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第4話『緊箍児と筋肉質』
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「クスクスッ」
お師匠様が笑っている。僕は重いまぶたを開き、思いっきり伸びをした。
「うぅ~~~ん」
「おぉ!悟空起きたか」
「おはようございます。お師匠様、やけに楽しそうですね。何かあったんですか?」
「いゃなに、そいつがお前にとても似合っているものだからつい面白くてな」
お師匠は相変わらずクスクス笑いながら僕の額を指指すので僕は自分の額に手をあててみる。冷たい金属のような感触がする。両手で触りその形を確かめてやっと僕は気がついた。
「緊箍児!!」
「なんだ知っているのか?」
お師匠様は驚いた様子だが、そんなこと今はどうでもいい、緊箍児とは西遊記の世界で孫悟空の額にはめられた金色の輪のことで、お師匠様が呪文を唱えることで悟空の頭を締め付けるように出来ている。
「これの存在を完全に忘れてた・・・」
「安心しろ、お前が悪さしない限り呪文を唱えたりしないさ」
終始楽しそうにしているお師匠様を見て僕は不安になった。
僕とお師匠様は砂漠をぬけ、見知らぬ町で休息をとっていた。
「それにしても、その格好なかなか似合ってるぞ悟空」
「本当ですか?」
昨日この町についた僕とお師匠様は旅に必要なものを買い揃えていた。お陰さまで格好だけは一人前だ。
「悟空!腹が減ったな、なにか食べるものを買ってこい!」
「はい!お師匠様!」
この世界のお師匠様は僕の知っている三蔵法師とは少し違うようだ。
勢いよく宿を飛び出した僕はに昨日から気になっていた飲食店に向かった。
「いらっしゃい!」
妙に筋肉質の店主が声をはる。
「すみません、ローバオズ4つ!持ち帰りで!」
「おぉチビ助!見かけによらずけっこう食べるんだな」
「僕一人で食べるんじゃないんだ!お師匠様と一緒に食べるんだ!」
「そうかいそうかい、10分ほど待ちな!」
次の瞬間、荒々しく品のない声が店内に響き渡る。
「おぃ!動くな!」
店にあらわれたのは見たこともない妖怪達だった。20匹はいるだろうか、ぞろぞろと店に入ってくる。そのなかでも最初に店に入ってきた妖怪の目はつり上がり、耳は鋭く尖り、毛むくじゃらで、身長は2メートルくらいある。おそらくあれがリーダーだろう。
その妖怪が僕のほうに駆け寄ってきた。僕は怖くて一歩も動くことができない。そして、あっさり捕まってしまった。
「動くな!下手に動いたらこいつを殺す」
“えぇーーーーー!!!!”
「お、落ち着け、目的はなんだ?」
筋肉質の店主が聞く。
「この店にある食料を全てよこせ!」
「わかった!今準備するから少し待ってくれ」
僕は怖くて黙っていることしかできなかった。
“筋肉質のおじちゃん早くしてくれ、早く食料を渡してくれ”
「シャン シャン シャン」
鈴の音が聞こえる
「誰だ!」
妖怪のリーダーが僕の頭上で叫ぶ。
「悟空、また泣いてるのか」
「お師匠様!」
「なんだ貴様は?」
「よく聞け妖怪ども!お経を受けとるために旅にでて、今日も明日も西へ行く、壁があるなら殴って壊す、道がなければこの手でつくる、世界平和の開拓者三蔵法師とは俺のことだ!」
その時、妖怪のリーダーが不敵に笑ったのを僕は見逃さなかった。
「そうか、お前が噂の三蔵法師か、野郎共!やっちまえ!」
妖怪の手下達がいっせいにお師匠様に襲い掛かる。
「よっ!はっ!」
錫杖を使って戦うお師匠様、妖怪達を次々と倒していく。
“すごい”
手下を片付けお師匠様は僕を捕らえている妖怪のリーダーに向かってこう言った。
「さて、あとはお前だけだ。どうする?」
お師匠様の圧勝だ。
「動くな!!!」
妖怪のリーダーは声を荒らげていった。
「そこから少しでも動いてみろ、こいつの命はないぜ!」
しまった。お師匠様の華麗な戦いに見とれて忘れていたが、僕は今捕まっているんだった!
