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54 一面②
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「とても、わかりやすく……先方は、嘘をついている。ドラジェ伯爵の確認には、書類上の手続きを終わらせたと嘘をついているし、誰がどう聞いたとしても話がおかしい。婚約破棄は茶番だったからと婚約が継続しているという認識であれば、ドラジェ伯爵はなぜ僕との縁談に頷いた? 婚約者がいるのでと断らなければ、話が通らない。モーベット侯爵家とディレイニー侯爵家の両家に不義理を働こうとして、そこにメリットはない。そこで、わざわざ嘘をつくような理由もない。特に反証の証拠など揃えなくても、向こうの主張は貴族院では通らない」
「そう……よね」
これまでの流れを順序良く説明されたら、ジョサイアの言葉の通りだ。嘘をついているという点は、口頭だったと言われても、その後のお父様の対応を考えればおかしいことだらけ。
お父様も爵位を持つ貴族で、娘の婚約についての事務手続きを確認しない訳はない。だとしたら、ジョサイアとの縁談に頷くことも、またおかしい。
「ただ、それをわかりつつの話に出してきたような気がするし、金銭で済ませられるとしたら、そうしたい。話が広がれば広がるほどに尾ひれがついてややこしくなり、誰もが好き勝手に面白おかしく言い立てる……責任のない大衆は、事実とは反する話でも、それが面白けれそれで良いんだ。僕とオフィーリアの件で、既に実証済だ。レニエラは巻き込めない」
前にアメデオの言った通り、ジョサイアはやはり自分とオフィーリア様についての情報をすべて知っているのだわ。
知っている上で、特に否定することもなく、何も言わずに黙っている。
「モーベット侯爵……いえ。義兄さん。僕は姉さんと義兄さんが結婚した当初から、貴方と相談したかったことがあります。ショーンは好きな女性を虐めて泣かせてしまうのが楽しいという、異常性癖の持ち主でして……同じ男の僕からすると、本当に見るに耐えないことを何度も姉にしていました」
静かにアメデオが話を切り出すと、ジョサイアはため息をついて彼であるかを疑ってしまうような、非常に冷たい声で言った。
「続けて」
「……はい。僕はこれは姉を取り戻そうとしているのではないかと、そう思うんです。あの異常者には、話は通じません。自分が悪い部分は全て棚に置いた上で、何も悪いことをしていない姉を自分勝手な理由で責め立てるのではないかと、僕は心配しています」
そういえば、この前に来た時にアメデオはジョサイアと話しがしたいと言っていたはず。きっと、これを話すつもりだったんだわ……自分の弟だけど、なんて良い子なの。
私は可愛い弟からの愛にじーんとして、自然と涙が潤みそうになった。
「それには心配ない。今、ショーン・ディレイニーが、僕に何かを意見出来る立場にないことは明白だ。一介の騎士風情が、僕に何が出来る。あいつは爵位も持っていない」
ジョサイアは冷たい眼差しをして、ここには居ないショーンへの怒りの圧を強めているような辛辣な口調だった。
ここまで夫ジョサイアは妻の私には、優しくて良い部分しか見せていなかったので、本当に驚いた。
そして、昨日オフィーリア様が言っていたことをパッと思い出した。
『ジョサイアは貴女には、優しいと思うわ。ちゃんと話したら、理解しようとしてくれると思う』
と、言っていたということは、もしかして、彼女の前でもこんな感じだったのかしら?
「そう……よね」
これまでの流れを順序良く説明されたら、ジョサイアの言葉の通りだ。嘘をついているという点は、口頭だったと言われても、その後のお父様の対応を考えればおかしいことだらけ。
お父様も爵位を持つ貴族で、娘の婚約についての事務手続きを確認しない訳はない。だとしたら、ジョサイアとの縁談に頷くことも、またおかしい。
「ただ、それをわかりつつの話に出してきたような気がするし、金銭で済ませられるとしたら、そうしたい。話が広がれば広がるほどに尾ひれがついてややこしくなり、誰もが好き勝手に面白おかしく言い立てる……責任のない大衆は、事実とは反する話でも、それが面白けれそれで良いんだ。僕とオフィーリアの件で、既に実証済だ。レニエラは巻き込めない」
前にアメデオの言った通り、ジョサイアはやはり自分とオフィーリア様についての情報をすべて知っているのだわ。
知っている上で、特に否定することもなく、何も言わずに黙っている。
「モーベット侯爵……いえ。義兄さん。僕は姉さんと義兄さんが結婚した当初から、貴方と相談したかったことがあります。ショーンは好きな女性を虐めて泣かせてしまうのが楽しいという、異常性癖の持ち主でして……同じ男の僕からすると、本当に見るに耐えないことを何度も姉にしていました」
静かにアメデオが話を切り出すと、ジョサイアはため息をついて彼であるかを疑ってしまうような、非常に冷たい声で言った。
「続けて」
「……はい。僕はこれは姉を取り戻そうとしているのではないかと、そう思うんです。あの異常者には、話は通じません。自分が悪い部分は全て棚に置いた上で、何も悪いことをしていない姉を自分勝手な理由で責め立てるのではないかと、僕は心配しています」
そういえば、この前に来た時にアメデオはジョサイアと話しがしたいと言っていたはず。きっと、これを話すつもりだったんだわ……自分の弟だけど、なんて良い子なの。
私は可愛い弟からの愛にじーんとして、自然と涙が潤みそうになった。
「それには心配ない。今、ショーン・ディレイニーが、僕に何かを意見出来る立場にないことは明白だ。一介の騎士風情が、僕に何が出来る。あいつは爵位も持っていない」
ジョサイアは冷たい眼差しをして、ここには居ないショーンへの怒りの圧を強めているような辛辣な口調だった。
ここまで夫ジョサイアは妻の私には、優しくて良い部分しか見せていなかったので、本当に驚いた。
そして、昨日オフィーリア様が言っていたことをパッと思い出した。
『ジョサイアは貴女には、優しいと思うわ。ちゃんと話したら、理解しようとしてくれると思う』
と、言っていたということは、もしかして、彼女の前でもこんな感じだったのかしら?
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