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68 本当①
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「……誰もあんなことが起こっていたなんて、夢にも思わないでしょうね」
私は明日、夜が明けてから、偶然に道を通り過ぎている人たちが、柑橘の匂いを嗅いで不思議そうな顔をしているところを想像して、微笑んでしまった。
私を誘拐したショーンは、結構な速度で道を走らせていたし、カルムは重い樽をいくつも積んだ荷馬車で、必死で追いかけてくれていたのだろう。
「あの樽は、出荷間近だったと聞いているし……君の損害があったなら、僕が言い値で買い取らせてもらうね」
真面目な顔をしてジョサイアはそう言ったので、私は苦笑するしかない。
「まあ……モーベット侯爵。それを取引先へ言ってしまえば、どんなに天文学的な多額の値段をふっかけられても、文句が言えないのを、知っています?」
宰相補佐のこの人が、それもわからないくらいに、世間知らずでなんて、あるはずないのに……ジョサイアは、いたずらっぽく笑った。
「もちろん。僕が何倍の額でも、支払わせてもらうよ。妻の無事に、金を渋るような夫が何処にいる?」
さっきまで一緒に居たショーンともし結婚をしたなら、彼は渋りそうな人だけど。なんだか、容易に想像がつくわ……まあ、私にはもう関係のない話ね。
その前までの出来事がどうであれ、私が結婚したのは、目の前に居るジョサイア・モーベットだもの。
「そうねえ……私の事業にこれから必要だから、いくつか店舗を買ってもらおうかしら?」
「良いですよ。もう、店には目星は付いている?」
ジョサイアにすんなりと頷かれて、私は少し焦った。
少し笑える冗談のつもりで私は言ったんだけど、そういえばジョサイアは、とてもがつくくらいに真面目な人だった。
しかも、裕福で経済力だって持っていて……それが出来てしまうのも怖い。
だって、それが当たり前のことだとは、思いたくないもの。
「そうやって甘やかされると、あんまり良くないと思うわ。オフィーリア様に、言われたことを忘れたの?」
元婚約者を散々に甘やかした結果、どうなったかは知っての通りだ。私がそう言うとジョサイアは、苦笑して頷いた。
「オフィーリアは、僕が彼女と向き合わないから、あの我が儘を言っていたことを知ったのは、彼女が既に逃げてしまってからの置き手紙でなんだ……本当に、彼女には悪いことをしたとは思っている」
「オフィーリア様は、あそこまで切羽詰まって追い詰められた状況なら、ジョサイアは私へ動くかも知れないって……そう言ってました。私との恋の橋渡しを、してくれたみたいですよ。ジョサイアの元婚約者は、素敵な人ですね」
「そうですね……君の元婚約者は、真逆に許しがたいな。あそこまで……」
ジョサイアは皆まで言わなかったけど、怒りの表情が見えて彼が何を言いたいかわかった。
……ええ。わかるわ。私もそれはショーンと無関係になったと言えど、思ってしまうもの。
とはいえ、ショーンのことを考えて嫌な思いになるなんて、本当に時間の無駄だし、切り替えましょう。
……あ。そういえば、オフィーリア様へ送るサンプルを忘れていたわ!
「あ。ジョサイア。私オフィーリア様に、至急送らないといけないものがあるんですけど……」
「……オフィーリアも既に君の事情は知っているし、大丈夫だ。レニエラ」
ジョサイアは当たり前のようにそう言ったけど、私の頭の中には疑問符が溢れた。
「え。どうして、知っているの?」
私は明日、夜が明けてから、偶然に道を通り過ぎている人たちが、柑橘の匂いを嗅いで不思議そうな顔をしているところを想像して、微笑んでしまった。
私を誘拐したショーンは、結構な速度で道を走らせていたし、カルムは重い樽をいくつも積んだ荷馬車で、必死で追いかけてくれていたのだろう。
「あの樽は、出荷間近だったと聞いているし……君の損害があったなら、僕が言い値で買い取らせてもらうね」
真面目な顔をしてジョサイアはそう言ったので、私は苦笑するしかない。
「まあ……モーベット侯爵。それを取引先へ言ってしまえば、どんなに天文学的な多額の値段をふっかけられても、文句が言えないのを、知っています?」
宰相補佐のこの人が、それもわからないくらいに、世間知らずでなんて、あるはずないのに……ジョサイアは、いたずらっぽく笑った。
「もちろん。僕が何倍の額でも、支払わせてもらうよ。妻の無事に、金を渋るような夫が何処にいる?」
さっきまで一緒に居たショーンともし結婚をしたなら、彼は渋りそうな人だけど。なんだか、容易に想像がつくわ……まあ、私にはもう関係のない話ね。
その前までの出来事がどうであれ、私が結婚したのは、目の前に居るジョサイア・モーベットだもの。
「そうねえ……私の事業にこれから必要だから、いくつか店舗を買ってもらおうかしら?」
「良いですよ。もう、店には目星は付いている?」
ジョサイアにすんなりと頷かれて、私は少し焦った。
少し笑える冗談のつもりで私は言ったんだけど、そういえばジョサイアは、とてもがつくくらいに真面目な人だった。
しかも、裕福で経済力だって持っていて……それが出来てしまうのも怖い。
だって、それが当たり前のことだとは、思いたくないもの。
「そうやって甘やかされると、あんまり良くないと思うわ。オフィーリア様に、言われたことを忘れたの?」
元婚約者を散々に甘やかした結果、どうなったかは知っての通りだ。私がそう言うとジョサイアは、苦笑して頷いた。
「オフィーリアは、僕が彼女と向き合わないから、あの我が儘を言っていたことを知ったのは、彼女が既に逃げてしまってからの置き手紙でなんだ……本当に、彼女には悪いことをしたとは思っている」
「オフィーリア様は、あそこまで切羽詰まって追い詰められた状況なら、ジョサイアは私へ動くかも知れないって……そう言ってました。私との恋の橋渡しを、してくれたみたいですよ。ジョサイアの元婚約者は、素敵な人ですね」
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とはいえ、ショーンのことを考えて嫌な思いになるなんて、本当に時間の無駄だし、切り替えましょう。
……あ。そういえば、オフィーリア様へ送るサンプルを忘れていたわ!
「あ。ジョサイア。私オフィーリア様に、至急送らないといけないものがあるんですけど……」
「……オフィーリアも既に君の事情は知っているし、大丈夫だ。レニエラ」
ジョサイアは当たり前のようにそう言ったけど、私の頭の中には疑問符が溢れた。
「え。どうして、知っているの?」
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