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12 質問①
カミーユと約束していた通り、翌日庭園へとやって来たルシアは、そこに居た中年のメイドを見て、慌てて引き返そうとした。
昨日カミーユからここで自分に会ったことは誰にも言うなと言われていたし、彼は何かの問題が解決すれば、ユスターシュ伯爵家へ輸送を任せても良いと言っていた。
(……せっかくここまで来たのに、絶対に失敗したくない)
両親からただの働き手と思われてしまっているルシアがユスターシュ伯爵家から逃れられる手は、きっとこれだけしかないのだから。
「お待ちください。そちらのお嬢様。私はパメラ。カミーユ殿下の乳母を勤め、今は侍女をしております」
やって来た道を戻ろうとしたルシアを呼び留める声に、彼女は驚いた。
「……はい?」
「殿下より、貴女をご案内するように指示されております。どうぞ、こちらへ」
人の良さそうな顔でにこやかに微笑む見知らぬ中年女性は、カミーユからルシアの道案内をするように命じられて、この場所で彼女を待っていたらしい。
ほっと安心したルシアは、自分が早とちりをしていたようだと照れ笑いして彼女へと近づいた。
「……そうだったんですね。失礼しました」
「いえ。それでは、ご案内いたします……どうぞ」
微笑んだパメラはルシアを連れて、城の使用人たちが使う通路を歩いた。何人もの使用人とすれ違うものの、皆自分たちの抱える仕事で精一杯なのか、連れ立って歩く二人に目を留めることはなかった。
(ううん。こちらが目立たないのは、きっと、私の着ているドレスのせいね……使用人たちと比べても、私のドレスの方が汚れているもの)
彼らは平民だが城で働ける使用人たちは選ばれし花形で、賃金も高く身綺麗だ。貴族とは言え、ろくに新しい服も買ってもらうことも出来ぬルシアと彼らは比較にならなかった。
「こちらです」
ルシアは自分が案内された部屋を見て、目を見開いて驚いた。そこは何処からどう見ても浴室で、中央には大きな湯船があり、既に温かな湯が張られているようだった。
「あの……?」
(カミーユ殿下が居る場所に、案内されるのではなかったの?)
彼のいる部屋へ直接案内されると思い、戸惑ったルシアを見て、パメラは彼女を安心させるように微笑んだ。
「失礼ながら、現在着用されているようなドレスは、王族と拝謁されるには適当ではありません」
「あ……それは、そうですよね。申し訳ありません」
ここで身支度を調えて、それからカミーユと会えと言うことだろうか。それもそうだと、ルシアはここに自分を連れて来た理由に納得した。
「お嬢様は磨き甲斐があるようで、私も久しぶりに腕が鳴りますわ」
微笑んだパメラがそう言った二時間後、ルシアは彼女に身体中隅々まで磨かれて、まるで普通の貴族令嬢のように頭のてっぺんからつま先まで身支度を整えられた。
そして、鏡で良く自分の姿を確認する間もなく、カミーユが待っているという部屋へ通された。
「ふん……思ったより、悪くないな」
彼女が部屋へ入るとソファから立ち上がり、開口一番そう言ったカミーユに、ルシアは王族への礼儀作法の通りドレスの裾を持ってカーテシーをした。
「カミーユ殿下。お会い出来て光栄です……」
「ああ。挨拶は良い……それでは、こちらへ早く座れ」
お決まりの口上をルシアが口にしようとすれば、カミーユは右手をうるさげに振って彼女に対面のソファへ座るように示した。
緊張し切ったルシアがようやく感じることが出来たのは、座ったソファの柔らかな座面だ。きっと平民には想像も出来ない金額がする家具で、目の飛び出るような高価な生地が使われているのだろう。
見上げれば天井も高く、これまでに見たこともない高級そうな家具で満たされた広い部屋だった。
(王族が使う城の部屋だから、当たり前だけど……すごい……豪華)
「まず、先に説明しておくが、俺は女嫌いではない……むしろ、好きな方なのだろうな。泣いている女を見て、見て見ぬ振りが出来ぬ程度には」
