婚約破棄してくれて、本当にありがとう。〜転生者は、まさかのあの人〜

待鳥園子

文字の大きさ
2 / 7

第2話「騎士二人」

しおりを挟む
「ブラッドレイ公爵令嬢」

 人目のない王宮の渡り廊下を、衛兵2人に連れられて歩いている時に、腕を掴んでいた彼らの歩みがぴたりと止まった。

「……あの、あなた達は誰ですか?」

 そっと二人は私の腕から手を離すと、騎士の礼をしてゆっくりと跪いた。

「先程は乱暴な真似をして申し訳ありませんでした。私はタンセント王宮騎士団長を拝命しておりますエクリュ・ルイスと申します。こちらは、私の副官のセイン・アダムス。あなたを助けるよう、ある方からの命で動いております」

 ざっと兜を二人とも外す。

 私は驚き、思わず息を止めてしまった。

 先程自己紹介をしたエクリュは見事な輝く金髪碧眼を持つ美青年、そして彼から紹介されたセインも短髪の黒髪黒目の美丈夫だったからだ。

「……ある方、というと?」

「この国では至高の存在である方です」

 ということは、陛下が? 私は首を傾げながら、今の状況を考えた。

 王様も自分の息子であるアーノルドがあんな風に……婚約者であり、幼なじみでもある私の言葉に、一切耳を貸さなくなってしまっていることは知っているんだろうか?

「さ、こちらへ、馬車を用意しております」

 私は頷いてエスコートしてくれるエクリュの後に続いた。そのまま、家族の待つブラットレイ公爵邸に帰れるのだろうとそう思いながら。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った

五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」 8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

後悔などありません。あなたのことは愛していないので。

あかぎ
恋愛
「お前とは婚約破棄する」 婚約者の突然の宣言に、レイラは言葉を失った。 理由は見知らぬ女ジェシカへのいじめ。 証拠と称される手紙も差し出されたが、筆跡は明らかに自分のものではない。 初対面の相手に嫉妬して傷つけただなど、理不尽にもほどがある。 だが、トールは疑いを信じ込み、ジェシカと共にレイラを糾弾する。 静かに溜息をついたレイラは、彼の目を見据えて言った。 「私、あなたのことなんて全然好きじゃないの」

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

助かったのはこちらですわ!~正妻の座を奪われた悪役?令嬢の鮮やかなる逆襲

水無月 星璃
恋愛
【悪役?令嬢シリーズ3作目】 エルディア帝国から、隣国・ヴァロワール王国のブランシェール辺境伯家に嫁いできたイザベラ。 夫、テオドール・ド・ブランシェールとの結婚式を終え、「さあ、妻として頑張りますわよ!」──と意気込んだのも束の間、またまたトラブル発生!? 今度は皇国の皇女がテオドールに嫁いでくることに!? 正妻から側妻への降格危機にも動じず、イザベラは静かにほくそ笑む。 1作目『お礼を言うのはこちらですわ!~婚約者も財産も、すべてを奪われた悪役?令嬢の華麗なる反撃』 2作目『謝罪するのはこちらですわ!~すべてを奪ってしまった悪役?令嬢の優雅なる防衛』 も、よろしくお願いいたしますわ!

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

処理中です...