今日は、主従逆転遊びをしましょう。

待鳥園子

文字の大きさ
6 / 8

06 呼びかけ

しおりを挟む
「アデライザ……」

「はい!」

 壁際に控えていた私は名前を呼ばれたので、本を開いたままのグレンへと近寄った。

「何でございましょう。グレン様」

「アデライザはこのことについて、どう思う?」

 グレンの手にある本のページには、穀物栽培に関して、ここ数年の研究資料が書かれていた。

「はい。穀物は温度の低い場所の方が、良く育ちます。気候に合わせた作物を育てることによって、収穫量は増えますし、領民たちは飢える可能性が少なくなります。領民が増えれば税収は増え、おのずと国王陛下は喜ばれるでしょう」

「この領地での具体的な対策としては、何をどうすれば良いと思う?」

「ジョプリング家の領地には、複雑な地形を持ち領地内でも寒暖差が大きく育ちやすい作物をこちらが指定することで、それぞれの土地に住む領民たちにも良い効果をもたらすと考えられます」

 私は手を前に組んでそう言い、グレンはどう思うかと自分が聞いた癖に、驚いた表情を浮かべていた。

「……いや、良く勉強をしているな」

「グレン様はここに来て短いから私のお父様が、どれだけ教育熱心なのかを知らないですものね。貴族たるもの、国のために尽くせる人間になれが口癖ですもの」

 私はグレンの言葉に肩を竦めた。

 もっとも、本来ならば貴族令嬢にはこのような知識は、あまり必要ないのだ。

 お父様は二人の兄二人の姉にも私と同じように厳しい教育を施し、彼らは王城で文官として若くして大出世したり、高位貴族に嫁いだりしているので、結果的に間違いではなかった。

「……それは、素晴らしい。なるほど。ジョプリング辺境伯は、聞きしに優るほど、まことに有能な人物だな」

 グレンは納得したように、何度か頷いた。お父様は彼を雇ってすぐにこの邸を出たから、色々と知らなくても無理はない。

 それにしても、雇い主のはずのお父様を、こんな風に評するなんて……グレンはとても演技が上手いわね。

「まあ……ありがとうございます。お父様も喜びますわ」

 私は微笑みメイド服のスカートを持ち、カーテシーをした。

「ところで、アデライザ。君はこの国の王族について、何処まで知っている?」

 貴族令息に扮したグレンは、私の貴族としての知識について、ここでテストをすることにでもしたらしい。

 ……別に構わないけれど、王族のことなんて、この国の人であれば誰でも知っているというのに。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。

汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。 元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。 与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。 本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。 人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。 そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。 「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」 戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。 誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。 やわらかな人肌と、眠れない心。 静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。 [こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]

悪役公爵様はイケボです。

ぱっつんぱつお
恋愛
「だめっ……! 声だけでいっちゃうっ……!」 とある美男美女ばかりの国。 汚れ仕事の公爵は、皆から穢らわしいと言われるのが普通だった。 だが、 彼は声だけで、女性を快楽へと誘うことが出来るだなんて、思ってもみなかったのだ。 その声に、魅力に気付いた者が居た。 転生者〈轟 紫音〉だ。 彼女は、どんなに公爵がこの国で嫌われていようが、関係なかった。 腰に響く声と、魅惑的な瞳、それだけで十分だった。 これは嫌われ者の公爵が、転生者の紫音によって、らぶらぶざまぁしていくお話である。 気が向いたら短編形式で更新していきます。 カクヨム、なろう様にも投稿してます

