6 / 20
06 都合の良い提案②
「どうか、返事を。レティシア」
「まっ……待ってください。わっ……私で良いんですか……?」
私がどういうスペックなのか知らないけど、物凄く話が早い。おそらく、絶世の美女なのかもしれない。鏡が早く見たい。
「むしろ、君でないと駄目ですね」
などと、彼に横抱きにされたままで、完璧な容姿を持つ辺境伯に、これを言われた時の心境を述べよ。
もうっ……胸のときめきが暴走列車で、身体中からハート型の花火が打ち上がる幻想まで見るしかないよね。
……待って。待って! 何もかもが上手く行き過ぎて、なんだか、怪し過ぎる。
これって、よく出来た結婚詐欺ではないよね。そんな訳ないけど、それを疑うくらいに上手くいき過ぎだよね? 色んな情報源からの失敗談を聞いている耳年魔な喪女の嗅覚舐めないで。
……さっき婚約破棄されて、今がこれでしょう?
確か乙女ゲーム攻略対象からの告白って、攻略直前好感度90パーセントは超えてないと、起こらないイベントだったような気がする。
これがもし小説で私が読者だったら、展開早過ぎてラブストーリーなら、もう少しヒーローの告白は溜めた方が良くないですかって感想を、作者に書いちゃうところだよ!
「あのっ……話が……早過ぎないですか? ヴィクトルはそれで、大丈夫ですか?」
私が言うのもなんだけど、さっき……さっき、私たち会ったところだよ! 恋人になるのなら、もう少しお互いを知ったりした方が良くない?
私の言わんとしていることなどお見通しなのか、ヴィクトルは片眉を上げて苦笑した。
はーっ……そういった男くさい顔も眼福です……ありがとうございます。
「……僕は辺境を守る辺境伯で、危険な国境を守るのが仕事です。最近国境沿いにある隣国との緊張が増していて、今夜にでも帰らねばなりません。王都に滞在している時間はないので、レティシアが僕と行くと決めるならば、今すぐが嬉しいです」
困った表情になったヴィクトルが、早く私に告白せねばと思っていた理由がこれで理解出来た。
「……それで、私に今すぐに恋人にならないかって、聞いたんですね」
なっ……なるほど! ヴィクトルは今夜領地に帰らないといけないから、ここで私を連れて行きたいって、すぐに告白をしたんだ。
「ええ。特別に陛下に呼び出されていたんです。だから、レティシアを僕の守る辺境デストレへ連れ帰るのも、今夜決めねばなりません」
「それで、さっき……リアム殿下も辺境伯のヴィクトルが、この城に居たことに驚いていたんですか」
二人の会話の中で、私が不思議だなと思っていた部分の謎が解けた。ヴィクトルはいつもここに居ないから、何故ここに居るとリアム殿下に質問されていた。
「そうです……僕と一緒に、デストレまで来てくれますか。レティシア。君は婚約破棄されていれば、社交界での目は自ずと冷たくなりますが、僕の居る辺境に居れば、彼らとほぼ会うことはありません」
えっ……何。私にとって、都合良すぎて怖い。
そうだよ。ヴィクトルに辺境に一緒に連れて行ってもらえれば、さっきリアム殿下に、王族に婚約破棄されたという貴族令嬢としてのデメリットが、これで全部消えてしまう。
そして、ヴィクトルの妻である辺境伯夫人として、確固たる地位が築けるという、そういう好条件の提案だった。
これは、乗るしかないビッグウェーブだよね? 自然と喉が鳴った。
ヴィクトルは婚約破棄直後に転んでしまった私を助けてくれて、こうして愛の告白もしてくれた。誠実だよね。ちゃんとしてるっていうか。
あまりに話が早すぎるのが少し不安だけど、結婚って好きの度合いよりも、必要性とタイミングって言うし……何より、私がヴィクトルが好み。
「けど……その、私の両親の許可が」
懸念事項として真っ先に浮かんだのが、これ。記憶を取り戻した私も会ったことのない両親にも説明が要るのではないかと問えば、ヴィクトルはにっこりと微笑んで言った。
「安心してください。ルブラン公爵は、父の代から懇意にして頂いています。きっと、殿下から婚約破棄されたから、顔を合わせるのが憂鬱なんでしょう」
「はい……その通りです」
政略結婚なのに、先方からの婚約破棄されるって、両親には絶対に怒られると思う。
「後で僕の方から全て説明しますので、レティシアは何の心配も要りません……すぐに、僕の領地に発ちます。ゆっくりと、そちらで傷心を癒やしてください」
実はこれまでにレティシアとして過ごした記憶がないので、婚約破棄された後で、両親にもどう説明しようと心のどこかで思っていた。
あんな風に婚約破棄されたくらいだから、絶対にヒロインに悪事を働いていると思うし……言い訳しようにも、記憶がない。
つまり、ヴィクトルが私の恋人になり領地に連れて行きたいと言う提案は、前世の記憶取り戻したての悪役令嬢な私に都合良過ぎて、少し怖いまである。
ええい……女は度胸よ! しかも、騙されても本望なくらい、ヴィクトルは素敵だし!
