絶対零度殿下からの隠れ溺愛は秘蜜の味。

待鳥園子

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38 理由①

 ルシアから裏帳簿をもらい話を聞き、臣下たちへ指示をだし、彼女の両親の顔と名前をだまし取っていた二人を捕らえるようにカミーユが命じたのは彼女と濃密な時間を経てからだった。

 しかし、裏帳簿が倉庫からなくなっていることに気が付いたのか、テレンスとキャスリンを騙るあの二人はユスターシュ伯爵家から忽然と姿を消していた。

 その報告を聞き、カミーユは反省した様子で顔を顰めていた。

「……本当にすまない。ルシアとの関係を表に出せると思ったら、つい浮かれてしまった」

 何かがあってはいけないと身を守る術を持たないルシアは城に残り、一度仕事に戻りそれを聞いたカミーユからそう聞いてもルシアは残念に思うことはなく、やはりそうだったのかと冷静に思った程度だ。

(これで逃げてしまったということは、やはり密輸をしていて……それに、ユスターシュ伯爵夫婦を騙る偽物であることは間違いないわ。密輸だけであれば蓄えているあの財産で、罰金を支払えばそれで良い。すべてを捨てて逃げてしまうのならば、やはりあの二人は偽物だったのね)

「いえ……やはり、そうだったのですね。あの人たちは、犯罪者だったのですか……あの、叔父様には?」

 ユスターシュ伯爵の血縁で、一番頼りにしているマーティンのことが気になりルシアは言った。

 ユスターシュ伯爵家の継承権は彼にあり、両親が居なくなったルシアが頼れるとするならば、あのマーティン以外に居ない。

「……ああ。ユスターシュ卿にも、知らせを出した。今は遠征に出掛けていたそうだが、時間的にそろそろ王都へと帰って来るはずだ。彼は何年も前から、兄夫婦がおかしくなった調査してくれと言い続けていたからな……きっと、これを知ればすぐに戻って来てくれるだろう」

「はい。私……早く叔父様に会いたいです」

 元はと言えばカミーユへルシアが訴えるというあの話を引き出してくれたのも、叔父マーティンなのだ。

 兄夫婦の持つ財産目当てに、彼らを陥れようとしているのではないかと疑われそうな難しい立場にありながら、ずっと姪ルシアを守っていてくれていた。

「肉親であるユスターシュ卿は、たとえ昔話が噛み合ったとしても、どうしても違和感を消せなかったと言っていた。姿は同じだが中身は別人なのだから、細かい部分は真似出来ず、肉親の目は誤魔化せなくても無理はない」

「カミーユ……あの、姿を変えてしまう魔法は禁呪なのでは?」

 確かカミーユが送り込んだ諜報員ソフィアは魔法使いの一人で、そう言っていたはずだ。姿を写し取っても時間制限があり、そうすれば、魔法を使うことを禁じられてしまうと。

「その話なんだが……俺も気になって聞いた。どうやら、姿を交換したあと片方が死んでしまえば、その姿で居ることが出来るという抜け道のような話があるらしい。だから……その」

 カミーユは言い辛そうに言葉の先を濁し、ルシアは苦笑して頷いた。

「ええ。私の両親は、何年も前に殺されてしまったのは間違いないですね……実はルブラン王国から帰る船から、海に落ちた身元不明者が居たはずなのです。今思うと、あれが私の両親だったのだと思います。今は思い返せば、そうだったと思うばかりで」

 ただ、すべてを奪うために殺されてしまったのだとしたら、とても悲しいことだ。

「ああ……そうか。君が記憶を失ったのも……」

 カミーユは両親の死を見てルシアが記憶を失ったと思ったのか、青い顔をして俯いていた。理由を言えない以上、それを否定することも出来ずにルシアは微笑んだ。

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