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18 時計①
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「……何故、下着は付けていないんだ?」
ルシアのスカートの下に入れた手で秘所を探り下着の感触がないのではないかとカミーユが問えば、彼女は咎めるように彼の腕を取った。
「ドレスは、下着を身に付けないのです……あの、カミーユ。私……その」
(あれは……流石に、やり過ぎだわ)
二人であれば、こういった行為もおかしくはないと思う。恋仲でお互いが、嫌でなければ。
だが、第三者であったヒューバートが出て行った今、これはここで中断すべきだと考えたルシアは、興味深げに秘所で動く彼の指から離れようと身を捩った。
主君の命令に逆らえずにとんでもないことを要求されたヒューバートだって居た堪れなかったことだろうと思うが、あの状況の中で一番に羞恥を感じたのはルシアだったのだから。
ルシアが怒っていることを察したのか、カミーユは宥めるようにして言った。
「悪い……君には見えていなかったと思うが、ヒューバートは入って来た瞬間に、目を閉じていた。だから、君はそれほど見えては居ない。見えても一秒だ。気にするな」
両腕を使ってぎゅっと抱き寄せられて、間近まで近付いた彼の整った顔にルシアは驚いた。
「……シャンペル卿は、目を閉じていたのですか?」
「ヒューバートは忠誠心が高く、優秀な騎士だ。ここでは目を閉じるべきだと判断し、音しか聞こえていないだろう。間違って君の裸体を見てしまえば、目をくりぬかれるとでも思っていたのではないか」
カミーユは興味なさそうに言ったが、そうなるだろうことを、彼とてヒューバートの名前を呼んだ時からわかっていたのだろう。
ヒューバート・シャンペルは、ルシアも知るくらいに優秀な有名騎士だ。だが、強いだけでは王族の護衛騎士までなれない。
だから、取り込み中の主君だと判断したその瞬間に、余計なものを見ないように目を閉じたという訳か。
(けど、見てなければ、良いっ……という訳でもないわよ)
とんでもなく恥ずかしい思いをしたことを思い出し、涙目できっと睨んだルシアを見て、カミーユは面白そうに微笑んだ。
「カミーユ」
「睨んだ顔も、なんと可愛い……ああ。ヒューバートのことか。逆に音を聞くだけの方が想像を掻き立て、淫靡な想像が広がっただろう。今頃、廊下に居るメイドでも捕まえて、その辺で事に及んでいてもおかしくはない」
見えずに音だけの方が欲情してしまうだろうと、カミーユは言った。
(何言っているのかしら。シャンペル卿はそんなことするはずがないわ)
ルシアを助けてくれた時だって優しかったし、彼女の目から見れば誠実が服を着て歩いているように思えるくらいの男性なのに。
「シャンペル卿が? ……まさか。失礼です」
忠義を守り騎士らしい騎士に見えるヒューバードが、そのような行為に及ぶとは思えず、ルシアは首を振った。
「ふん……あれは、ルシアが思うような男ではない。一夜共にした女とは二度と決して寝ない、不誠実な男だ。君の喘ぎ声を一瞬聞いても、すぐに混ざって忘れるさ」
カミーユは不機嫌そうな表情をして、そう言った。その時、彼の背後にあった時計が見えて、ルシアは慌てて彼の体の上から立ち上がった。
ついさっきまでの淫靡な空気が霧散し、色気も何もない仕草でルシアは胸元の布を引き上げた。
「……ルシア? どうした」
この先の行為が他ならぬ彼女に邪魔されるとは思わず、驚いた表情になったカミーユは唖然として立ち上がったルシアの顔を見ていた。
「カミーユ……ごめんなさい! 私、仕事に戻らなくては……」
ルシアは朝から来たものの、現在はもう既に、正午を過ぎていた。ルシアは済ませなければいけない仕事が山ほど待っているし、今日中に間に合わせなければいけない書類もある。
自分がこなさなければならない仕事を逆算して、今夜自分が睡眠に入る時間を考え、ルシアは絶望的な気持ちになった。
ちらりとソファに座るカミーユを見れば、完璧な顔の下には素晴らしく魅惑的な肉体があった。
(……なんて、美しいの。まるで、美術館に飾られた絵画に描かれていても、何の不思議もないわ)
存在自体が、一級芸術品のような王子様だ。けれど、ルシアはここで抗いがたい誘惑を断ち切らなければならない。
心の中の何割かが、ここで彼に溺れてしまいたい気持ちもあった。こんなにも甘く見つめられ強く求められていると言うのに、それを跳ねのけなければならないのか。
しかし、二人の関係を公に明かせない今、親元にあるはずのルシアはユスターシュ伯爵家に戻らねばならず、そうなれば彼女の仕事は待ってくれない。
迷う暇はもうなかった。
「……ルシア?」
「ごめんなさい! 私、帰ります!」
どんなに上手く言い訳をしようが、今は結局は王族を置き去りにするしかなく、ルシアはそう言い切って帰ることにした。
