42 / 60
42 慎重
しおりを挟む
そして、そろりと慎重にこちらへ近寄ろうとした気配を感じたので、私は両手をあげてそれを防いだ。
「待って! 近寄らないでください!」
「え! 何? 俺がそんなに嫌なのか?」
「近くに居ると、恥ずかしいんです……本当に、ごめんなさい」
「え……? え? あ。そういう……俺が近くに居ると、恥ずかしいから?」
「そうなんです。ごめんなさい……」
ようやく、嫌がられたりとか嫌われたりとか、そういう嫌な意味ではないと思い至ったのか、私の言葉に何度か頷いたギャレット様もそろそろと私の居る反対側扉の方にまで寄った。
「わかった。ごめん……なるべく、離れるようにする」
素直なギャレット様は近寄りたくないといった私の希望を聞き入れ、王族用とは言えそこまで広くない馬車の中で出来る限り離れてくれた。
となると、私の方はとても自分勝手な気持ちだけど、なんだか物足りなくなって来てしまった。
ちらっと反対側を見ればギャレット様は、ようやくここまできたのに何か下手なことをしでかしてはいけないと思っているのか、息を殺して座っているようだ。
え……可愛い。まるで大型犬が待てを言いつけられて、じっと我慢しているようで。
「あの……ごめんなさい。そんなに、隅に行かなくても……良いです。私も落ち着いてきました」
微笑んだ私に、ギャレット様も頷いて笑ってくれた。
「ああ……良かった。ローレンに嫌われたのかと思った」
ほっと息をついて、私の方へと近寄ったギャレット様に、私は両手を突き出した。
「駄目です。待ってください」
「……え?」
「やっぱり……」
無理ですと言いかけた私の体を抱き上げて膝に載せると、ギャレット様は顔を間近に近づけて笑った。
「おい。もう良いだろう? 恥ずかしかったら、どうにかして慣れてくれ。これまでのあれは結婚を先延ばしにするための言い訳だったと知っているから、そろそろ俺には慣れてくれても良いと思うが」
「そ、そそそ……そうですよね! もうっ……私もギャレット様に慣れなきゃいけないことは、ちゃんとわかってはいるんですけど!!」
顔が赤い。これまでギャレット様には、冷たく対応しないとって思ってた……だって、私って期間限定の婚約者だったし……。
でも、これからはそうでなくなる。
数ヶ月一緒に居て、キスだって何度もしている。それなのに、やっぱりどうしても、恥ずかしいのだ。
彼のことが好きだと、やっと正面から言えるようになったから。
「待って! 近寄らないでください!」
「え! 何? 俺がそんなに嫌なのか?」
「近くに居ると、恥ずかしいんです……本当に、ごめんなさい」
「え……? え? あ。そういう……俺が近くに居ると、恥ずかしいから?」
「そうなんです。ごめんなさい……」
ようやく、嫌がられたりとか嫌われたりとか、そういう嫌な意味ではないと思い至ったのか、私の言葉に何度か頷いたギャレット様もそろそろと私の居る反対側扉の方にまで寄った。
「わかった。ごめん……なるべく、離れるようにする」
素直なギャレット様は近寄りたくないといった私の希望を聞き入れ、王族用とは言えそこまで広くない馬車の中で出来る限り離れてくれた。
となると、私の方はとても自分勝手な気持ちだけど、なんだか物足りなくなって来てしまった。
ちらっと反対側を見ればギャレット様は、ようやくここまできたのに何か下手なことをしでかしてはいけないと思っているのか、息を殺して座っているようだ。
え……可愛い。まるで大型犬が待てを言いつけられて、じっと我慢しているようで。
「あの……ごめんなさい。そんなに、隅に行かなくても……良いです。私も落ち着いてきました」
微笑んだ私に、ギャレット様も頷いて笑ってくれた。
「ああ……良かった。ローレンに嫌われたのかと思った」
ほっと息をついて、私の方へと近寄ったギャレット様に、私は両手を突き出した。
「駄目です。待ってください」
「……え?」
「やっぱり……」
無理ですと言いかけた私の体を抱き上げて膝に載せると、ギャレット様は顔を間近に近づけて笑った。
「おい。もう良いだろう? 恥ずかしかったら、どうにかして慣れてくれ。これまでのあれは結婚を先延ばしにするための言い訳だったと知っているから、そろそろ俺には慣れてくれても良いと思うが」
「そ、そそそ……そうですよね! もうっ……私もギャレット様に慣れなきゃいけないことは、ちゃんとわかってはいるんですけど!!」
顔が赤い。これまでギャレット様には、冷たく対応しないとって思ってた……だって、私って期間限定の婚約者だったし……。
でも、これからはそうでなくなる。
数ヶ月一緒に居て、キスだって何度もしている。それなのに、やっぱりどうしても、恥ずかしいのだ。
彼のことが好きだと、やっと正面から言えるようになったから。
23
あなたにおすすめの小説
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
【完結】没落寸前の貧乏令嬢、お飾りの妻が欲しかったらしい旦那様と白い結婚をしましたら
Rohdea
恋愛
婚期を逃し、没落寸前の貧乏男爵令嬢のアリスは、
ある日、父親から結婚相手を紹介される。
そのお相手は、この国の王女殿下の護衛騎士だったギルバート。
彼は最近、とある事情で王女の護衛騎士を辞めて実家の爵位を継いでいた。
そんな彼が何故、借金の肩代わりをしてまで私と結婚を……?
と思ったら、
どうやら、彼は“お飾りの妻”を求めていたらしい。
(なるほど……そういう事だったのね)
彼の事情を理解した(つもり)のアリスは、その結婚を受け入れる事にした。
そうして始まった二人の“白い結婚”生活……これは思っていたよりうまくいっている?
と、思ったものの、
何故かギルバートの元、主人でもあり、
彼の想い人である(はずの)王女殿下が妙な動きをし始めて……
『呪いのせいで愛妻家になった公爵様は、もう冷徹を名乗れない(天然妻は気づかない)』
星乃和花
恋愛
【完結済:全20話+番外3話+@】
「冷徹公爵」と呼ばれるレオンハルトが、ある日突然“愛妻家”に豹変――原因は、妻リリアにだけ発動する呪いだった。
手を離せない、目を逸らせない、褒めたくなる、守りたくなる……止まれない溺愛が暴走するのに、当のリリアは「熱(体調不良)」と心配または「治安ですね」と天然で受け流すばかり。
借金を理由に始まった契約結婚(恋愛なし)だったはずなのにーー??
そんなふたりの恋は愉快な王都を舞台に、屋敷でも社交界でも面白……ゆるふわ熱烈に見守られる流れに。
甘々・溺愛・コメディ全振り!
“呪いのせい”から始まった愛が、最後は“意思”になる、にやにや必至の夫婦ラブファンタジー。
死にキャラに転生したけど、仲間たちに全力で守られて溺愛されています。
藤原遊
恋愛
「死ぬはずだった運命なんて、冒険者たちが全力で覆してくれる!」
街を守るために「死ぬ役目」を覚悟した私。
だけど、未来をやり直す彼らに溺愛されて、手放してくれません――!?
街を守り「死ぬ役目」に転生したスフィア。
彼女が覚悟を決めたその時――冒険者たちが全力で守り抜くと誓った!
未来を変えるため、スフィアを何度でも守る彼らの執着は止まらない!?
「君が笑っているだけでいい。それが、俺たちのすべてだ。」
運命に抗う冒険者たちが織り成す、異世界溺愛ファンタジー!
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる