限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。

待鳥園子

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42 慎重

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 そして、そろりと慎重にこちらへ近寄ろうとした気配を感じたので、私は両手をあげてそれを防いだ。

「待って! 近寄らないでください!」

「え! 何? 俺がそんなに嫌なのか?」

「近くに居ると、恥ずかしいんです……本当に、ごめんなさい」

「え……? え? あ。そういう……俺が近くに居ると、恥ずかしいから?」

「そうなんです。ごめんなさい……」

 ようやく、嫌がられたりとか嫌われたりとか、そういう嫌な意味ではないと思い至ったのか、私の言葉に何度か頷いたギャレット様もそろそろと私の居る反対側扉の方にまで寄った。

「わかった。ごめん……なるべく、離れるようにする」

 素直なギャレット様は近寄りたくないといった私の希望を聞き入れ、王族用とは言えそこまで広くない馬車の中で出来る限り離れてくれた。

 となると、私の方はとても自分勝手な気持ちだけど、なんだか物足りなくなって来てしまった。

 ちらっと反対側を見ればギャレット様は、ようやくここまできたのに何か下手なことをしでかしてはいけないと思っているのか、息を殺して座っているようだ。

 え……可愛い。まるで大型犬が待てを言いつけられて、じっと我慢しているようで。

「あの……ごめんなさい。そんなに、隅に行かなくても……良いです。私も落ち着いてきました」

 微笑んだ私に、ギャレット様も頷いて笑ってくれた。

「ああ……良かった。ローレンに嫌われたのかと思った」

 ほっと息をついて、私の方へと近寄ったギャレット様に、私は両手を突き出した。

「駄目です。待ってください」

「……え?」

「やっぱり……」

 無理ですと言いかけた私の体を抱き上げて膝に載せると、ギャレット様は顔を間近に近づけて笑った。

「おい。もう良いだろう? 恥ずかしかったら、どうにかして慣れてくれ。これまでのあれは結婚を先延ばしにするための言い訳だったと知っているから、そろそろ俺には慣れてくれても良いと思うが」

「そ、そそそ……そうですよね! もうっ……私もギャレット様に慣れなきゃいけないことは、ちゃんとわかってはいるんですけど!!」

 顔が赤い。これまでギャレット様には、冷たく対応しないとって思ってた……だって、私って期間限定の婚約者だったし……。

 でも、これからはそうでなくなる。

 数ヶ月一緒に居て、キスだって何度もしている。それなのに、やっぱりどうしても、恥ずかしいのだ。

 彼のことが好きだと、やっと正面から言えるようになったから。
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