絶対零度殿下からの隠れ溺愛は秘蜜の味。

待鳥園子

文字の大きさ
47 / 60

47 もう一人②

「ルシア。もう一人のルシア・ユスターシュ伯爵令嬢が、この城へと帰ってきたそうだ。君の情報は戒厳令を敷いていた。だから、あいつらも君がエリザベスの姿のままで捕まったか、つまみだされたか……それを知ることも叶わず、とにかく、この城へ来るしかなかったのだろう」

「……どうして。そんな……だって」

 ルシアがこうしてカミーユを説得出来ていれば、それは敵地に何も考えずに飛び込んで来るのと同じだ。

「……しかし、ルシアが戻ってきて俺に自分の存在を知らせることが出来ていれば、あいつはもう身の破滅だからな。一か八か試してみたかったのではないか? 帰って来ていなければ、エリザベスの姿をした君を殺せば成り代われる」

「ああ……なんてこと。信じられない」

 そうするしかないと言われればそうなのだが、豪胆というか何も考えていないのか、エリザベスはこれがルシアから明かされていればすぐに捕えられるというのに。

「ふん。こちらの状況は読めぬから、こうして賭けに出たんだろう。生憎、負けてしまったようだがな」

 カミーユは心底気に入らないと言いたげに、眉を寄せて言った。

「ああ……私がもし帰っていれば、行方がそれで知れると?」

(あの、犯罪者……やはり、ワーリントン公爵令嬢のことなど、どうでも良いんだわ。彼女が罰されたり殺されたりしても、別の寄生先を見つけるつもりなのね……)

 実の娘として扱わねばならないはずのルシアにも役に立つと知ってからも非道なことをしたし、捨て駒のような扱いをされるエリザベスなど、このままでは、もっと酷いことをされてしまうのではないか。

 自業自得とも言えるだろうが、まんまと犯罪者に騙されてしまうほどに育ちが良い彼女のことを思えば哀れにも思えて、ルシアはどうするべきかと考えた。

(私を殺して姿を奪い成り代わろうとしたことを、許せる訳ではないけれど……けれど、ただ利用されているだけなら、可哀想だわ)

「いや、そういえば……君は人に見られることを好むようだからな。女ならば別に良いだろう」

「……え?」

 急に機嫌を直した様子のカミーユに微笑まれ、ルシアは戸惑った。

「ルシアの姿を取ろうとしたならば、極刑に処すべきだと俺は思う……だが、あまり物を考えぬ高貴な公爵令嬢だ。騙されたまま殺されてしまうというのも、俺たちも夢見が悪い。そうだな?」

「……は、はい」

 有無を言わさぬ問いかけをされて、ルシアは慌てて何度も頷いた。

(なっ……何の話?)

「しかし、このままでは俺も腹の虫が収まらぬ。高貴なる公爵令嬢を、驚かせてやろうではないか」

 ルシアはそう言ったカミーユに戸惑ったまま頷き、彼は満足そうに微笑むと、待っていた護衛騎士に何かを耳打ちした。

「ああ……準備に時間がかかるな。君は一度食事でもして、着替えでもしてくれ」

 時計を見ながらカミーユはそう言ったので、ルシアは頷き、彼に指示されて慌ただしく出て行く面々を見送るしかなかった。



感想 4

あなたにおすすめの小説

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

十歳の花嫁

アキナヌカ
恋愛
アルフは王太子だった、二十五歳の彼は花嫁を探していた。最初は私の姉が花嫁になると思っていたのに、彼が選んだのは十歳の私だった。彼の私に対する執着はおかしかった。

【R18】熱い夜の相手は王太子!? ~婚約者だと告げられましたが、記憶がございません~

世界のボボブラ汁(エロル)
恋愛
激しい夜を過ごしたあと、私は気づいてしまった。 ──え……この方、誰? 相手は王太子で、しかも私の婚約者だという。 けれど私は、自分の名前すら思い出せない。 訳も分からず散った純潔、家族や自分の姿への違和感──混乱する私に追い打ちをかけるように、親友(?)が告げた。 「あなた、わたくしのお兄様と恋人同士だったのよ」 ……え、私、恋人がいたのに王太子とベッドを共に!? しかも王太子も恋人も、社交界を騒がすモテ男子。 もしかして、そのせいで私は命を狙われている? 公爵令嬢ベアトリス(?)が記憶を取り戻した先に待つのは── 愛か、陰謀か、それとも破滅か。 全米がハラハラする宮廷恋愛ストーリー……になっていてほしいですね! ※本作品はR18表現があります、ご注意ください。

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

【完結】女当主は義弟の手で花開く

はるみさ
恋愛
シャノンは若干25歳でありながら、プレスコット伯爵家の女当主。男勝りな彼女は、由緒ある伯爵家の当主として男性と互角に渡り合っていた。しかし、そんな彼女には結婚という大きな悩みが。伯爵家の血筋を残すためにも結婚しなくてはと思うが、全く相手が見つからない。途方に暮れていたその時……「義姉さん、それ僕でいいんじゃない?」昔拾ってあげた血の繋がりのない美しく成長した義弟からまさかの提案……!? 恋に臆病な姉と、一途に義姉を想い続けてきた義弟の大人の恋物語。 ※他サイトにも掲載しています。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041