あまりにも高級な部屋の調度へ完全に気を取られていたルシアは、急に話し出したカミーユへと視線を戻した。
昨日カミーユからここで自分に会ったことは誰にも言うなと言われていたし、彼は何かの問題が解決すれば、ユスターシュ伯爵家へ輸送を任せても良いと言っていた。
(……せっかくここまで来たのに、絶対に失敗したくない)
両親からただの働き手と思われてしまっているルシアがユスターシュ伯爵家から逃れられる手は、きっとこれだけしかないのだから。
「お待ちください。そちらのお嬢様。私はパメラ。カミーユ殿下の乳母を勤め、今は侍女をしております」
やって来た道を戻ろうとしたルシアを呼び留める声に、彼女は驚いた。
「……はい?」
「殿下より、貴女をご案内するように指示されております。どうぞ、こちらへ」
人の良さそうな顔でにこやかに微笑む見知らぬ中年女性は、カミーユからルシアの道案内をするように命じられて、この場所で彼女を待っていたらしい。
ほっと安心したルシアは、自分が早とちりをしていたようだと照れ笑いして彼女へと近づいた。
「……そうだったんですね。失礼しました」
「いえ。それでは、ご案内いたします……どうぞ」
微笑んだパメラはルシアを連れて、城の使用人たちが使う通路を歩いた。何人もの使用人とすれ違うものの、皆自分たちの抱える仕事で精一杯なのか、連れ立って歩く二人に目を留めることはなかった。
(ううん。こちらが目立たないのは、きっと、私の着ているドレスのせいね……使用人たちと比べても、私のドレスの方が汚れているもの)
彼らは平民だが城で働ける使用人たちは選ばれし花形で、賃金も高く身綺麗だ。貴族とは言え、ろくに新しい服も買ってもらうことも出来ぬルシアと彼らは比較にならなかった。
「こちらです」
ルシアは自分が案内された部屋を見て、目を見開いて驚いた。そこは何処からどう見ても浴室で、中央には大きな湯船があり、既に温かな湯が張られているようだった。
「あの……?」
(カミーユ殿下が居る場所に、案内されるのではなかったの?)
彼のいる部屋へ直接案内されると思い、戸惑ったルシアを見て、パメラは彼女を安心させるように微笑んだ。
「失礼ながら、現在着用されているようなドレスは、王族と拝謁されるには適当ではありません」
「あ……それは、そうですよね。申し訳ありません」
ここで身支度を調えて、それからカミーユと会えと言うことだろうか。それもそうだと、ルシアはここに自分を連れて来た理由に納得した。
「お嬢様は磨き甲斐があるようで、私も久しぶりに腕が鳴りますわ」
微笑んだパメラがそう言った二時間後、ルシアは彼女に身体中隅々まで磨かれて、まるで普通の貴族令嬢のように頭のてっぺんからつま先まで身支度を整えられた。
そして、鏡で良く自分の姿を確認する間もなく、カミーユが待っているという部屋へ通された。
「ふん……思ったより、悪くないな」
彼女が部屋へ入るとソファから立ち上がり、開口一番そう言ったカミーユに、ルシアは王族への礼儀作法の通りドレスの裾を持ってカーテシーをした。
「カミーユ殿下。お会い出来て光栄です……」
「ああ。挨拶は良い……それでは、こちらへ早く座れ」
お決まりの口上をルシアが口にしようとすれば、カミーユは右手をうるさげに振って彼女に対面のソファへ座るように示した。
緊張し切ったルシアがようやく感じることが出来たのは、座ったソファの柔らかな座面だ。きっと平民には想像も出来ない金額がする家具で、目の飛び出るような高価な生地が使われているのだろう。
見上げれば天井も高く、これまでに見たこともない高級そうな家具で満たされた広い部屋だった。
(王族が使う城の部屋だから、当たり前だけど……すごい……豪華)
「まず、先に説明しておくが、俺は女嫌いではない……むしろ、好きな方なのだろうな。泣いている女を見て、見て見ぬ振りが出来ぬ程度には」
あまりにも高級な部屋の調度へ完全に気を取られていたルシアは、急に話し出したカミーユへと視線を戻した。
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