絶対零度殿下からの隠れ溺愛は秘蜜の味。

待鳥園子

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36 窓越し★①

「カミーユ。あの……ちょっと……待ってください」

 口付けをしたカミーユの整った顔が離れた隙に、ここだと思ったルシアは彼の名前を呼んだ。

「……何なんだ。君の偽両親は捕まるし、叔父のユスターシュ卿は苦労をしている姪のことを気にかけ常に心配していたようだ。俺に嫁ぎたいと言えば、彼ならば反対しないだろう」

 叔父マーティンは実家であるユスターシュ伯爵邸へと帰宅する度にルシアのことを気にかけていたようだし、そんな彼であれば、これから姪が誰に嫁ごうがきっと喜んでくれるはずだ。

「叔父のことではありません……その、あの……非常に言い難いことなのですが」

「何だ?」

 カミーユはもじもじとして顔を赤くしたルシアを見て、何が気になるのかと不思議そうだ。

(私だって、こんなにも偶然が重ならなければ、気にもしなかったはずなのに……)

「あのっ……シャンペル卿のこと、なのですが……」

 二人の濃密な時間にヒューバートの名前を出したルシアに、カミーユは不機嫌そうに顔を顰めた。

「なぜここで、あいつの名前を出すんだ? 言っておくが、ヒューバートは見てくれは少々良かろうが、女性全体から見れば最低な男でしかないぞ」

 カミーユも自身の護衛騎士ヒューバートの外見について良いということを認めているようで、ルシアはふふっと笑ってしまい、よりカミーユの眉間に皺が寄った。

「……いえ。私が気にしているのは、違うのです。彼は今日、出勤されていますか……? これまでに幾度となく、カミーユと居る時に悪気なく邪魔されてしまったので、居場所が気になってしまっただけなんです。別に彼のことが気になるとか……そういった意味で聞いた訳ではありません」

 ルシアの言い分を聞いてカミーユは何かを思い返すような表情になり、これまでのことを考えればもっともだと思ったのか微笑んで頷いた。

「確かに……ヒューバートは、君とそういう空気になるとやって来るな……あいつは狙って来ているのかもしれない……ふん。確か今は外に居て警備しているはずだが、その目で確認してみるか?」

 どこか面白がるようにカミーユは言い、それならば良いとルシアは後ずさった。

「……それは、大丈夫です。カミーユ。彼がここには来ないならば、それで良いんですから」

 否定した彼女の手を持ちカミーユは立ち上がり、戸惑うルシアの手を引いた。

「いやいや……君も気になるだろう。俺たちが何かをしている間に、あいつがまたここに来るかもしれない。そうしたら、君はまた恥ずかしい思いをしてしまうな?」

 カミーユは窓の外を確認し、ルシアに外を見るように促した。

 確かにそこに警備のためか、ヒューバートがバルコニーの反対側に立って居て、隙なく辺りを警戒しているようだ。

「……ひゃっ……」

 カミーユが透明な硝子ごしにヒューバートを見ているルシアのスカートを捲り上げ、彼女の秘所へと指を這わせたので彼女は慌てて彼を振り返った。

 カミーユの透き通る水色の目は、何の悪意もなく澄んでいた。

「ああ……ルシア。他の男を見ている君を、抱いてみたい。声を出したり動いたりしてはいけないよ。あいつに見られてしまうかもしれない。俺もそれは……本意ではないから」

「っ……え」

 慣れた手つきで素早く胸元にある布を下げられて、ルシアは慌てた。

 ふるりと豊かな胸が空気に触れて、慌てて手で隠すとその上から覆うようにカミーユの大きな手が置かれた。

「胸を隠すことは、許さない……ルシア。俺の命令をちゃんと聞けるね?」

 熱い息と共に耳元で囁かれ、ルシアは両手を下ろし、スカートをギュッと握った。ヒューバートが何か異変があると思い振り向けば、ルシアの胸を出したあられもない姿が見えてしまう。

 そうならないためには声を殺し、身動きせぬように努力するしかなかった。

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