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05 夜会会場
◇◆◇
夜会ともなれば、夫婦同伴が常識だけれど、一人での参加だってままある。火遊び相手を求める夫婦も良く見る。
私はマクティア侯爵家を口上されて会場へと入り、主催者である伯爵と挨拶を交わして、周囲をチラチラと確認した。やはり思った通り、今夜の夜会は生粋の貴族ばかりではない。
そうなれば、半分の貴族の血しか持たない公爵令嬢にも価値があると見て、結婚相手に選ぶ男性も多いはずだわ。
私は目論見通りと、ほっと息をついた。流石に夜会へ護衛騎士同伴というわけにもいかない。ダニエルはダニエルでクインシー公爵家の遠縁として入り込んでいるはずだ。
さて、知り合いを見付けて誰かを紹介してもらわねば……一人身分の高いとっかかりになる人物が居れば、そこから繋がっていくはずよ。
……あら。信じられない。
あそこにいらっしゃるのは、私の夫ジャレッド様ではないかしら?
私が形ばかりとは言え、夫を見間違えるはずもない。どうやら、彼も私に気が付いたようで、こちらへと近付いて来た。
……どうしてかしら。ジャレッド様は夜会は、あまり好きではない。だから、私も結婚してから、数回しか彼と同伴していない。
それなのに、平民の商人も呼ばれるような夜会に彼が用事なんてあるはず……。
「……クラウディア。君が夜会なんて、珍しいね。しかも、一人で」
ジャレッド様の美しい金髪は照明の光を弾いて、間近でそれを目にするとなんだか目が眩みそうになった。
夜会で既婚者が一人で居るということは、火遊びの相手を求めているという意味になり……いえ。私の場合は、真剣に再婚相手を求めているのだけど、そういう異性を求めているのだろうという目で見られてしまうことは仕方ない。
……誰のせいだと言いたいところを、ぐっと飲み込み、私は肩を竦めて手に持っていたワインを口にした。
「あら……私に何かご用ですか?」
三ヶ月後に離婚する妻だというのに、何の用もないだろう。そういう気持ちを込めて言えば、ジャレッド様の緑の目には傷ついた光が見えた。
「……まだ夫婦なのだから、質問する程度の会話は許されるのでは?」
確かに私は離婚宣告を受けたとは言え、ジャレッド様の邸に住み、彼のお金で生活をしている。ちなみにこのドレスも彼のお金で作った。
結婚時には父に持たされた持参金があったとしても、それは、離婚時には返して貰うことになる。ジャレッド様の言い分は、もっともだった。
「そうですね。私が一人で夜会に来るのは、とても珍しいですわね」
彼の言う通りなので、それには、一応同意しておいた。ジャレッド様の望んだ答えではなかったせいか、彼はよりムッとした表情になっていた。
……何が言いたいのかしら。まったく考えが読めずに、私は戸惑った。
「今夜はどうするつもりだ? 別に宿泊してくると言ったらしいが」
ああ……そうだった。会場が遠方であったので、私はお気に入りの別荘に泊まることにしたのだ。
離婚してしまえば、二度と宿泊することもないのだから、最後の別れにと思っただけだった。
夜会ともなれば、夫婦同伴が常識だけれど、一人での参加だってままある。火遊び相手を求める夫婦も良く見る。
私はマクティア侯爵家を口上されて会場へと入り、主催者である伯爵と挨拶を交わして、周囲をチラチラと確認した。やはり思った通り、今夜の夜会は生粋の貴族ばかりではない。
そうなれば、半分の貴族の血しか持たない公爵令嬢にも価値があると見て、結婚相手に選ぶ男性も多いはずだわ。
私は目論見通りと、ほっと息をついた。流石に夜会へ護衛騎士同伴というわけにもいかない。ダニエルはダニエルでクインシー公爵家の遠縁として入り込んでいるはずだ。
さて、知り合いを見付けて誰かを紹介してもらわねば……一人身分の高いとっかかりになる人物が居れば、そこから繋がっていくはずよ。
……あら。信じられない。
あそこにいらっしゃるのは、私の夫ジャレッド様ではないかしら?
私が形ばかりとは言え、夫を見間違えるはずもない。どうやら、彼も私に気が付いたようで、こちらへと近付いて来た。
……どうしてかしら。ジャレッド様は夜会は、あまり好きではない。だから、私も結婚してから、数回しか彼と同伴していない。
それなのに、平民の商人も呼ばれるような夜会に彼が用事なんてあるはず……。
「……クラウディア。君が夜会なんて、珍しいね。しかも、一人で」
ジャレッド様の美しい金髪は照明の光を弾いて、間近でそれを目にするとなんだか目が眩みそうになった。
夜会で既婚者が一人で居るということは、火遊びの相手を求めているという意味になり……いえ。私の場合は、真剣に再婚相手を求めているのだけど、そういう異性を求めているのだろうという目で見られてしまうことは仕方ない。
……誰のせいだと言いたいところを、ぐっと飲み込み、私は肩を竦めて手に持っていたワインを口にした。
「あら……私に何かご用ですか?」
三ヶ月後に離婚する妻だというのに、何の用もないだろう。そういう気持ちを込めて言えば、ジャレッド様の緑の目には傷ついた光が見えた。
「……まだ夫婦なのだから、質問する程度の会話は許されるのでは?」
確かに私は離婚宣告を受けたとは言え、ジャレッド様の邸に住み、彼のお金で生活をしている。ちなみにこのドレスも彼のお金で作った。
結婚時には父に持たされた持参金があったとしても、それは、離婚時には返して貰うことになる。ジャレッド様の言い分は、もっともだった。
「そうですね。私が一人で夜会に来るのは、とても珍しいですわね」
彼の言う通りなので、それには、一応同意しておいた。ジャレッド様の望んだ答えではなかったせいか、彼はよりムッとした表情になっていた。
……何が言いたいのかしら。まったく考えが読めずに、私は戸惑った。
「今夜はどうするつもりだ? 別に宿泊してくると言ったらしいが」
ああ……そうだった。会場が遠方であったので、私はお気に入りの別荘に泊まることにしたのだ。
離婚してしまえば、二度と宿泊することもないのだから、最後の別れにと思っただけだった。
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