あらすじから逆算する『結局悪役令嬢?』

こうやさい

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死に戻り[ループはSFですかファンタジーですか?]

本当に愛していました 後

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「次に目を覚ましたときはもっと時が巻き戻っていましたわ。ですから今度はこの国の発言力を高めることにしましたの。いつ飢饉が起こるか、いつ災害が起こるか、疫病が起こるか、それによって開発された対策に防止法……すべてを覚えていませんが出来る限りそれを駆使してとても発展を遂げましたのよ」
 だとすれば夢のような話だ。
「宗主国が対等どころか心持ち下手に出るほどでしたわ。現物は取り上げることが出来ますけど、技術は無理矢理には育ちませんもの。ですからその時はその功績によって私は殿下の婚約者のままでしたの」
 ならば何も問題がないのではないかと思う。彼女が言うようにもし私と結婚出来なかった不満から時を繰り返しているのなら、だが。
「姫様とも会ったことがありますわ。やはり殿下を素敵だとおっしゃられました。その時、殿下はどう返されたと思います?」
 突然振られても困る。
「……特に当たり障りのない礼でも言って褒め返したんじゃないか?」
 よくやる貴族の子供への対応と同じだろう。
「ええ、そんな感じでしたわね。姫様をかわいらしいとおっしゃい、『うちの婚約者はこんなに生意気なのに』と」
「? それが何か問題があるのか?」
「もしかしたら男性同士の軽口や、姫様しかいないところでの発言でしたら問題なかったかもしれませんわね。けれど私はこの耳で聞いてしまいました」
 よほど辛かったのか初めて表情が歪む。
「もうその時には死に対する忌避感がずいぶんと薄れていましたので、その場で隠し持っていた短剣で首を掻ききって死のうとしましたわ。死にきれませんでしたけど」
 怖いことを言う。
「その後おとがめがあったのは殿下の方でしたわ。殺されはしませんでしたよ? 私はその後傷が元で亡くなりましたが」
 その後自分がどうなったか想像はしたくない。だが、そこまで問題発言なのか?

「次に目が覚めたのはその前と同じぐらいの時期でしたわ。私、一応反省しまして出しゃばりすぎないように気を付ける事にしました」
 勢いのまま襲ってこられたらどうしようとうっかり思っていたので胸をなで下ろす。
 そう、言っていることは無茶苦茶なのにどこか否定できない説得力がある。
「出来る限りさりげなく殿下に助言し、殿下自身が災害の予兆を見抜いたり対策を思いついたように思い込ませました。……精神年齢も高くなればそれくらい出来るんですよ」
 大人びた表情が信憑性を強める。
「結果そこそこに国は栄えましたわ。そしてやっぱり姫様は殿下と結婚したいと言い出しました。一応それを伝えられはしたものの今回のような強制力はないものでしたけれど」
 今度こそ特に問題はないだろうと思ったが。
「それで殿下はどうなさったと思います?」
 尋ねる以上返事は彼女にとってよいものではなかったのだろう。
「姫を、取ったのか……?」
「ええ、自国の貴族の娘よりも自分にはふさわしいと」
 増長しているとせめられている事が嫌でも分かる。
「確かに露骨に役にたたなくともずっと一緒にいた存在をそんな簡単に捨てるんですよ」
 そう言われると確かに酷いような気がしてくる。
「……また、自殺でも計ったのか?」
「いいえ。だってもう殿下には醒めてしまいましたもの」
 穏やかに微笑う。
「それでも元婚約者が邪魔だったのか誰かに暗殺されてしまいましたけど。どちらの指示だったのかしら?」
 私なのか姫なのか。

「そして次に目を覚ましたときも、既に婚約は整っていましたの。ですからもう殿下には何もせず、破棄に備え、おとなしく受け入れようと思い実行したところです」
「つまり、今なのか?」
 本当にそんな能力や技術を持っているのなら手放すのは惜しい。
「宗主国の圧力に屈したが、愛しているのはお前だけだ。日陰の存在にしてしまうだろうがどうか私のそばにいてくれないか」
 掴んだままだった肩に少し力を込める。今更ながら素肌の滑らかさを意識する。
「そんな言葉を今更信じるとお思いですの?」
 けれど手を振り払わなかったんだからまんざらでもないのだろう?
 考えたらあの小娘が育つまでの間、気軽に抱ける女がいないのもどうかと思うしな。
「嘘じゃない。今までお前が見てきた私は最低だったかもしれないが、今の私は違う。信じてくれ」
 自分でもそう思い込む。
「ならば何故婚約を破棄したことを謝る前に悲しまないことを責めたんですの?」
「そっ、それは同じ気持ちでいて欲しかったから……」
「ただ、自分を一番に思わなかった事が許せなかっただけでしょう?」
 思い込んだつもりだったのに、咄嗟に言葉が出て来なかった。
「あなたが私を愛したことなどなかったわ。貴方が愛したのは自分と自分の役にたつものだけ」
 今の自分だけでも反論できなかった。

 手が肩から外される。あらがうだけの気力は残っていなかった。
「今後、何度戻ろうとも、出来る限りあなたと関わらない生き方を選ぶことにしますわ」
 彼女はもう一度優雅に礼をする。
「さようなら殿下。本当に愛していました」
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