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03 条件②
マーティンは『その条件は、絶対に不可能だろう』と食い下がったが、レオンスは『出来なければ、ルシアは一生ユスターシュ家に居れば良い。この家は誰が継いでも良いんだ』とにやにやといやらしく笑い、彼はそこで悔しそうに黙るしかなかった。
直系のルシアが嫁にも行かず、子どもも居ないとなれば、ユスターシュ伯爵家を継ぐのはレオンスと一番近い血を持つ叔父のマーティンだ。
兄のスペアとして育ち今は継ぐ家もなく、ただ一介の騎士として務める彼には、それ以上は何も言えないだろうと、前世の記憶を持ち達観したルシアは理解をしていた。
誰だって、自分の利益が最優先だろう。
だとしても、彼女は虐げられている自分を助けてくれようとした叔父マーティンには、大きな感謝の想いを抱いていた。
誰からだって不可能に思えることだって、見事に成し遂げた人は、いくらでも居る。前世の記憶の中にある数ある偉人だってそうだ。
お前なんかに、何も出来るはずがない。不可能を可能にする努力など、時間の無駄でしかない。
そう嘲られ笑われた人たちが奮起して必死で知恵を絞り、成し遂げた例をいくらでも知っていた。
そんな彼らの足元には数えきれない数の成し遂げられなかった人の屍が転がっていることなど、決して達成する前には考えてはいけない。
誰もが挑戦する前に諦めてしまうような難事を、自分だけは必ず成し遂げられるだろうと、そう思い込んでいることが、一番に大事なことだと知っているからだ。
カミーユ・ヴィメールはウィスタリア王国の第二王子ではあるが、王家の慣例通り、兄王太子の補佐をするために軍属にあり軍総帥を務めている。
そんな彼にユスターシュ伯爵家へ軍関係の輸送を任せて貰えさえすれば、考えられないような巨額の富を得て、娘ルシアの結婚に必要な持参金など、両親から見れば取るに足らない些事に思えるような金額になるだろう。
まずルシアは、軍総帥を務めるカミーユへと手紙を送ることから始めた。
王族に会う方法など、今までそうしようとしたことのない彼女にわかる訳がないし、仕事に関する書類を送れば、きっと見てくれるだろうと安易に考えていた。
ひと月ほどは待てど暮らせど返事は来ず、何通か送った時点で全て封を切らない封筒が送り返されて、ルシアは彼へ手紙を送るという一番に簡単な方法を早々に諦めることにした。
(……となると、カミーユ殿下に直接会って掛け合うしかない。私がユスターシュ伯爵家から離れて、幸せになる方法は、これしかないんだから)
王族への不敬罪はウィスタリア王国では確かに存在しているものの、王子へ好意を持つか弱き女性に向けて、それが行われることはまずないだろう。
だから、どうにかして直接会ったカミーユへ軍関係の輸送を効率化させるような書類を、まるで恋文のような渡し方をすれば、不敬罪で切って捨てても咎められてしまうのは彼の方だ。
誰かに言えば、なんと小賢しい手を思いついたのだと言われてしまう方法でもそれしかないとなれば、やるしかないと腹を括った。
女という性を武器にするようで、現代の知識を持つルシアは正直に言えば気が引けてしまったが、これしか自分が不幸から抜け出せる方法がない。
(不幸なままに終わった前世に、不幸な境遇への異世界転生、けれど、カミーユ殿下に私の提案を認めていただければ、そんな悪循環を断ち切ることが出来る……自分の力で、ここを抜け出すんだわ)
この時点ではまだ一度も会ったことのないウィスタリア王国第二王子カミーユに、前世の知識を持つ自分が作った画期的な輸送方法を提案する書類さえ見て貰えば、きっと彼に認めてもらえるだろうと、ルシアは楽観的に考えていた。
直系のルシアが嫁にも行かず、子どもも居ないとなれば、ユスターシュ伯爵家を継ぐのはレオンスと一番近い血を持つ叔父のマーティンだ。
兄のスペアとして育ち今は継ぐ家もなく、ただ一介の騎士として務める彼には、それ以上は何も言えないだろうと、前世の記憶を持ち達観したルシアは理解をしていた。
誰だって、自分の利益が最優先だろう。
だとしても、彼女は虐げられている自分を助けてくれようとした叔父マーティンには、大きな感謝の想いを抱いていた。
誰からだって不可能に思えることだって、見事に成し遂げた人は、いくらでも居る。前世の記憶の中にある数ある偉人だってそうだ。
お前なんかに、何も出来るはずがない。不可能を可能にする努力など、時間の無駄でしかない。
そう嘲られ笑われた人たちが奮起して必死で知恵を絞り、成し遂げた例をいくらでも知っていた。
そんな彼らの足元には数えきれない数の成し遂げられなかった人の屍が転がっていることなど、決して達成する前には考えてはいけない。
誰もが挑戦する前に諦めてしまうような難事を、自分だけは必ず成し遂げられるだろうと、そう思い込んでいることが、一番に大事なことだと知っているからだ。
カミーユ・ヴィメールはウィスタリア王国の第二王子ではあるが、王家の慣例通り、兄王太子の補佐をするために軍属にあり軍総帥を務めている。
そんな彼にユスターシュ伯爵家へ軍関係の輸送を任せて貰えさえすれば、考えられないような巨額の富を得て、娘ルシアの結婚に必要な持参金など、両親から見れば取るに足らない些事に思えるような金額になるだろう。
まずルシアは、軍総帥を務めるカミーユへと手紙を送ることから始めた。
王族に会う方法など、今までそうしようとしたことのない彼女にわかる訳がないし、仕事に関する書類を送れば、きっと見てくれるだろうと安易に考えていた。
ひと月ほどは待てど暮らせど返事は来ず、何通か送った時点で全て封を切らない封筒が送り返されて、ルシアは彼へ手紙を送るという一番に簡単な方法を早々に諦めることにした。
(……となると、カミーユ殿下に直接会って掛け合うしかない。私がユスターシュ伯爵家から離れて、幸せになる方法は、これしかないんだから)
王族への不敬罪はウィスタリア王国では確かに存在しているものの、王子へ好意を持つか弱き女性に向けて、それが行われることはまずないだろう。
だから、どうにかして直接会ったカミーユへ軍関係の輸送を効率化させるような書類を、まるで恋文のような渡し方をすれば、不敬罪で切って捨てても咎められてしまうのは彼の方だ。
誰かに言えば、なんと小賢しい手を思いついたのだと言われてしまう方法でもそれしかないとなれば、やるしかないと腹を括った。
女という性を武器にするようで、現代の知識を持つルシアは正直に言えば気が引けてしまったが、これしか自分が不幸から抜け出せる方法がない。
(不幸なままに終わった前世に、不幸な境遇への異世界転生、けれど、カミーユ殿下に私の提案を認めていただければ、そんな悪循環を断ち切ることが出来る……自分の力で、ここを抜け出すんだわ)
この時点ではまだ一度も会ったことのないウィスタリア王国第二王子カミーユに、前世の知識を持つ自分が作った画期的な輸送方法を提案する書類さえ見て貰えば、きっと彼に認めてもらえるだろうと、ルシアは楽観的に考えていた。
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