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後編
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あるとき、新しい機械を入れるとかで、他社の技術者がしばらく会社に常駐することになった。
女史は少し顔を合わせた程度だったらしいのだが、なのに彼の近しい人の死も分かってしまったらしく、それを彼についている担当者に告げた。
担当者はだからといって別の人に変えてくれとはさすがに社外相手なのでいえなかったらしいが、休むまでにできる限り予定を消化してもらおうとそのことを直接的に言ったらしい。
彼は最初は莫迦にしていたらしいが、この会社の社員がそろってそれを肯定し詳しい話をするので次第に追い詰められるかのように信じ始めるように恐らくなったのだろう。
ある日、前触れもなく来なくなった。
急病でもと心配していたが、派遣元によるとどうも妻を家に閉じ込め最低限以外片時も離れなくなったらしい。
妻が死ぬとは限らない上、いつ死ぬか分からない訳でもないのに仕事を放り出すという状況にまず驚いた。
そして自分がこの状況にずいぶんと毒されていたということにも。
大事な人が死ぬかもしれないと言われればできる限り傍にいたがるのは当然じゃないか。
そして防げるようなら防ごうとすることも。
だからといってこちらが何かすることもなく。
代わりの技術者が派遣され、結局いつもの事だと忘れかけられていた頃。
彼の運命の日が過ぎ。
次に来たとき包丁を片手に女史を殺した。
メッタ刺しで顔も踏まれて潰されていたと証言した人はその時吐いたと言いながら思い出したのかまた吐きそうだった。
どこまで本当か分からない見てきたような話によると、彼はいつ妻が死ぬのかという恐怖と守れるのかというプレッシャーに押しつぶされそうになっていたらしい。
その状態で束縛にうんざりした当の妻に「いい加減にして」と責められ切れて自ら妻の首を絞めたそうだ。
そしてその足で包丁を買いこちらに来て女史を殺したと。
殺しながら妻が死んだのは女史のせいだと叫んでいたらしい。
入口は派遣されていたときに発行した入社証を使われたので通したと。
それを回収し忘れたのはこちらの不手際だが、そんなところだけ冷静なのが余計に怖い。
確かに女史はどんな理由と条件なのかは正確には知らないが、人の死が分かるのだろう。
それは積み重ねを見ていた俺たちが知っている。
けれどそれは殺されるほどのことだっただろうか?
告げられたのは確かに大事な人の死だったのだろうが、彼に取ってはたった一度のことだ。
たとえとしてはおかしいかもしれないが、ケンカの勢いで死ねと誰かにいわれたことはないのだろうか?
言われたら殺人予告と受け取って、言った人を正当防衛だと殺しに行くのだろうか?
恐らく冷静なら行かないはずだ。
確かに女史の言うことは当たる。
けれど言っただけなのだからある意味同じことだろう。
特に彼は信じていなかったのだからなおさらだ。
確かに当たってしまったけれど、彼の妻の死因は彼が首を絞めたことで間違いはなく、女史が手を下したわけではない。
なのに女史が殺したのだと未だ言い張っているらしい。
もちろん人の死が分かるなんて能力がある以上、何らかの理解できない力を使って自分が直接関わらずに誰かを殺すことが出来る可能性もあるかもしれない。仮定なのだから何でもありだ。
けれどそんなことが出来るならそもそも自分が死ぬような目には遭わないだろう。
その上さして面識もない相手の妻ではどこにも恨みが入る要素がない。
そして女史は無差別に人が死ぬことを喜ぶような人じゃない。
彼女は自らの死は分からなかったのだろうか?
それとも、分かっていてもこの行動を取ったのだろうか?
あるいは女史はただ最後の別れをゆっくりさせるためだけに口にしていたのかもしれない。
丁寧にそろえられた書類や、分かりやすく貼られた付箋を覚えている。
誰かと接するときは控えめでも精一杯笑顔を浮かべ、陰口を知っていただろうのにそれを恨む様子もなかった。
それでも優しい人だったということは知っていた。
そんな事があってもいつしか会社は通常業務に戻る。
ただ総務部の場所が変わり、元の部屋は空き部屋になり。
そして怪談が一つ変わっていた。
誰もいないフロアがいきなり赤く染まり黒髪で顔を隠した血まみれの女が現れるというそれは、後ろで一つに結ばれた髪しか見ていないせいで想像すら出来なかった。
だから会えるわけではないのだろう。
何のかんのと遅れていた女史の葬儀もやっと執り行われる事になった。
それにに行きたい。
そう思い休みを取ろうとすると、嫌な表情をされた。
何よりそれが彼女の不在を実感させた。
女史は少し顔を合わせた程度だったらしいのだが、なのに彼の近しい人の死も分かってしまったらしく、それを彼についている担当者に告げた。
担当者はだからといって別の人に変えてくれとはさすがに社外相手なのでいえなかったらしいが、休むまでにできる限り予定を消化してもらおうとそのことを直接的に言ったらしい。
彼は最初は莫迦にしていたらしいが、この会社の社員がそろってそれを肯定し詳しい話をするので次第に追い詰められるかのように信じ始めるように恐らくなったのだろう。
ある日、前触れもなく来なくなった。
急病でもと心配していたが、派遣元によるとどうも妻を家に閉じ込め最低限以外片時も離れなくなったらしい。
妻が死ぬとは限らない上、いつ死ぬか分からない訳でもないのに仕事を放り出すという状況にまず驚いた。
そして自分がこの状況にずいぶんと毒されていたということにも。
大事な人が死ぬかもしれないと言われればできる限り傍にいたがるのは当然じゃないか。
そして防げるようなら防ごうとすることも。
だからといってこちらが何かすることもなく。
代わりの技術者が派遣され、結局いつもの事だと忘れかけられていた頃。
彼の運命の日が過ぎ。
次に来たとき包丁を片手に女史を殺した。
メッタ刺しで顔も踏まれて潰されていたと証言した人はその時吐いたと言いながら思い出したのかまた吐きそうだった。
どこまで本当か分からない見てきたような話によると、彼はいつ妻が死ぬのかという恐怖と守れるのかというプレッシャーに押しつぶされそうになっていたらしい。
その状態で束縛にうんざりした当の妻に「いい加減にして」と責められ切れて自ら妻の首を絞めたそうだ。
そしてその足で包丁を買いこちらに来て女史を殺したと。
殺しながら妻が死んだのは女史のせいだと叫んでいたらしい。
入口は派遣されていたときに発行した入社証を使われたので通したと。
それを回収し忘れたのはこちらの不手際だが、そんなところだけ冷静なのが余計に怖い。
確かに女史はどんな理由と条件なのかは正確には知らないが、人の死が分かるのだろう。
それは積み重ねを見ていた俺たちが知っている。
けれどそれは殺されるほどのことだっただろうか?
告げられたのは確かに大事な人の死だったのだろうが、彼に取ってはたった一度のことだ。
たとえとしてはおかしいかもしれないが、ケンカの勢いで死ねと誰かにいわれたことはないのだろうか?
言われたら殺人予告と受け取って、言った人を正当防衛だと殺しに行くのだろうか?
恐らく冷静なら行かないはずだ。
確かに女史の言うことは当たる。
けれど言っただけなのだからある意味同じことだろう。
特に彼は信じていなかったのだからなおさらだ。
確かに当たってしまったけれど、彼の妻の死因は彼が首を絞めたことで間違いはなく、女史が手を下したわけではない。
なのに女史が殺したのだと未だ言い張っているらしい。
もちろん人の死が分かるなんて能力がある以上、何らかの理解できない力を使って自分が直接関わらずに誰かを殺すことが出来る可能性もあるかもしれない。仮定なのだから何でもありだ。
けれどそんなことが出来るならそもそも自分が死ぬような目には遭わないだろう。
その上さして面識もない相手の妻ではどこにも恨みが入る要素がない。
そして女史は無差別に人が死ぬことを喜ぶような人じゃない。
彼女は自らの死は分からなかったのだろうか?
それとも、分かっていてもこの行動を取ったのだろうか?
あるいは女史はただ最後の別れをゆっくりさせるためだけに口にしていたのかもしれない。
丁寧にそろえられた書類や、分かりやすく貼られた付箋を覚えている。
誰かと接するときは控えめでも精一杯笑顔を浮かべ、陰口を知っていただろうのにそれを恨む様子もなかった。
それでも優しい人だったということは知っていた。
そんな事があってもいつしか会社は通常業務に戻る。
ただ総務部の場所が変わり、元の部屋は空き部屋になり。
そして怪談が一つ変わっていた。
誰もいないフロアがいきなり赤く染まり黒髪で顔を隠した血まみれの女が現れるというそれは、後ろで一つに結ばれた髪しか見ていないせいで想像すら出来なかった。
だから会えるわけではないのだろう。
何のかんのと遅れていた女史の葬儀もやっと執り行われる事になった。
それにに行きたい。
そう思い休みを取ろうとすると、嫌な表情をされた。
何よりそれが彼女の不在を実感させた。
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