絶対零度殿下からの隠れ溺愛は秘蜜の味。

待鳥園子

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41 仕返し②

 ルシアが今まで会ったことのない人種で、どう対応して良いかわからず、戸惑ったまま無言で彼女を見ていた。

 そんなルシアの反応が気に入らなかったのか、彼女はわかりやすく顔を顰め、手に持っていた扇を顔の前で拡げた。

「私はエリザベス・ジェイド・ワーリントン公爵令嬢よ。ワーリントン公爵の一人娘……まあ、本来ならカミーユ様が私の婚約者になる予定だったんだけど、どんな魔法を使ったの? それが、どうにも気になっていたの」

 公爵家の一人娘ならば、王太子以外の王子が王族から臣籍に落ちる婿入り先に、確かにピッタリだと言える。だが、カミーユは彼女を嫌がり、それをつっぱねたのだろう。

(ああ……だから、私を見つけてここまで来たのね。公爵令嬢なのだから、プライドが高くてもそれは当たり前だし……)

 自分よりも下の身分を持つ伯爵令嬢ルシアが気になり、城にやって来ていたから、ルシアを見付けてここまでやって来たのだ。

「私は……何も、魔法など……」

 ルシアはどうしようと思った。ここで逃げてしまえば、公爵令嬢のエリザべスに対する侮辱に当たるし、ユスターシュ伯爵家が悪く言われるきっかけになってしまうかもしれない。

 けれど、居丈高な態度を見せるエリザベスにこのまま捕まっていても、良いことは起こらないだろうと確信出来てしまうのだ。

 彼女はどうやら、自分が婚約するはずだったカミーユと婚約するルシアをあまり良く思っていなさそうだから。

「けれど、可哀想なご令嬢だわ……両親を殺されて虐待まで! ああ……どんなことをされていたのかしら……とても恐ろしいわ……一体、犯罪者に何を……」

 周囲に聞こえるようにエリザベスは大きな声を出し、ルシアは止めることも出来ず何も言えずに目を瞑った。これまで嫌な相手から何を言われても黙っていることで、身を守っていたからだ。

(ああ……早く終わって……)

「おい。そこのお前……いい加減にしろ」

 ルシアの方に温かな手が乗り、気が付けばカミーユが前に居て庇われていた。

 エリザベスはカミーユの登場が予想外だったのか、不快そうな表情を広げた扇で覆い隠した。

「まあ……カミーユ殿下、ご機嫌麗しく」

「これを見て、麗しい訳がないだろう。お前、いい加減にしろよ。俺はそういうお前が嫌なんだよ。何も悪くないルシアに嫌がらせか? もし、何か言いたいことがあれば、俺に直接言えば良いだろう。同情する振りをして、犯罪に巻き込まれただけの被害者に酷いことをしやがって……本当にうんざりなんだよ。失せろ」

 カミーユの冷たい視線と不遜な態度に、エリザベスは顔を青くして慌てて去って行った。

「カミーユ……カミーユ殿下……申し訳ございません」

 迷惑をかけてしまったとルシアが謝れば、カミーユは難しい表情で頷いた。

「別に良い。あれは、以前に俺が怒らせたんだ。こんな女と結婚したくないと、貴族全員の前で言ったから憎まれている。若かったんだ……今では女性にいらぬ恥をかかせてしまったと、反省はしている」

「……そうだったのですか」

(それは……あんな風に、私を見に来るはずだわ。すごくプライドの高そうな公爵令嬢だったもの)

 カミーユの話を聞いて、ルシアは自分に対する彼女の失礼な態度に納得することが出来た。

「いや、それほどまでに嫌な女だが、わざわざ探してまでルシアに手を出すとは思わなかった。お前は完全なる被害者で、犯人と血が繋がっている訳でもない。騙されたというなら、ウィスタリア王国の王族含め、ほとんどの貴族もそうだ。気にするな」

「はい。ありがとうございます。カミーユ」

 にっこり微笑んで礼を言ったルシアに顔を赤くしたカミーユは、彼女を抱き上げて歩き出した。

「きゃっ……どっ……どうしました?!」

 急に視点が変わり慌てたルシアは、彼の首に手をかけた。

「いいや……俺とこういう仲だと周知されれば、誰も手は出せまい。最近、恋人が出来たから丸くなったと、少し舐められていたようだからな。お前が部屋に戻ってから、俺がどんな男なのか思い知らせてやるよ……あれにも、念を押して伝えねば」

 逃げ出したエリザベスを追い掛け、ルシアに手を出すなと言うつもりなのだろう。

「……お手柔らかにしてください。カミーユは、本当に怖いので」

「それで良いんだ。このように舐められたら、後々面倒だからな。妙なことを言い出せば、返り討ちにする程度で思っていてくれれば良い」

 氷の王子様と呼ばれるカミーユに何度も話し掛け冷たくされた経験があるルシアは、少しだけエリザベスに同情してしまった。
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