「おい悟空、そう言うわけだから俺動けないんであとはお前が何とかしろ!」
「え?」
「気合いだ!気合いで何とかするんだ!」
あの人はいったい何を言っているんだ。
「ハッハッハ、おい坊主どうやら見捨てられたみたいだぞ!」
“お師匠様が僕を見捨てた?”
妖怪が言う通り、店内にいる全ての人はお師匠様が僕を見捨てたと思っていることだろう。
しかし、お師匠様はとてもまっすぐな目で僕を見つめていた。
「お師匠様、僕はどうすれば・・・」
「叫べ!思いっきり叫んでみろ!」
「さけぶ?」
本当に何をいっているかさっぱりわからない。けど、お師匠様があまりにも真っ直ぐな目をしているから、僕は目一杯叫んだ。
「うあぁぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
すると、腰につけていた巾着の中から長い棒が飛び出てきて、妖怪の顎に直撃した。
「如意棒!?」
気絶して倒れ込む妖怪。
お師匠様が僕のほうに歩いてくる。
「お前如意棒も知ってるのか?昨日お前が寝ているすきにその巾着に忍び込ませておいたんだ」
「うぅ・・・うぅ」
妖怪のリーダーにまだ息があった。
「お師匠様、とどめを!」
僕はあわてて声に出した
「いゃ、殺生はしねぇ。そこの筋肉質のおっさん、こいつを縛り付けておけ、時期に天界の使者が来るだろうからそいつに引き渡すんだ」
「わ・わかった」
筋肉質のおっさんは店の裏からあわててロープを持ってきた。
「いくぞ悟空!」
「はい!お師匠!」
その時のお師匠様の背中はとても大きく見えた
お師匠様が笑っている。僕は重いまぶたを開き、思いっきり伸びをした。
「うぅ~~~ん」
「おぉ!悟空起きたか」
「おはようございます。お師匠様、やけに楽しそうですね。何かあったんですか?」
「いゃなに、そいつがお前にとても似合っているものだからつい面白くてな」
お師匠は相変わらずクスクス笑いながら僕の額を指指すので僕は自分の額に手をあててみる。冷たい金属のような感触がする。両手で触りその形を確かめてやっと僕は気がついた。
「緊箍児!!」
「なんだ知っているのか?」
お師匠様は驚いた様子だが、そんなこと今はどうでもいい、緊箍児とは西遊記の世界で孫悟空の額にはめられた金色の輪のことで、お師匠様が呪文を唱えることで悟空の頭を締め付けるように出来ている。
「これの存在を完全に忘れてた・・・」
「安心しろ、お前が悪さしない限り呪文を唱えたりしないさ」
終始楽しそうにしているお師匠様を見て僕は不安になった。
僕とお師匠様は砂漠をぬけ、見知らぬ町で休息をとっていた。
「それにしても、その格好なかなか似合ってるぞ悟空」
「本当ですか?」
昨日この町についた僕とお師匠様は旅に必要なものを買い揃えていた。お陰さまで格好だけは一人前だ。
「悟空!腹が減ったな、なにか食べるものを買ってこい!」
「はい!お師匠様!」
この世界のお師匠様は僕の知っている三蔵法師とは少し違うようだ。
勢いよく宿を飛び出した僕はに昨日から気になっていた飲食店に向かった。
「いらっしゃい!」
妙に筋肉質の店主が声をはる。
「すみません、ローバオズ4つ!持ち帰りで!」
「おぉチビ助!見かけによらずけっこう食べるんだな」
「僕一人で食べるんじゃないんだ!お師匠様と一緒に食べるんだ!」
「そうかいそうかい、10分ほど待ちな!」
次の瞬間、荒々しく品のない声が店内に響き渡る。
「おぃ!動くな!」
店にあらわれたのは見たこともない妖怪達だった。20匹はいるだろうか、ぞろぞろと店に入ってくる。そのなかでも最初に店に入ってきた妖怪の目はつり上がり、耳は鋭く尖り、毛むくじゃらで、身長は2メートルくらいある。おそらくあれがリーダーだろう。
その妖怪が僕のほうに駆け寄ってきた。僕は怖くて一歩も動くことができない。そして、あっさり捕まってしまった。
「動くな!下手に動いたらこいつを殺す」
“えぇーーーーー!!!!”