扉を開き廊下で待っていたパメラには驚かれ、彼女にドレスを脱がし化粧も落としてもらい、馬車を急がせてユスターシュ伯爵家へと戻った。
ルシアのスカートの下に入れた手で秘所を探り下着の感触がないのではないかとカミーユが問えば、彼女は咎めるように彼の腕を取った。
「ドレスは、下着を身に付けないのです……あの、カミーユ。私……その」
(あれは……流石に、やり過ぎだわ)
二人であれば、こういった行為もおかしくはないと思う。恋仲でお互いが、嫌でなければ。
だが、第三者であったヒューバートが出て行った今、これはここで中断すべきだと考えたルシアは、興味深げに秘所で動く彼の指から離れようと身を捩った。
主君の命令に逆らえずにとんでもないことを要求されたヒューバートだって居た堪れなかったことだろうと思うが、あの状況の中で一番に羞恥を感じたのはルシアだったのだから。
ルシアが怒っていることを察したのか、カミーユは宥めるようにして言った。
「悪い……君には見えていなかったと思うが、ヒューバートは入って来た瞬間に、目を閉じていた。だから、君はそれほど見えては居ない。見えても一秒だ。気にするな」
両腕を使ってぎゅっと抱き寄せられて、間近まで近付いた彼の整った顔にルシアは驚いた。
「……シャンペル卿は、目を閉じていたのですか?」
「ヒューバートは忠誠心が高く、優秀な騎士だ。ここでは目を閉じるべきだと判断し、音しか聞こえていないだろう。間違って君の裸体を見てしまえば、目をくりぬかれるとでも思っていたのではないか」
カミーユは興味なさそうに言ったが、そうなるだろうことを、彼とてヒューバートの名前を呼んだ時からわかっていたのだろう。
ヒューバート・シャンペルは、ルシアも知るくらいに優秀な有名騎士だ。だが、強いだけでは王族の護衛騎士までなれない。
だから、取り込み中の主君だと判断したその瞬間に、余計なものを見ないように目を閉じたという訳か。
(けど、見てなければ、良いっ……という訳でもないわよ)
とんでもなく恥ずかしい思いをしたことを思い出し、涙目できっと睨んだルシアを見て、カミーユは面白そうに微笑んだ。
「カミーユ」
「睨んだ顔も、なんと可愛い……ああ。ヒューバートのことか。逆に音を聞くだけの方が想像を掻き立て、淫靡な想像が広がっただろう。今頃、廊下に居るメイドでも捕まえて、その辺で事に及んでいてもおかしくはない」
見えずに音だけの方が欲情してしまうだろうと、カミーユは言った。
(何言っているのかしら。シャンペル卿はそんなことするはずがないわ)
ルシアを助けてくれた時だって優しかったし、彼女の目から見れば誠実が服を着て歩いているように思えるくらいの男性なのに。
「シャンペル卿が? ……まさか。失礼です」
忠義を守り騎士らしい騎士に見えるヒューバードが、そのような行為に及ぶとは思えず、ルシアは首を振った。
「ふん……あれは、ルシアが思うような男ではない。一夜共にした女とは二度と決して寝ない、不誠実な男だ。君の喘ぎ声を一瞬聞いても、すぐに混ざって忘れるさ」
カミーユは不機嫌そうな表情をして、そう言った。その時、彼の背後にあった時計が見えて、ルシアは慌てて彼の体の上から立ち上がった。
ついさっきまでの淫靡な空気が霧散し、色気も何もない仕草でルシアは胸元の布を引き上げた。
「……ルシア? どうした」
この先の行為が他ならぬ彼女に邪魔されるとは思わず、驚いた表情になったカミーユは唖然として立ち上がったルシアの顔を見ていた。
「カミーユ……ごめんなさい! 私、仕事に戻らなくては……」
ルシアは朝から来たものの、現在はもう既に、正午を過ぎていた。ルシアは済ませなければいけない仕事が山ほど待っているし、今日中に間に合わせなければいけない書類もある。
自分がこなさなければならない仕事を逆算して、今夜自分が睡眠に入る時間を考え、ルシアは絶望的な気持ちになった。
ちらりとソファに座るカミーユを見れば、完璧な顔の下には素晴らしく魅惑的な肉体があった。
(……なんて、美しいの。まるで、美術館に飾られた絵画に描かれていても、何の不思議もないわ)
存在自体が、一級芸術品のような王子様だ。けれど、ルシアはここで抗いがたい誘惑を断ち切らなければならない。
心の中の何割かが、ここで彼に溺れてしまいたい気持ちもあった。こんなにも甘く見つめられ強く求められていると言うのに、それを跳ねのけなければならないのか。
しかし、二人の関係を公に明かせない今、親元にあるはずのルシアはユスターシュ伯爵家に戻らねばならず、そうなれば彼女の仕事は待ってくれない。
迷う暇はもうなかった。
「……ルシア?」
「ごめんなさい! 私、帰ります!」
どんなに上手く言い訳をしようが、今は結局は王族を置き去りにするしかなく、ルシアはそう言い切って帰ることにした。
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