
そんな状況なので結局父と実母は別れ、あたしは父に引き取られた。そして晴れて父と継母は結婚した。
順を追えばあたしと継母に血縁がないのはわかりきっているのだが、継母の姉の娘……要するに義理の従姉妹には詳しいことは知らされていなかった。うっとうしい親戚がいなくて結構な事だ。
だとしても父の連れ子だということぐらいは知っていると思っていたのだが、そうでもなかったらしい。それとも邪推して実は継母も妊娠してて子供は父が引き取ったとでも思っていたのだろうか? なら実母の妊娠は狂言か? 今時昼ドラでもそんなものなさそうだ。
オマケに父が亡くなって、実母が既に再婚していて引き取ることを拒否したせいもあり、継母が育てることになったと続く辺り本当に安っぽいと思う。
……ある意味、誤解も仕方ないのかもしれない。
海神のいけにえは一世代に一人いればいい。
つまりあたしがもし血族で海で死んでしまったならば従姉妹は死なずにすむことになる。
その花嫁を誰にするかの話し合いを本来部外者のあたしが耳にする機会があったのだから、従姉妹もきっと知ってしまったのだろう。
だから従姉妹はあたしを海に突き落としたのだろう。
けれど血族じゃないものを海神は受け入れる気はなかったらしい。
だからあたしは生き残った。
これからすべき事は従姉妹及びその血族の女性に生存を知らせることなのだろう。花嫁はまだ捧げられていないと。
けれどあたしは帰る気はない。
帰ったら従姉妹に今度は口封じとして殺されるんじゃないかとの考えも少しある。
けれどそれならばそれでいいとも思う。
あの時、父を失い実母に拒否され継母に迷惑をかけていると縮こまっていたとき、大人はきっと建前だけで本当はうっとおしいと思っていると邪推していたとき、同年代の従姉妹が受け入れてくれたことがどれだけ嬉しかったか当人は分かっていなかったのだろう。
それこそ血族であったなら代わりに花嫁になる事もやぶさかではないと思うくらいには感謝していた。
――それを裏切られた。
年月と状況が変化したせいであって、あの時の従姉妹の行動は打算ゆえだったとは考えていない。
けれど成長していなかったあたしはそれを受け入れられない。
今すぐ死にたいと願うくらいには。
目の前には水が広がっている。
花嫁にはなれなくとも今度は殺すくらいはしてくれるだろう。
けれどもここに飛び込むことはない。
水の中で従姉妹と顔を合わせてしまったとき、どうすればいいか分からないから。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる