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前編
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上司に喚ばれていた隣の席の同僚が明らかに意気消沈して帰ってきた。
「大丈夫か?」
聞いてはみたものの、喚ばれてへこんで帰ってくるなんて説教かもっと悪い話だと相場が決まっている。
「……今の仕事は一週間以内に目処をつけるかある程度引き継いだら、その後しばらく休んでも構わないと言われた」
声もいつもより落ち込んでいる。
「……そうか。ご愁傷様」
釣られてこっちの声も沈み込む。
知らない人が聞けばリストラの予告をされたとしか思わないだろう。
けれどうちの場合は少し違う。
これは一週間ほど後の忌引きを認められたということだ。
なのでこれは遺族に対してのお悔やみの言葉となる。
学生の頃、ブラック企業で身内が急死したので休ませてくれと言ったら休むならもっと前もって連絡しろと舌打ちされたという話をネットで読み、さすがに作り話だろうと思った。
そして現在、別の企業に就職した当時の友人たち曰く、さすがにそこまで露骨なのはめったにいないが迷惑そうなそぶりをする人は結構いるらしい。
……めったにっていることはいるのか? まぁ、確かに急な予定変更で抜けられるとと残された方は大変なので、余裕がないときだと俺もやってしまいそうだが。
けれどうちの会社はそれがない。
主に忌引きが発生する一週間ほど前にすでに周り当人ともに抜けることに向けての準備がされ始めるからだ。
うちの社では社員の近しい人の死亡する日が前もって分かるので予告されるらしいと聞いて、最初は現実逃避の中二病としか思わなかった、それくらい奇跡的な事が起こらなければ休むのが難しいのだと。
けれど別に嘘でも妄想でもないことはしばらくすれば嫌でも理解できた。
それが始まってから仕事に追われて葬儀に出られないどころが臨終の場に立ち会えなかった事すら減ったらしい。
ただ万能ではないらしく死因や誰が死ぬかまでは分からないので、遠方に住んでる病身の母方の祖父がいよいよ亡くなるのかと思っていたら近くに住んでいた父方の伯母が事故で亡くなった……などということもあるらしい。結局かなり慌ただしいことになったようだ。
だとしても会社としては予定外に仕事を中断される可能性が減ることには変わりない。
それが分かるのは綿密なシミュレーションの結果……などではなく、総務部の女性社員の一人による予知の結果だという。
彼女はタイトなスケジュールでやっている会社としてはありがたい存在だが、社員としては身内の死を予告されるわけだから気味悪がられている。
本名はもちろん知っているが、まるで口に出せば呪われるかのように公の場と当人の前以外では皆が死神女史と呼ぶ。
当人は肩を超える長さの黒髪を一つにまとめ丸めがちな背中でおとなしく仕事をする物静かな人だ。人の死が分かるだなんてサイコパスでもなければ暗くおとなしい性格になるよなと貧困な想像力で考えたそのままの人という感じだ。
そんな噂を言いつつも、それでも結局俺たちが閉鎖空間にいたことには変わりない。
された予告は粛々と受け止めていた。
誰も疑う人はいないし防ごうと考える人はいなかった。
だってそれがいつもの事なのだから。
「大丈夫か?」
聞いてはみたものの、喚ばれてへこんで帰ってくるなんて説教かもっと悪い話だと相場が決まっている。
「……今の仕事は一週間以内に目処をつけるかある程度引き継いだら、その後しばらく休んでも構わないと言われた」
声もいつもより落ち込んでいる。
「……そうか。ご愁傷様」
釣られてこっちの声も沈み込む。
知らない人が聞けばリストラの予告をされたとしか思わないだろう。
けれどうちの場合は少し違う。
これは一週間ほど後の忌引きを認められたということだ。
なのでこれは遺族に対してのお悔やみの言葉となる。
学生の頃、ブラック企業で身内が急死したので休ませてくれと言ったら休むならもっと前もって連絡しろと舌打ちされたという話をネットで読み、さすがに作り話だろうと思った。
そして現在、別の企業に就職した当時の友人たち曰く、さすがにそこまで露骨なのはめったにいないが迷惑そうなそぶりをする人は結構いるらしい。
……めったにっていることはいるのか? まぁ、確かに急な予定変更で抜けられるとと残された方は大変なので、余裕がないときだと俺もやってしまいそうだが。
けれどうちの会社はそれがない。
主に忌引きが発生する一週間ほど前にすでに周り当人ともに抜けることに向けての準備がされ始めるからだ。
うちの社では社員の近しい人の死亡する日が前もって分かるので予告されるらしいと聞いて、最初は現実逃避の中二病としか思わなかった、それくらい奇跡的な事が起こらなければ休むのが難しいのだと。
けれど別に嘘でも妄想でもないことはしばらくすれば嫌でも理解できた。
それが始まってから仕事に追われて葬儀に出られないどころが臨終の場に立ち会えなかった事すら減ったらしい。
ただ万能ではないらしく死因や誰が死ぬかまでは分からないので、遠方に住んでる病身の母方の祖父がいよいよ亡くなるのかと思っていたら近くに住んでいた父方の伯母が事故で亡くなった……などということもあるらしい。結局かなり慌ただしいことになったようだ。
だとしても会社としては予定外に仕事を中断される可能性が減ることには変わりない。
それが分かるのは綿密なシミュレーションの結果……などではなく、総務部の女性社員の一人による予知の結果だという。
彼女はタイトなスケジュールでやっている会社としてはありがたい存在だが、社員としては身内の死を予告されるわけだから気味悪がられている。
本名はもちろん知っているが、まるで口に出せば呪われるかのように公の場と当人の前以外では皆が死神女史と呼ぶ。
当人は肩を超える長さの黒髪を一つにまとめ丸めがちな背中でおとなしく仕事をする物静かな人だ。人の死が分かるだなんてサイコパスでもなければ暗くおとなしい性格になるよなと貧困な想像力で考えたそのままの人という感じだ。
そんな噂を言いつつも、それでも結局俺たちが閉鎖空間にいたことには変わりない。
された予告は粛々と受け止めていた。
誰も疑う人はいないし防ごうと考える人はいなかった。
だってそれがいつもの事なのだから。
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