我が罪への供物

こうやさい

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花嫁にはなれない

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 気がつくと、海岸に流れ着いていた。
 どうも殺され損なったらしい。


 海神に花嫁を捧げること、そのことを女性の血族のみに伝えていくこと。
 そんな伝承を持つ一族がある。
 ただあたしは違う。偶然知る機会があっただけだ。

 その伝承は継母の血族に伝わっていた。
 父は子連れの再婚で、継母は初婚だった。
 だから伝承の血はあたしには流れていない。
 ただ継母は実母と結婚する前の父と付き合っていたという過去があった。
 ぶっちゃけると酔っ払ったあげくの一夜の浮気の末に子供が出来たので継母と別れて結婚したらしい。
 それをわざわざその出来た子供に教えた辺り実母の親戚はくそったれだと思う。
 そんな状況なので結局父と実母は別れ、あたしは父に引き取られた。そして晴れて父と継母は結婚した。

 順を追えばあたしと継母に血縁がないのはわかりきっているのだが、継母の姉の娘……要するに義理の従姉妹には詳しいことは知らされていなかった。うっとうしい親戚がいなくて結構な事だ。
 だとしても父の連れ子だということぐらいは知っていると思っていたのだが、そうでもなかったらしい。それとも邪推して実は継母も妊娠してて子供は父が引き取ったとでも思っていたのだろうか? なら実母の妊娠は狂言か? 今時昼ドラでもそんなものなさそうだ。
 オマケに父が亡くなって、実母が既に再婚していて引き取ることを拒否したせいもあり、継母が育てることになったと続く辺り本当に安っぽいと思う。
 ……ある意味、誤解も仕方ないのかもしれない。

 海神のいけにえは一世代に一人いればいい。
 つまりあたしがもし血族で海で死んでしまったならば従姉妹は死なずにすむことになる。
 その花嫁いけにえを誰にするかの話し合いを本来部外者のあたしが耳にする機会があったのだから、従姉妹もきっと知ってしまったのだろう。
 だから従姉妹はあたしを海に突き落としたのだろう。
 けれど血族じゃないものを海神は受け入れる気はなかったらしい。
 だからあたしは生き残った。

 これからすべき事は従姉妹及びその血族の女性に生存を知らせることなのだろう。花嫁はまだ捧げられていないと。
 けれどあたしは帰る気はない。
 帰ったら従姉妹に今度は口封じとして殺されるんじゃないかとの考えも少しある。
 けれどそれならばそれでいいとも思う。

 あの時、父を失い実母に拒否され継母に迷惑をかけていると縮こまっていたとき、大人はきっと建前だけで本当はうっとおしいと思っていると邪推していたとき、同年代の従姉妹が受け入れてくれたことがどれだけ嬉しかったか当人は分かっていなかったのだろう。
 それこそ血族であったなら代わりに花嫁になる事もやぶさかではないと思うくらいには感謝していた。
 ――それを裏切られた。
 年月と状況が変化したせいであって、あの時の従姉妹の行動は打算ゆえだったとは考えていない。
 けれど成長していなかったあたしはそれを受け入れられない。
 今すぐ死にたいと願うくらいには。


 目の前には水が広がっている。
 花嫁にはなれなくとも今度は殺すくらいはしてくれるだろう。
 けれどもここに飛び込むことはない。
 水の中で従姉妹と顔を合わせてしまったとき、どうすればいいか分からないから。
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