「そっ……そうしたら、友人からお願いします」
心の中での気合いとは裏腹に、もごもごと返事した私に、ヴィクトルは頷いて背中を軽く撫でた。
「ありがとうございます。嬉しいです」
「……はい」
その時、彼が見せた笑顔は本当に嬉しそうで、私も自然と微笑んだ。
やっ……やったー! これで、断罪された悪役令嬢だけど、素敵な辺境伯と、ハッピーエンドルート開通!
「まっ……待ってください。わっ……私で良いんですか……?」
私がどういうスペックなのか知らないけど、物凄く話が早い。おそらく、絶世の美女なのかもしれない。鏡が早く見たい。
「むしろ、君でないと駄目ですね」
などと、彼に横抱きにされたままで、完璧な容姿を持つ辺境伯に、これを言われた時の心境を述べよ。
もうっ……胸のときめきが暴走列車で、身体中からハート型の花火が打ち上がる幻想まで見るしかないよね。
……待って。待って! 何もかもが上手く行き過ぎて、なんだか、怪し過ぎる。
これって、よく出来た結婚詐欺ではないよね。そんな訳ないけど、それを疑うくらいに上手くいき過ぎだよね? 色んな情報源からの失敗談を聞いている耳年魔な喪女の嗅覚舐めないで。
……さっき婚約破棄されて、今がこれでしょう?
確か乙女ゲーム攻略対象からの告白って、攻略直前好感度90パーセントは超えてないと、起こらないイベントだったような気がする。
これがもし小説で私が読者だったら、展開早過ぎてラブストーリーなら、もう少しヒーローの告白は溜めた方が良くないですかって感想を、作者に書いちゃうところだよ!
「あのっ……話が……早過ぎないですか? ヴィクトルはそれで、大丈夫ですか?」
私が言うのもなんだけど、さっき……さっき、私たち会ったところだよ! 恋人になるのなら、もう少しお互いを知ったりした方が良くない?
私の言わんとしていることなどお見通しなのか、ヴィクトルは片眉を上げて苦笑した。
はーっ……そういった男くさい顔も眼福です……ありがとうございます。
「……僕は辺境を守る辺境伯で、危険な国境を守るのが仕事です。最近国境沿いにある隣国との緊張が増していて、今夜にでも帰らねばなりません。王都に滞在している時間はないので、レティシアが僕と行くと決めるならば、今すぐが嬉しいです」
困った表情になったヴィクトルが、早く私に告白せねばと思っていた理由がこれで理解出来た。
「……それで、私に今すぐに恋人にならないかって、聞いたんですね」
なっ……なるほど! ヴィクトルは今夜領地に帰らないといけないから、ここで私を連れて行きたいって、すぐに告白をしたんだ。
「ええ。特別に陛下に呼び出されていたんです。だから、レティシアを僕の守る辺境デストレへ連れ帰るのも、今夜決めねばなりません」
「それで、さっき……リアム殿下も辺境伯のヴィクトルが、この城に居たことに驚いていたんですか」
二人の会話の中で、私が不思議だなと思っていた部分の謎が解けた。ヴィクトルはいつもここに居ないから、何故ここに居るとリアム殿下に質問されていた。
「そうです……僕と一緒に、デストレまで来てくれますか。レティシア。君は婚約破棄されていれば、社交界での目は自ずと冷たくなりますが、僕の居る辺境に居れば、彼らとほぼ会うことはありません」
えっ……何。私にとって、都合良すぎて怖い。
そうだよ。ヴィクトルに辺境に一緒に連れて行ってもらえれば、さっきリアム殿下に、王族に婚約破棄されたという貴族令嬢としてのデメリットが、これで全部消えてしまう。
そして、ヴィクトルの妻である辺境伯夫人として、確固たる地位が築けるという、そういう好条件の提案だった。
これは、乗るしかないビッグウェーブだよね? 自然と喉が鳴った。
ヴィクトルは婚約破棄直後に転んでしまった私を助けてくれて、こうして愛の告白もしてくれた。誠実だよね。ちゃんとしてるっていうか。
あまりに話が早すぎるのが少し不安だけど、結婚って好きの度合いよりも、必要性とタイミングって言うし……何より、私がヴィクトルが好み。
「けど……その、私の両親の許可が」
懸念事項として真っ先に浮かんだのが、これ。記憶を取り戻した私も会ったことのない両親にも説明が要るのではないかと問えば、ヴィクトルはにっこりと微笑んで言った。
「安心してください。ルブラン公爵は、父の代から懇意にして頂いています。きっと、殿下から婚約破棄されたから、顔を合わせるのが憂鬱なんでしょう」
「はい……その通りです」
政略結婚なのに、先方からの婚約破棄されるって、両親には絶対に怒られると思う。
「後で僕の方から全て説明しますので、レティシアは何の心配も要りません……すぐに、僕の領地に発ちます。ゆっくりと、そちらで傷心を癒やしてください」
実はこれまでにレティシアとして過ごした記憶がないので、婚約破棄された後で、両親にもどう説明しようと心のどこかで思っていた。
あんな風に婚約破棄されたくらいだから、絶対にヒロインに悪事を働いていると思うし……言い訳しようにも、記憶がない。
つまり、ヴィクトルが私の恋人になり領地に連れて行きたいと言う提案は、前世の記憶取り戻したての悪役令嬢な私に都合良過ぎて、少し怖いまである。
ええい……女は度胸よ! しかも、騙されても本望なくらい、ヴィクトルは素敵だし!