「お、落ち着け、目的はなんだ?」
筋肉質の店主が聞く。
「この店にある食料を全てよこせ!」
「わかった!今準備するから少し待ってくれ」
僕は怖くて黙っていることしかできなかった。
“筋肉質のおじちゃん早くしてくれ、早く食料を渡してくれ”
「シャン シャン シャン」
鈴の音が聞こえる
「誰だ!」
妖怪のリーダーが僕の頭上で叫ぶ。
「悟空、また泣いてるのか」
「お師匠様!」
「なんだ貴様は?」
「よく聞け妖怪ども!お経を受けとるために旅にでて、今日も明日も西へ行く、壁があるなら殴って壊す、道がなければこの手でつくる、世界平和の開拓者三蔵法師とは俺のことだ!」
その時、妖怪のリーダーが不敵に笑ったのを僕は見逃さなかった。
「そうか、お前が噂の三蔵法師か、野郎共!やっちまえ!」
妖怪の手下達がいっせいにお師匠様に襲い掛かる。
「よっ!はっ!」
錫杖を使って戦うお師匠様、妖怪達を次々と倒していく。
“すごい”
手下を片付けお師匠様は僕を捕らえている妖怪のリーダーに向かってこう言った。
「さて、あとはお前だけだ。どうする?」
お師匠様の圧勝だ。
「動くな!!!」
妖怪のリーダーは声を荒らげていった。
「そこから少しでも動いてみろ、こいつの命はないぜ!」
しまった。お師匠様の華麗な戦いに見とれて忘れていたが、僕は今捕まっているんだった!
「おい悟空、そう言うわけだから俺動けないんであとはお前が何とかしろ!」
「え?」
「気合いだ!気合いで何とかするんだ!」
あの人はいったい何を言っているんだ。
「ハッハッハ、おい坊主どうやら見捨てられたみたいだぞ!」
“お師匠様が僕を見捨てた?”
妖怪が言う通り、店内にいる全ての人はお師匠様が僕を見捨てたと思っていることだろう。
しかし、お師匠様はとてもまっすぐな目で僕を見つめていた。
「お師匠様、僕はどうすれば・・・」
「叫べ!思いっきり叫んでみろ!」
「さけぶ?」
本当に何をいっているかさっぱりわからない。けど、お師匠様があまりにも真っ直ぐな目をしているから、僕は目一杯叫んだ。
「うあぁぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
すると、腰につけていた巾着の中から長い棒が飛び出てきて、妖怪の顎に直撃した。
「如意棒!?」
気絶して倒れ込む妖怪。
お師匠様が僕のほうに歩いてくる。
「お前如意棒も知ってるのか?昨日お前が寝ているすきにその巾着に忍び込ませておいたんだ」
「うぅ・・・うぅ」
妖怪のリーダーにまだ息があった。
「お師匠様、とどめを!」
僕はあわてて声に出した
「いゃ、殺生はしねぇ。そこの筋肉質のおっさん、こいつを縛り付けておけ、時期に天界の使者が来るだろうからそいつに引き渡すんだ」
「わ・わかった」
筋肉質のおっさんは店の裏からあわててロープを持ってきた。
「いくぞ悟空!」
「はい!お師匠!」
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