絶対零度殿下からの隠れ溺愛は秘蜜の味。

待鳥園子

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48 お仕置き★①

 食事と入浴を終え、城の自分用に用意された部屋でゆっくりと寛ぎながら、ルシアは自分の姿を持つエリザベスがあの後どうなってしまったのか気になっていた。

(……ワーリントン公爵令嬢は、私がもしここに居るなら、逃げだそうと思っていたってこと?)

 ルシアがユスターシュ伯爵邸で攫われてしまったのが昼過ぎで、彼女があの姿を写し取る魔法がいつ使用されたかはわからない。

 だが、もし攫われてすぐに使用し、ルシアが目覚めるのを待っていたとすると、もう解けてしまう時間まで間もない。

 そうすれば、彼女の罪は明らかになってしまう。

 扉が軽く叩かれて、ルシアがそれに応えると、機嫌の良さそうなカミーユが入って来た。

「ああ。ルシア……入浴は、済ませたのか」

 ルシアは柔らかな素材のネグリジュへと着替えて、既に就寝の準備を済ませていた。

 カミーユも同じように入浴を済ませて、いつもは王族らしい豪奢な服装を纏っている彼だが、今は品の良い白シャツと黒いトラウザーズを身につけていた。

(何……? すごく機嫌がよさそう。カミーユがこんな風に鼻歌を歌いそうに楽しそうな空気を出しているのを、初めて見たわ)

 そもそも不機嫌で辺りが凍り付いてしまいそうな空気を纏う『氷の王子様』なのだが、これまで機嫌が良い時があったとしてもここまでではなかった。

「ええ。あの……ワーリントン公爵令嬢は、どうなさったのですか? 捕縛されて、牢に?」

 いくら権力者の娘とは言え、同じ貴族令嬢を攫い、犯罪者に加担し姿まで奪い取ろうとしたのだ。それなりの罰があるのだろうと、ルシアは当然のように思った。

「いや。俺が君を牢に送るなど、考えたこともない」

 カミーユはすげなくそう答え、さっきの質問と答えが違うように思えてルシアは戸惑った。

「……違います。あの、私ではなくて……」

「わかっている。ルシア……君の言いたいことは、わかっている。少し良いか?」

 にっこり微笑んだカミーユはルシアに声を掛け、彼女の背中を押して歩いた。

 カミーユの宮はいずれ臣籍に降りるために出て行くので、他の王族の宮より小さく造られているとは言え、主要な部屋は何部屋もあり、客室なども多く用意されていた。

 主寝室ではなく客室のある方向へと歩きながら、ルシアは自分たちが何処にいくか不思議だった。

「あの……」

「わかっている。もうすぐ……俺のやりたいことは、君にもわかるはずだ」

 カミーユはこれから何をしようとしているかは、その時になるまで教えてくれるつもりはないらしい。ルシアは小さく息をつくと、他に不思議に思っていたことを聞くことにした。

「そういえば……夕方頃、とても大きな音がしました。実はそれで犯罪者たちが目を離してくれて、私は助かったのです。あの音は一体なんだったのですか?」

 あれだけの大きな音が響いたのだから、彼だって知っているはずだ。ルシアがそう言うとカミーユはにやりと笑って、彼女の背中を叩いた。

「ああ……あれは、お前の護衛に付けていた騎士を、数人俺が吹っ飛ばした音だ。人払いされたからと素直に護衛対象から目を放す馬鹿があるか」

「え……私のせい、だったのですか?」

 ルシアは確かに騎士団に守られているし、自室に行けばすぐに戻るからと彼らを置いて階段を上った。あの粗末な屋根裏部屋を見られてしまうのが、恥ずかしかったのだ。

 だが、まさかそのせいで彼らがそんなことをされてしまうとは思ってもみなかった。

(……けど、あの身体の大きな数人を吹っ飛ばしたの? 軍総帥を務め、強いとは聞いていたけれど……信じられないわ)

「気にするな。あの程度で大きな怪我するような奴は、護衛騎士にはなれない。ああ……ルシア」

 辿り着いた扉の前で立ち止まると、カミーユはにっこりと笑って、肩を抱いているルシアの耳元へと囁いた。

「これは、勝手なことをした君へのお仕置きも兼ねているんだ。俺の言うことを黙って聞け。あの女を、俺に触らせるな」

 ぞくりとするような声音の言葉を聞いて、ルシアはカミーユの言葉の意味をわからずに驚いていた。

(お仕置き……? 触らせるなって)

 キイっと蝶番の金具の音がして、部屋の扉が開いた。

「カミーユ様! ……ええっ!!」

 その中に居たルシアの姿をしたエリザベスは、後ろ手に縄で縛られて部屋の中に居た。

 彼女はカミーユの姿を見て嬉しそうな顔から一転、隣に居るルシアを見て絶望の表情を見せ、これで自分の正体がバレてしまうのではないかと思ったらしい。

「ああ……すまない。待たせたな。実は、こちらにもルシア・ユスターシュが居てね。君もルシアの姿を持っている。だから、順番に俺が直々に試そうと思ってね」

「え? 順番ですか?」

 エリザベスは驚いた表情をして、同じような顔をしたルシアを見てカミーユは頷いた。
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