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33 裏帳簿②
◇◆◇
夜明け鳥の声も聞こえぬ間に、扉を開けてくれたソフィアを見て、ルシアは静かに微笑んだ。
「……もう朝で良いですよね? すぐにお助けすることが出来ず、申し訳ございません」
どうやらソフィアはテレンスの言い付けを守って朝を待ち、ルシアを助けようと近くに居てくれたらしい。
ルシアは両親の犯罪の証拠となる裏帳簿を持ち、立ち上がった。
「いいえ。貴女は役目があるのだから、目立つことは避けて正解よ……今日、カミーユに会えるかしら? 連絡を付けて欲しいの。いいえ。今日でなくても、出来るだけ早く会いたいと伝えてくれる?」
ソフィアが手にしていた毛布を肩に掛けられ、ルシアは歩き出した。
この夜の間に、ユスターシュ伯爵家を終わらせる覚悟は出来ていた。
(それに、私が平民になってしまえば、処女でなくなってしまったことも何の不都合もないわ。ある程度の仕事は出来るのだから、両親が権力やお金を失ってさえしまえば逃げることだって出来るはずよ)
それは、ルシアがずっと望んでいたはずのことだった。けれど、胸の痛みを無視することは出来なかった。この裏帳簿を見なかったことにしてさっきあった場所へ戻してしまえば、約束された未来があった。
テレンスだって約束したことは確かなのだし、王族カミーユが直接出て行けば従わざるを得ないだろう。
けれど、ルシアは秘密を抱えたままで、罪悪感を抱えながら生きていくことは出来ないと思った。
(これで良いのよ。全部、なかったことにすれば良い。カミーユと結婚出来るなんて、すべてなかったものと思えば……)
ソフィアが今日の昼なら会えるという情報をくれて、ルシアは馬車を出してくれと御者へと指示した。
御者はルシアからそれを言われて、変な表情になっていた。
ルシアが城に行くのを許されていたのは、カミーユへと無駄な努力をしに行くことをテレンスが容認していたからだ。だが、仕事の妨げになるような真似をすれば、彼は娘に容赦しないだろう。
ルシアはここで城に向かえば、両親が捕まり、自分も平民になることを覚悟していた。
カミーユはいつも通り、パメラの元で身支度を済ませたルシアの前に現れた。
「……どうした。ルシアが会いたいと言い出すなど、珍しいな」
彼はソファに座っていたルシアの隣に腰掛け、暗い表情のルシアの顔を覗き込んだ。
「……カミーユに、明かさなければならないことがあります」
「なんだ? 改まって……君のことなら、俺の方がかなり詳しいと思うんだが?」
片眉を上げたカミーユに、ルシアは父の書庫から見付けた裏帳簿を渡した。
カミーユはそれを受け取り、無言で中を見ていた。
「これだけは、言わせてください。私……殿下のことが好きです」
静かにそう言った彼女の言葉を聞いて、カミーユはルシアを抱き寄せた。
「……ありがとう。これで、すべての証拠が揃った」
「え?」
彼との別れを覚悟していたルシアは、整った顔に嬉しそうな表情を浮かべたカミーユを見て唖然とした。
夜明け鳥の声も聞こえぬ間に、扉を開けてくれたソフィアを見て、ルシアは静かに微笑んだ。
「……もう朝で良いですよね? すぐにお助けすることが出来ず、申し訳ございません」
どうやらソフィアはテレンスの言い付けを守って朝を待ち、ルシアを助けようと近くに居てくれたらしい。
ルシアは両親の犯罪の証拠となる裏帳簿を持ち、立ち上がった。
「いいえ。貴女は役目があるのだから、目立つことは避けて正解よ……今日、カミーユに会えるかしら? 連絡を付けて欲しいの。いいえ。今日でなくても、出来るだけ早く会いたいと伝えてくれる?」
ソフィアが手にしていた毛布を肩に掛けられ、ルシアは歩き出した。
この夜の間に、ユスターシュ伯爵家を終わらせる覚悟は出来ていた。
(それに、私が平民になってしまえば、処女でなくなってしまったことも何の不都合もないわ。ある程度の仕事は出来るのだから、両親が権力やお金を失ってさえしまえば逃げることだって出来るはずよ)
それは、ルシアがずっと望んでいたはずのことだった。けれど、胸の痛みを無視することは出来なかった。この裏帳簿を見なかったことにしてさっきあった場所へ戻してしまえば、約束された未来があった。
テレンスだって約束したことは確かなのだし、王族カミーユが直接出て行けば従わざるを得ないだろう。
けれど、ルシアは秘密を抱えたままで、罪悪感を抱えながら生きていくことは出来ないと思った。
(これで良いのよ。全部、なかったことにすれば良い。カミーユと結婚出来るなんて、すべてなかったものと思えば……)
ソフィアが今日の昼なら会えるという情報をくれて、ルシアは馬車を出してくれと御者へと指示した。
御者はルシアからそれを言われて、変な表情になっていた。
ルシアが城に行くのを許されていたのは、カミーユへと無駄な努力をしに行くことをテレンスが容認していたからだ。だが、仕事の妨げになるような真似をすれば、彼は娘に容赦しないだろう。
ルシアはここで城に向かえば、両親が捕まり、自分も平民になることを覚悟していた。
カミーユはいつも通り、パメラの元で身支度を済ませたルシアの前に現れた。
「……どうした。ルシアが会いたいと言い出すなど、珍しいな」
彼はソファに座っていたルシアの隣に腰掛け、暗い表情のルシアの顔を覗き込んだ。
「……カミーユに、明かさなければならないことがあります」
「なんだ? 改まって……君のことなら、俺の方がかなり詳しいと思うんだが?」
片眉を上げたカミーユに、ルシアは父の書庫から見付けた裏帳簿を渡した。
カミーユはそれを受け取り、無言で中を見ていた。
「これだけは、言わせてください。私……殿下のことが好きです」
静かにそう言った彼女の言葉を聞いて、カミーユはルシアを抱き寄せた。
「……ありがとう。これで、すべての証拠が揃った」
「え?」
彼との別れを覚悟していたルシアは、整った顔に嬉しそうな表情を浮かべたカミーユを見て唖然とした。
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