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第3話『砂漠と三蔵法師』
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気がつくと見知らぬ砂漠のど真ん中で僕はうつ伏せで倒れていた。
“なんで砂漠に?僕は虹のふもとにいたはず”
そして立ち上がろうとして初めてあることに気がつく
“身体が動かない‼”
なぜか腰から下がまったく動かないのだ。上半身を目一杯ひねって振り向いてみると、そこには大きな大きな岩があった。どうやら僕は知らず知らずのうちにこの岩の下敷きになっていたらしい。
ジリジリと暑さが僕の体力を奪っていく
「どうしてこんなことに・・・」
不思議と岩の重さは感じなかった。もしかするとすでに僕の下半身はぺしゃんこで痛みすら感じなくなっているのかもしれない。
このまま死ぬのかと思うととても怖くて、自然と涙がでてきた。
「なんでいつも僕だけこんな目に。いったい僕が何をしたっていうんだ・・・」
その時、後ろから声がした。
「おいチビ助!なに泣いてんだ?」
再び上半身を目一杯ひねって振り向いてみると、僕の上に乗る大きな岩のさらにその上に仁王立ちする大きな影があった。
「とぅっ!」
その影は岩から勢いよく飛び降りた。
僕の目の前に降り立ったその男はお坊さんのような格好で右手に錫杖を持っていた。
「だ・・・誰?」
僕が聞くと、その男は得意気にこう言った。
「いいかよく聞け!遥か彼方天竺を目指し、故郷を旅立ち幾星霜、無茶な夢だとわかっていても後に引けない一方通行、絶対逃げない無鉄砲僧侶!三蔵法師とは俺のことだ!!」
“三蔵法師?”
「おいチビ助、お前が孫悟空か?」
「孫悟空・・・?」
急にあらわれたこの男が言っていることが僕にはさっぱりわからなかった。
「すみません、ここはどこですか?」
僕が訪ねると、その男はニヤリと笑ってこう言った。
「俺にもわからん、ただ1つ言えるのは西に行けば天竺にたどり着くということだ」
“三蔵法師・孫悟空・天竺・・・!”
「西遊記だ!」
僕は思わず声に出してしまった。
「さいゆうき?なんだそれ?」
三蔵法師を名乗る目の前の男は首をかしげた。
どうやら僕は西遊記の世界に入り込んでしまったらしい。信じられない話だが、いつの間にか砂漠にいたり、大きな岩に押しつぶされていたり。今さら何が起きても不思議ではない。
「おい悟空!そこから助け出してやる。その代わり俺とこい、一緒に旅をしよう」
今の僕には自分にふりかかった不可思議な現象なんてどうでもよかった。夢にまで見た大冒険が目の前にあるのだから。
「はい!三蔵法師さん!」
三蔵法師さんはとても嬉しそうに僕を見つめた。そして僕のほうに数歩歩いて、岩の前まできてこう言った。
「よし!自分の頭は自分で守れよ」
「頭?」
きょとんとした僕を度外視して、三蔵法師さんは錫杖を両手で持ち、野球選手のように構える。左足が浮いたあたりでやっと僕の理解が追いついた。僕は急いで両手で頭を抱え目をつぶった。
「うりゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
三蔵法師さんが雄叫びをあげ、錫杖をフルスイングする。
「ガコーーーーッン!!」
錫杖と岩がぶつかった音が砂漠に響き渡る。
「ピキッピキッ」
僕は恐る恐る目を開けて振り返る
「ガゴッゴロゴロゴロゴロ!!」
目の前に雷が落ちたのではないかと錯覚するほどの音をたててあの大きな岩が崩れ落ちた。
「す・・・すごい」
「案外気合いでどうにかなるものだな♪ほら立て、怪我はないか?」
「大丈夫です、ありがとうございます三蔵法師さん」
「そうだ悟空、今後俺のことはお師匠様と呼べ!いいな!」
「はいお師匠様!でしたら僕も悟空ではなく勇輝と呼んでもらってもいいですか!」
「お前が俺様に指図すんな!お前は悟空だ!」
「えぇ~」
