今日は、主従逆転遊びをしましょう。

待鳥園子

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08 交換

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「おい。アデライザ。俺には散々、手を焼かせてくれたな。ようやく捕まえたぞ」

 一人称と話し方が荒っぽく変わったことなんて、まったく気にならなかった。

 縁談相手の王子様が執事に扮してまで、私に会いに来るなんて、誰が考えつくというの!?

「もっ……申し訳ありません……」

 ここでも声が震えてしまった。これは、夢であって欲しいけれど、夢ではないもの!

 遊びで私たちの関係性を交換しましょう……だなんて、既に交換されてしまった後だから、これで関係性の上下は元に戻っていたんだわ!

 今は王族の第三王子様と、臣下たる辺境伯家の令嬢。

 そもそも、これまでの貴族令嬢と執事の関係性が、逆だったのよ!

「もし、縁談を断るのなら本人に会ってからだと父から強く言われ、俺が身分を明かさぬままなら、断る理由となるボロも出すだろうと、仕方なく執事を演じていれば……少々元気の良いだけの、おしとやかなお嬢様ではないか。お茶を淹れるのは下手だが、勉強もよくしているようだ」

「そっ……それは」

 閉じた本を持ち上げ急に悪い表情になったグレンのいいように、私は言葉を失ってしまった。

 だとするならば、グレン殿下は私と会いに王都から離れて、この遠い辺境にまでわざわざやって来ていた。

 すべては、お茶会から逃げた私に会うためだけに。

「ちなみに領地に来てから俺が身分を明かして訪ねれば、アデライザの母は『絶対に逃げ出します』と断言していたが、その通りなのか?」

「え……ええ……そうなってしまうと思います」

 完全に理解されている母の言葉に、私は苦笑いしてしまった。

 だって、王子様と結婚するという重圧になんて耐えられそうもない。会わずに済むなら済ませたいと、全力で逃げ出してしまったかもしれない。

「さて、ジョプリング辺境伯令嬢アデライザ。ようやく縁談相手と会って、どう思う?」

「びっ……びっくりしました!」

 本当にそう思って居たので、素直な気持ちを言った。

「良し。わかった。結婚しよう」

「え!?」

 グレンはスッと立ち上がり、動きを止めた私の手を取って甲に口を付けた。

「アデライザは面白い。まさか、この俺に主従逆転を言い出すとはな……もう一度、逆転遊びをしてみるか?」

「ぜっ……絶対に、嫌です!」

 さっきまでまったくそんな素振りもない執事グレンだったはずの人は、自信満々の王子様グレンとなり……私はメイド服のままで、そんな彼に求婚されることになってしまった。

Fin
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