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14 悪意(side Garret)
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「義母上も自身の権力が強まることを、恐れているのではないか。宮廷での派閥争いは、熾烈になるばかり。そういった強硬手段を取れば、母の実家バルレッタ家も黙っていまい」
「ははは。あの欲深い女が、そんなしおらしく考えるかね? だと、良いけどねえ……」
ガレスは俺の母に代わり、王妃の座に就いた元側妃の義理の母に対し不満があるようだ。父も亡き母を、愛していたように思う。
だが、王妃の座をいつまでも空けておく訳にもいかない。義理の母が王妃になることそれすらも、定められた流れであったと言わればそうなのかもしれない。
「今日は、ローレンの姿を見なかったな……」
ひと月まえに婚約者として紹介されたメートランド侯爵家のローレンは、俺の婚約者になりたいという彼女の強い希望に両親が胸を打たれ、婚約者になったはずだった。
しかし、俺に対応する時に、どう考えても素っ気ない態度なのだ。やはり、王族の権力や金目当てなのだろう。そうだとすれば、こちらもそれなりに適当に対応すれば良い。
ローレンは婚約者に選ばれたなりの役目はちゃんと果たしているとでも言いたげに、一日に一回か二回俺に会いに来て挨拶したり話をする。
だが、今日は何故か来なかった。
古くから仕えるメートランド侯爵家の令嬢との結婚ならば、今宮廷で激しく勢力を争い合っている二派も何も言えない。俺とローレンの婚約は父上や義母上も、考えに考えた難しい落とし所だったのかもしれない。
彼女は家のことを除けば、人柄などには全く問題はなさそうではあるし……熱い恋愛に至らないとしても、長く夫婦として連れ添えば、信頼関係も生まれるかもしれない。
いや、俺を好きなのではないかという、釈然としない思いはどうしても隠せないが。
「ああ……お前をお慕いしているはずの……あの令嬢だろ? 王太子妃の教育は特に厳しいと聞くし、今は多忙なのではないか」
俺たち二人は勝手知ったる近道を進むため行儀悪く庭を抜け、そろそろ自分の宮に帰り着こうかといった頃に、庭の池の傍で人影を見つけ立ち止まった。
こんな深夜なのに、池に身投げでもするつもりか? いや、そもそもここは王族かそれに仕える者しか入れない。
誰だ?
明るい月明かりの中池のほとりで一人の女性が蹲り、悲哀を滲ませて肩を震わせて泣いている。こんな場所で一人で? 目を凝らして見つめれば、あの見覚えのある、美しい長い金髪は……もしかして。
「もしかして……ローレンか? こんな場所で、一人で泣いているのか?」
「そうみたいだな。どうする? お前が行くか?」
頭をかいたガレスは自分が彼女の元へ行っても良いと、言外に含ませた。
もし何処かに誰かの目があれば、婚約者と言えど異性とこんな深夜に密かに会っていると思われれば良くないだろう。まだ未婚の彼女の評判に、関わってしまう。
無責任な噂は、いくらでも悪意を持つ。誰か侍女を呼んでも良いが、ここで隠れて泣いているくらいだ。誰にも知られたくは、ないんだろう。
「ははは。あの欲深い女が、そんなしおらしく考えるかね? だと、良いけどねえ……」
ガレスは俺の母に代わり、王妃の座に就いた元側妃の義理の母に対し不満があるようだ。父も亡き母を、愛していたように思う。
だが、王妃の座をいつまでも空けておく訳にもいかない。義理の母が王妃になることそれすらも、定められた流れであったと言わればそうなのかもしれない。
「今日は、ローレンの姿を見なかったな……」
ひと月まえに婚約者として紹介されたメートランド侯爵家のローレンは、俺の婚約者になりたいという彼女の強い希望に両親が胸を打たれ、婚約者になったはずだった。
しかし、俺に対応する時に、どう考えても素っ気ない態度なのだ。やはり、王族の権力や金目当てなのだろう。そうだとすれば、こちらもそれなりに適当に対応すれば良い。
ローレンは婚約者に選ばれたなりの役目はちゃんと果たしているとでも言いたげに、一日に一回か二回俺に会いに来て挨拶したり話をする。
だが、今日は何故か来なかった。
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彼女は家のことを除けば、人柄などには全く問題はなさそうではあるし……熱い恋愛に至らないとしても、長く夫婦として連れ添えば、信頼関係も生まれるかもしれない。
いや、俺を好きなのではないかという、釈然としない思いはどうしても隠せないが。
「ああ……お前をお慕いしているはずの……あの令嬢だろ? 王太子妃の教育は特に厳しいと聞くし、今は多忙なのではないか」
俺たち二人は勝手知ったる近道を進むため行儀悪く庭を抜け、そろそろ自分の宮に帰り着こうかといった頃に、庭の池の傍で人影を見つけ立ち止まった。
こんな深夜なのに、池に身投げでもするつもりか? いや、そもそもここは王族かそれに仕える者しか入れない。
誰だ?
明るい月明かりの中池のほとりで一人の女性が蹲り、悲哀を滲ませて肩を震わせて泣いている。こんな場所で一人で? 目を凝らして見つめれば、あの見覚えのある、美しい長い金髪は……もしかして。
「もしかして……ローレンか? こんな場所で、一人で泣いているのか?」
「そうみたいだな。どうする? お前が行くか?」
頭をかいたガレスは自分が彼女の元へ行っても良いと、言外に含ませた。
もし何処かに誰かの目があれば、婚約者と言えど異性とこんな深夜に密かに会っていると思われれば良くないだろう。まだ未婚の彼女の評判に、関わってしまう。
無責任な噂は、いくらでも悪意を持つ。誰か侍女を呼んでも良いが、ここで隠れて泣いているくらいだ。誰にも知られたくは、ないんだろう。
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