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04 上書き

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「そうです! 偽物の恋を、上書きをするんです! 好きな人を好きな人で上書きです! そうすれば、あのお色気たっぷりな未亡人を見ても団長は違う人を好きな訳ですから、何も思いません!」

 部屋の中にパラパラと遠慮がちな拍手が鳴った。えへへ。入団早々に優秀なことが、認められちゃったかな。腰掛けのつもりなので、出世コースは困る。

「ほう……それでは、上書きする相手はどうするんだ?」

 真剣な表情の団長がこちらを見つめて聞いてきたので、私は真面目な表情を保ったまま「きた!! きたよ!! 私が騎士団に入った役割は、きっとこのためだよ!!」と、心の中では色めきだち目を輝かせた。

「ぜひ……上書きするお相手は、副団長にしてみては?」

「何を言っている? レギウスは男だぞ」

 不可解そうな顔を浮かべたルドルフ団長の隣には、不味いものを食った時のような顔をしているレギウス副団長。

 ここで特筆しておきたいのが、団長と副団長彼ら二人はとても容姿が良いのだ。私の妄想の中では、いつも恋人同士の役割。ちなみに彼らの見回りにこっそり混ざるのも、良い妄想のために材料を求めてのことである。

「……団長、いかがです? 我が国では幼少時から適切な教育により、同性に恋をしたとしても、大半の理性ある大人はそういう人も確かに居るよねと多様性に理解があります。特段差別されることもなく、良い恋愛となるでしょう……それにお二人が付き合っていると思えば、私たち団長×副団長派にとっては、とっても嬉しい展開です!」

 これは名案ですよとばかりに私が両腕を広げて言えば、団長と副団長は微妙な表情のままで固まった。

 お二人は金髪碧眼と銀髪碧眼だ。絵面的に良すぎる。もう、ひと月と言わず付き合って、そのまま結婚して幸せになってもらうしかない。

 周囲の騎士団員も、無言のまま無表情だ。まるで、自分は余計な流れ弾には絶対に当たりたくないと、極力気配を押し殺して居るようだ。

 え? 嘘。なんで? これ以上ないと思う、素敵な名案なのに。

 思ってもみなかった凍りついた周囲の空気の中で、私は戸惑った。

 ええ……これって、なんか、やばいこと言っちゃった?

「そうか……ローラ。やけに嬉しそうだな……男同士がそういう関係にあるのを喜ぶのは、君の趣味なのか?」

「そうです。なんら、おかしいことではありません。女性嫌いの団長は、自分と同じ男性なら守備範囲なのではという……私の完璧なる予想です」

 きっぱりと言い放った私に、団長と副団長の二人は一度顔を見合わせてから、嫌そうにお互いに顔を背けた。

「え? 待って。止めて。それに、団長×副団長派ってなんなの? 他にどんな派閥があるの? 俺たちは、その子たちの妄想の中で、どんなことをしてるの?」
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