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01 婚約破棄
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「……ルシール・モートン! 君との婚約をここで、破棄させてもらう!」
「……っ……!」
突然の婚約破棄宣言を受け、私は目を見開いて驚いてしまった。
何故かというと、声高らかに私との婚約を破棄したカーター侯爵令息ロベルトは、先ほどまで談笑していた、ある程度良い関係が築けたと思っていた婚約者だったから。
いえ……だったのよ。
今夜の夜会だって共に入場もして来たし、私たち二人は良い関係を築けたと思っていた。
私が八歳の頃に婚約して今は、十七歳、つまり、私たち二人は、九年もの長い月日を婚約者同士として生きていた。
そろそろ結婚式の準備を……という話だって両親の口からは出ていたし、穏やかな性格のロベルトとの結婚には、私は何の不満もなかった。
だから、ロベルトと結婚して……カーター侯爵夫人となり、生きていくのだろうと思っていた。
けれど、婚約破棄をされてしまったとなると、どれほど言い訳を重ねたところで『あれは表向きの理由で、とんでもない女だったらしい』と、女性側に何か問題があったのだろうと勘繰られる。
それは酷過ぎるとなっても、これまでもそうだったということは、これからもきっとそうなのだろうし、ここでみっともなく喚き立ててもその結果は変わらない。
頭から冷や水を浴びせられたような思いだけれど、ロベルトが公式の場でこれを言い出したということは、私にそれだけの大きな不満があったということだ。
……それに自ら気がつけなかった、私への罰なのだわ。
「……かしこまりました。今まで、ありがとうございました」
私はせめても最後は笑顔で居ようと微笑み、カーテシーを彼に向けてした。
下がろうとして振り返るのと同時に顔を上げると、その時、一瞬だけ見えたロベルトの顔は悪戯を成功させた子どものような楽しげな表情だった。
何かしら。
ロベルトは……礼儀正しく親しげな態度を見せつつも、私を嫌っていて、こんな風に公の場で婚約破棄をしたんでしょう?
それにしては、不可解に思える微笑みだったような気がして、私は夜会会場から引き上げながら不思議に思い首を捻った。
――――さて、どうしようかしら。
いきなり婚約破棄された私は、とにかくあの場を去らなければと会場の扉から出て来たものの、ここからどうするべきか悩んだ。
だって、ロベルトに迎えに来てもらっていたので、カーター家の馬車に乗って城へとやって来たけれど、彼に婚約破棄されてしまった今の私には、カーター家の馬車に乗る資格はないもの。
だとすると……モートン家の馬車を呼ぶしかないわ。けれど、どうやって呼べば良いかしら。
まさか、今夜婚約破棄されるなんて思いもしなかったのだから、何も考えていなかったわ。
……いえ。
誰か好きな人が出来たからという婚約解消だとしても、私は何の条件も付けずに頷いたのに……今更だけどロベルトったら、何を考えているのかしら。
とは言え、何もかも、もう時既に遅しよ。
こんな風に婚約破棄されても、不都合があるのは女性側だけで、男性側であるロベルトは、今夜からでも誰かに求婚することが出来るのよ。
そして、私は何かに問題ある貴族令嬢とされてしまい、求婚者なんて現れるはずもない。
家庭教師などの職業婦人として生きていくか、教会に行って神に使えるシスターになるかの二択……いえ。運が良かったならば、妻を亡くされた貴族から後妻になる話は来るかもしれない。
……とても年齢差のある縁談になるとは思うけれど。
「……っ……!」
突然の婚約破棄宣言を受け、私は目を見開いて驚いてしまった。
何故かというと、声高らかに私との婚約を破棄したカーター侯爵令息ロベルトは、先ほどまで談笑していた、ある程度良い関係が築けたと思っていた婚約者だったから。
いえ……だったのよ。
今夜の夜会だって共に入場もして来たし、私たち二人は良い関係を築けたと思っていた。
私が八歳の頃に婚約して今は、十七歳、つまり、私たち二人は、九年もの長い月日を婚約者同士として生きていた。
そろそろ結婚式の準備を……という話だって両親の口からは出ていたし、穏やかな性格のロベルトとの結婚には、私は何の不満もなかった。
だから、ロベルトと結婚して……カーター侯爵夫人となり、生きていくのだろうと思っていた。
けれど、婚約破棄をされてしまったとなると、どれほど言い訳を重ねたところで『あれは表向きの理由で、とんでもない女だったらしい』と、女性側に何か問題があったのだろうと勘繰られる。
それは酷過ぎるとなっても、これまでもそうだったということは、これからもきっとそうなのだろうし、ここでみっともなく喚き立ててもその結果は変わらない。
頭から冷や水を浴びせられたような思いだけれど、ロベルトが公式の場でこれを言い出したということは、私にそれだけの大きな不満があったということだ。
……それに自ら気がつけなかった、私への罰なのだわ。
「……かしこまりました。今まで、ありがとうございました」
私はせめても最後は笑顔で居ようと微笑み、カーテシーを彼に向けてした。
下がろうとして振り返るのと同時に顔を上げると、その時、一瞬だけ見えたロベルトの顔は悪戯を成功させた子どものような楽しげな表情だった。
何かしら。
ロベルトは……礼儀正しく親しげな態度を見せつつも、私を嫌っていて、こんな風に公の場で婚約破棄をしたんでしょう?
それにしては、不可解に思える微笑みだったような気がして、私は夜会会場から引き上げながら不思議に思い首を捻った。
――――さて、どうしようかしら。
いきなり婚約破棄された私は、とにかくあの場を去らなければと会場の扉から出て来たものの、ここからどうするべきか悩んだ。
だって、ロベルトに迎えに来てもらっていたので、カーター家の馬車に乗って城へとやって来たけれど、彼に婚約破棄されてしまった今の私には、カーター家の馬車に乗る資格はないもの。
だとすると……モートン家の馬車を呼ぶしかないわ。けれど、どうやって呼べば良いかしら。
まさか、今夜婚約破棄されるなんて思いもしなかったのだから、何も考えていなかったわ。
……いえ。
誰か好きな人が出来たからという婚約解消だとしても、私は何の条件も付けずに頷いたのに……今更だけどロベルトったら、何を考えているのかしら。
とは言え、何もかも、もう時既に遅しよ。
こんな風に婚約破棄されても、不都合があるのは女性側だけで、男性側であるロベルトは、今夜からでも誰かに求婚することが出来るのよ。
そして、私は何かに問題ある貴族令嬢とされてしまい、求婚者なんて現れるはずもない。
家庭教師などの職業婦人として生きていくか、教会に行って神に使えるシスターになるかの二択……いえ。運が良かったならば、妻を亡くされた貴族から後妻になる話は来るかもしれない。
……とても年齢差のある縁談になるとは思うけれど。
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