我が罪への供物

こうやさい

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意識の枷

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 次女が生まれた。
 この子を悩ませたくないと思った。
 だから監禁しようと考えた。


 わたしの血族には女性だけに伝わる約束がある。
 海神様に花嫁を出すこと、その約束を代々血族の女性によって守っていくこと。
 伝えるのは大概長女の役目で、嫁に行くのは次女以下の役目になる。
 万一長女を嫁に出してしまったら約束がそこで途切れるかもしれないし、子孫につなげられればそちらから花嫁を出すこともできる。
 ところが妹は嫌がった。ダンスグループのヴォーカルになると、特に役目が無かったとしても止められそうな事を言って家出した。
 それでそこそこだが名前が売れて、場所がばれて連れ戻されて、泣きわめきながら海に放り込まれた。
 遺体が出てこないから疑惑のままで終わったものの、行方不明になった当時はいろいろ言われたものだ。
 ちなみに手足を縛りつけて無理矢理が正しい。睡眠薬とかは盛ってない。

 それでもほとぼりは冷めてきて、わたしも結婚できた。
 多少ブラックだが安定した会社のサラリーマンの夫に一姫二太郎今は育児に専念中のわたし……端から見ればかなり理想的で平穏な家庭のような気がするが、とにかくわたしは次女が出来ない事に焦っていた。
 本音をいうなら次女が出来るなら長男も夫も要らない。万一のために貯金はたっぷりしてある。もっとも夫が居ないのに次女が出来たら別の意味でめんどくさい事になりそうだけど。
 そんな事を思っていたけれど、もう次女は出来たのだしいいかなと思う。居れば便利なこともあるけれど夫と次女の監禁手段とならそっちの方が大事。

 大事に大事に育てるの。
 外の何もかもを見せないで、選択肢なんて作らせない。
 海神様に嫁ぐ幸せだけを教え込むの。
 そうすれば妹みたいに悩まない。
 悲しい思いはしない。

 夫が乗る車に細工をした。これで事故死するだろう。
 その車には次女も乗っていたと言い張ろう。小さいから何かに巻き込まれてしまったか、飛び出してしまって見つからないのだと。
 しばらくは身辺が騒がしいからと長女は母に預ける。息子は……まぁ、どうでもいいわ。誰かが引き取るでしょう。
 長女は母に海神様のことを教わって育つだろう。それでいい。
 そのうちに乳飲み子から目を離したことを責める人達と母親にだって休みを取る権利はあると擁護する人達が、当事者をそっちのけで争い始めるだろうから、その隙にさらに準備を整える。育児用品を買い集めても慰めか現実を受け入れられないか帰ることを願って揃えているか……適当に解釈してくれる。専用のものが必要なくなるころに立ち直り始めたふうを装えばいい。
 そうやって時を待てばいい。


 結論からいうなら計画は失敗した。
 妹が帰ってこなかったのは花嫁だからであり、夫はそこに居るのだから調べられるということを考えていなかった。
 何より意識が戻った当人が次女を乗せていなかったと証言してしまった。
 家の中を探され、見つけられた次女を取り上げられてしまう。
 代わりにわたしが閉じ込められてしまった。

 この状態で。
 あの子を嫁に出すことはできるだろうか?
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