「そっ……そうしたら、友人からお願いします」
心の中での気合いとは裏腹に、もごもごと返事した私に、ヴィクトルは頷いて背中を軽く撫でた。
「ありがとうございます。嬉しいです」
「……はい」
その時、彼が見せた笑顔は本当に嬉しそうで、私も自然と微笑んだ。
やっ……やったー! これで、断罪された悪役令嬢だけど、素敵な辺境伯と、ハッピーエンドルート開通!
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
すみっこ婚約破棄同盟〜王子様による婚約破棄のすみっこで〜
まりー
恋愛
ある夜会で王子とその側近達の婚約破棄が行われた。腕に恋人をぶら下げて。所謂、王道断罪劇である。
でもこのお話の主役は麗しのヒロインでも、キラキラ王子でも、学園一の秀才や騎士団期待のホープでもない。これは王道のすみっこで行われた、弱小貴族と商人の子息たちの婚約破棄のお話である。
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
「もう俺ら、恋なんてしない!」と言う小学生の息子の話を参考に書きました。登場人物の男子たちの頭は小学生レベルだと思って読んでください。
世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました
由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。
——皇子を産めるかどうか。
けれど私は、産めない。
ならば——
「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」
そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。
毒を盛られても、捨てられず。
皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。
「お前は、ここにいろ」
これは、子を産めない女が
ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。
そして——
その寵愛は、やがて狂気に変わる。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
ど天然で超ドジなドアマットヒロインが斜め上の行動をしまくった結果
宝月 蓮
ファンタジー
アリスはルシヨン伯爵家の長女で両親から愛されて育った。しかし両親が事故で亡くなり叔父一家がルシヨン伯爵家にやって来た。叔父デュドネ、義叔母ジスレーヌ、義妹ユゲットから使用人のように扱われるようになったアリス。しかし彼女は何かと斜め上の行動をするので、逆に叔父達の方が疲れ切ってしまうのである。そしてその結果は……?
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
表紙に素敵なFAいただきました!
ありがとうございます!
悪役令嬢のはずですが、年上王子が幼い頃から私を甘やかす気でいました
ria_alphapolis
恋愛
私は、悪役令嬢なのかもしれない。
王子の婚約者としては少し我儘で、周囲からは気が強いと思われている――
そんな自分に気づいた日から、私は“断罪される未来”を恐れるようになった。
婚約者である年上の王子は、今日も変わらず優しい。
けれどその優しさが、義務なのか、同情なのか、私にはわからない。
距離を取ろうとする私と、何も言わずに見守る王子。
両思いなのに、想いはすれ違っていく。
けれど彼は知っている。
五歳下の婚約者が「我儘だ」と言われていた幼い頃から、
そのすべてが可愛くて仕方なかったことを。
――我儘でいい。
そう決めたのは、ずっと昔のことだった。
悪役令嬢だと勘違いしている少女と、
溺愛を隠し続ける年上王子の、すれ違い恋愛ファンタジー。
※溺愛保証/王子視点あり/幼少期エピソードあり
推しの悪役令嬢を幸せにします!
みかん桜
恋愛
ある日前世を思い出したエレナは、自分が大好きだった漫画の世界に転生していることに気付いた。
推しキャラは悪役令嬢!
近くで拝みたい!せっかくなら仲良くなりたい!
そう思ったエレナは行動を開始する。
それに悪役令嬢の婚約者はお兄様。
主人公より絶対推しと義姉妹になりたい!
自分の幸せより推しの幸せが大事。
そんなエレナだったはずが、気付けば兄に溺愛され、推しに溺愛され……知らない間にお兄様の親友と婚約していた。
【完結】 「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります
廻り
恋愛
羊獣人の伯爵令嬢リーゼル18歳には、双子の兄がいた。
二人が成人を迎えた誕生日の翌日、その兄が突如、行方不明に。
リーゼルはやむを得ず兄のふりをして、皇宮の官吏となる。
叙任式をきっかけに、リーゼルは皇帝陛下の目にとまり、彼の侍従となるが。
皇帝ディートリヒは、リーゼルに対する重大な悩みを抱えているようで。