白狼王の贄姫のはずが黒狼王子の番となって愛されることになりました

鳥花風星
恋愛
白狼王の生贄としてささげられた人間族の第二王女ライラは、白狼王から「生贄はいらない、第三王子のものになれ」と言われる。 第三王子レリウスは、手はボロボロでやせ細ったライラを見て王女ではなく偽物だと疑うが、ライラは正真正銘第二王女で、側妃の娘ということで正妃とその子供たちから酷い扱いを受けていたのだった。真相を知ったレリウスはライラを自分の屋敷に住まわせる。 いつも笑顔を絶やさず周囲の人間と馴染もうと努力するライラをレリウスもいつの間にか大切に思うようになるが、ライラが番かもしれないと分かるとなぜか黙り込んでしまう。 自分が人間だからレリウスは嫌なのだろうと思ったライラは、身を引く決心をして……。 両片思いからのハッピーエンドです。

『階段対策会議(※恋愛)――年上騎士団長の健康管理が過剰です』

星乃和花
恋愛
【完結済:全9話】 経理兼給仕のクラリスは、騎士団で働くただの事務員――のはずだった。 なのに、年上で情緒に欠ける騎士団長グラントにある日突然こう言われる。 「君は転倒する可能性がある。――健康管理対象にする」 階段対策会議、動線の変更、手をつなぐのは転倒防止、ストール支給は防寒対策。 全部合理的、全部正しい。……正しいはずなのに! 「頬が赤い。必要だ」 「君を、大事にしたい」 真顔で“強い言葉”を投下してくる団長に、乙女心を隠すクラリスの心拍数は業務超過。 さらに副団長ローレンは胃薬片手に「恋は会議にするな!!」と絶叫中!? これは健康管理?それとも恋愛? ――答え合わせの前に、まず“階段(概念)“をご確認ください。

政略妻は氷雪の騎士団長の愛に気づかない

宮永レン
恋愛
これって白い結婚ですよね――? 政略結婚で結ばれたリリィと王国最強の騎士団長アシュレイ。 完璧だけど寡黙でそっけない態度の夫との生活に、リリィは愛情とは無縁だと思っていた。 そんなある日、「雪花祭」を見に行こうとアシュレイに誘われて……? ※他サイトにも掲載しております。

無慈悲な悪魔の騎士団長に迫られて困ってます!〜下っ端騎士団員(男爵令嬢)クビの危機!〜

楠ノ木雫
恋愛
 朝目が覚めたら、自分の隣に知らない男が寝ていた。  テレシアは、男爵令嬢でありつつも騎士団員の道を選び日々精進していた。ある日王城で開かれたガーデンパーティーの警備中に婚約者と鉢合わせし、一方的に婚約破棄を出されてしまった。テレシアは別に何とも思っていなくあっさりと成立させてしまったが、それを目撃していた先輩方が見かねて城下町に連れていきお酒を奢ったが、そのせいでテレシアはべろんべろんに。そして次の日、ベッドに一糸まとわぬ姿の自分と知らない男性が横たわっていた。朝の鍛錬の時間が迫っていたため眠っていた男性を放置して鍛錬場に向かったのだが、ちらりと見えた男性の服の一枚。それ、もしかして超エリート騎士団である近衛騎士団の制服……!? ※他の投稿サイトにも掲載しています。 ※改稿しました。

【完結】契約結婚のはずが、旦那様の独占欲が強すぎます!

22時完結
恋愛
契約結婚のはずが、冷徹な旦那様の独占欲が強すぎて、毎日が予想外の展開に。 心優しい私は、彼の冷酷な態度に傷つきながらも次第にその愛に溺れていく。けれど、旦那様の過去の秘密と強すぎる愛情に、私はどう対処すればいいのか…?波乱万丈な日々の中で、二人の関係は一歩一歩進んでいく。果たして、彼の独占欲が私を束縛するのか、それとも二人で幸せな未来を築けるのか?

魔法具屋の孫娘が店長代理として働くことになったが、お客様から言い寄られて困っている話

くじら
恋愛
おじいちゃんのお店『プレーダッド魔法具店』 骨折した祖父のかわりに、孫のアルールは店長代理として働くことになる。 初日に来店したお客様が、軽くてやたら絡んでくるのだけど…。 これは、異世界の日常にある平民のお話。

処理中です...