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69 本当②

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「君が攫われたと聞いた時、僕はちょうどアルベルトと共に居てね。先ほど一緒に着いてきてくれたのは、彼の近衛隊だ。捜索する人を集めている時間も惜しいだろうと、貸してくれた。だから、国中に伝令がまわった。だから、今は誰も国境を越えることは出来ない」

 国王陛下の絶大なる権力、本当にすごい。しかも、時間が惜しいと言って自らの護衛を貸してくれる即断力、とても頼りになるわ。

「……何故?」

「君が攫われたと聞いてから、特別な伝令が飛んで、すべて閉鎖しているからだ。少なくとも明日の朝までは、君の無事を確認し解除されるまでは、どこも閉鎖されたままだと思う」

「嘘でしょう。迷惑をかけてしまったわ」

 誘拐された私のせいで国境を閉鎖されるなんて、思ってもみなかった。急ぎ国境を出たい人も居たかも知れないのに、不用意にショーンの馬車に乗ってしまったために、こんなことになってしまうなんて……。

「君の命が、何よりも大事だ……そのためなら、別に私財を投げ打っても構わない。本当に無事で良かった」

 そう言って、ジョサイアは私の手をぎゅっと握った。間近に迫った水色の目には涙が浮かんでいたので、彼がどれだけ心配してくれていたかを知った。

「心配をかけて……本当に、ごめんなさい」

「謝ることはないよ。すべては、あの男のせいだ……だが、君はもう僕以外の男性と馬車に乗ることは禁じるよ。あの……君の居場所を知らせるために尽力してくれた、感じの良い庭師も駄目だ。君は親しいようだけどね」

 そうよね。カルムだって、さっきの場所に居たのかしら? ショーンから一刻も早く離れたい一心で気がつかなかったわ……苦労して助けてくれたんだから、お礼を言わなければ。

「ああ。カルムのことかしら? そうね。仲良いわね。彼は私の家で産まれて育ったから……まるで、可愛い兄のようだったわ」

 可愛らしい顔を持つカルムは、本当に温厚で感じが良い。ジョサイアも同じようにそう思ったのねと、私は微笑んだ。

「……僕から見ると仲が良すぎなような、気もするけどね。良く農園にも通って居たようだし……」

 私はジョサイアが恥ずかしそうに言ったことに、何を言い出したのとすぐには理解出来ずぽかんとしてしまった。

 これは、やきもちよね……ジョサイアが、わかりやすく顔が赤い。あまり言いたくはないけど、私に言いたかった?

 あ。これって……もしかして!
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