こうして僕とお師匠様の長い長い旅は始まった。
おそらく宝箱の中に入っていたドレイクの秘宝は冒険そのものだったのだろう。
“なんで砂漠に?僕は虹のふもとにいたはず”
そして立ち上がろうとして初めてあることに気がつく
“身体が動かない‼”
なぜか腰から下がまったく動かないのだ。上半身を目一杯ひねって振り向いてみると、そこには大きな大きな岩があった。どうやら僕は知らず知らずのうちにこの岩の下敷きになっていたらしい。
ジリジリと暑さが僕の体力を奪っていく
「どうしてこんなことに・・・」
不思議と岩の重さは感じなかった。もしかするとすでに僕の下半身はぺしゃんこで痛みすら感じなくなっているのかもしれない。
このまま死ぬのかと思うととても怖くて、自然と涙がでてきた。
「なんでいつも僕だけこんな目に。いったい僕が何をしたっていうんだ・・・」
その時、後ろから声がした。
「おいチビ助!なに泣いてんだ?」
再び上半身を目一杯ひねって振り向いてみると、僕の上に乗る大きな岩のさらにその上に仁王立ちする大きな影があった。
「とぅっ!」
その影は岩から勢いよく飛び降りた。
僕の目の前に降り立ったその男はお坊さんのような格好で右手に錫杖を持っていた。
「だ・・・誰?」
僕が聞くと、その男は得意気にこう言った。
「いいかよく聞け!遥か彼方天竺を目指し、故郷を旅立ち幾星霜、無茶な夢だとわかっていても後に引けない一方通行、絶対逃げない無鉄砲僧侶!三蔵法師とは俺のことだ!!」
“三蔵法師?”
「おいチビ助、お前が孫悟空か?」
「孫悟空・・・?」
急にあらわれたこの男が言っていることが僕にはさっぱりわからなかった。
「すみません、ここはどこですか?」
僕が訪ねると、その男はニヤリと笑ってこう言った。
「俺にもわからん、ただ1つ言えるのは西に行けば天竺にたどり着くということだ」
“三蔵法師・孫悟空・天竺・・・!”
「西遊記だ!」
僕は思わず声に出してしまった。
「さいゆうき?なんだそれ?」
三蔵法師を名乗る目の前の男は首をかしげた。
どうやら僕は西遊記の世界に入り込んでしまったらしい。信じられない話だが、いつの間にか砂漠にいたり、大きな岩に押しつぶされていたり。今さら何が起きても不思議ではない。
「おい悟空!そこから助け出してやる。その代わり俺とこい、一緒に旅をしよう」
今の僕には自分にふりかかった不可思議な現象なんてどうでもよかった。夢にまで見た大冒険が目の前にあるのだから。
「はい!三蔵法師さん!」
三蔵法師さんはとても嬉しそうに僕を見つめた。そして僕のほうに数歩歩いて、岩の前まできてこう言った。
「よし!自分の頭は自分で守れよ」
「頭?」
きょとんとした僕を度外視して、三蔵法師さんは錫杖を両手で持ち、野球選手のように構える。左足が浮いたあたりでやっと僕の理解が追いついた。僕は急いで両手で頭を抱え目をつぶった。
「うりゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
三蔵法師さんが雄叫びをあげ、錫杖をフルスイングする。
「ガコーーーーッン!!」
錫杖と岩がぶつかった音が砂漠に響き渡る。
「ピキッピキッ」
僕は恐る恐る目を開けて振り返る
「ガゴッゴロゴロゴロゴロ!!」
目の前に雷が落ちたのではないかと錯覚するほどの音をたててあの大きな岩が崩れ落ちた。
「す・・・すごい」
「案外気合いでどうにかなるものだな♪ほら立て、怪我はないか?」
「大丈夫です、ありがとうございます三蔵法師さん」
「そうだ悟空、今後俺のことはお師匠様と呼べ!いいな!」
「はいお師匠様!でしたら僕も悟空ではなく勇輝と呼んでもらってもいいですか!」
「お前が俺様に指図すんな!お前は悟空だ!」
「えぇ~」
こうして僕とお師匠様の長い長い旅は始まった。
おそらく宝箱の中に入っていたドレイクの秘宝は冒険そのものだったのだろう。
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