絶対零度殿下からの隠れ溺愛は秘蜜の味。

待鳥園子

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26 嫉妬①

 三日後、ユスターシュ伯爵家にて働くソフィアから、身支度のためにパメラの居る部屋に行くようにとの指示を伝言されルシアは、これまでにも二度ほど通った使用人専用通路を歩いていた。

 やはりそんな時にも、質素な装いで化粧っ気もないルシアは、数多く行き交う使用人たちの誰の目にも止まらずに歩くことが出来ていた。

 そこにメイド数人が集まり高い声で噂話を興じているところに行き会い、前世の会社でもこういう光景を良く見たルシアは、女性が噂話を好きなのは古今東西、何処でも一緒なのだなと何気なく思った。

「……聞いた? カミーユ殿下の、あの噂!」

「聞いた聞いた! 氷の王子様のハンカチーフの話でしょう? ここ数日は、胸元のハンカチーフが常に同じものなのよ! 絶対にあれは、将来を約束した女性が現れたことに違いないわ!」

(え。それって、もしかして、私があげたハンカチのことかしら? しかも、胸元に飾ってくれるなんて……嬉しい)

 それでは、心に決めた人が居ると、皆に周知して回るのと一緒ではないかと、偶然の噂話に聞き耳を立てつつ素知らぬ振りをしながら歩き、ルシアは照れつつも嬉しかった。

 身内の中では兄夫婦に虐げられ働かされる姪ルシアを、唯一気に掛けてくれる叔父マーティンがくれた贈り物で、品質から見て決して安いものではないから王族の手にあったとしてもおかしくはないだろう。

「ねえねえ。あのハンカチの主は、カミーユ殿下が最近良く面会されている、アシュクロフト伯爵令嬢でしょう?」

「そうよ! 数日前からいきなり会い始めてハンカチもその頃からなのだから、きっと間違いないわ。氷の王子様を溶かしたのは、美しいアシュクロフト伯爵令嬢だったのね」

「美しい方だもの。お似合いだわ……それに……」

(……え? どういうこと?)

 きゃっきゃと盛り上がる彼女たちの傍をルシアは通り過ぎながら、噂話にあった名前を聞いて、顔には動揺が隠せなかった。

 アシュクロフト伯爵令嬢レイアはウィスタリア王国でも有名で、才知ある美貌を持つ令嬢だった。社交界に出ていないルシアでもその名を聞いたことがあるくらいなのだから、彼女がどれだけ凄いかがわかろうというものだ。

 けれど、カミーユは『氷の王子様』と言われるくらいに、周辺に不遜で冷たい態度を貫き、自ら女性を呼び出すなどどこれまでになかったことだ。

 だとすると、アシュクロフト伯爵令嬢と度々会っているとは、どういう意味だろうか。

(本人に聞いてみなければわからないわ……これから、私は彼に直接会うのだから、そこで聞いてみなければ……)

 カミーユが彼女を特別に呼び出して会っているというのならば、きっと何か理由があることなのだ。

 そう自分に言い聞かせながらも、ルシアの心には不安が渦巻いていた。


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