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46 揺れ
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「ローレンが俺のことを好きだというのは、皆が知っていた。やたらと対応が冷たいのも、どうせ恥ずかしがっているだけなんだろうと予想していたようだ。だから、死にそうな青白い顔をして男の腕を持ち俺に別れを告げた時も……その場に居た全員が、これは何か事情があるんだろうと察していたぞ」
ギャレット様は何を当たり前のことを言っているんだと言いたげだけど、私には信じがたいことだった。
「まっ……ままま! 待ってください! 私が……ギャレット様のことを好きだと、皆が知っていたって……本当なんですか!?」
嘘でしょう。私たちのやりとりが周囲から微笑ましいと思われているのは、なんとなく察していたけれど、そんなにまで私の気持ちがダダ漏れだったなんて。
ギャレット様は不思議そうな表情で頷いて、微笑んだ。
「知っているよ。だから、俺だってなんで好きなのに心を開いてくれないんだろうと思い、自分に出来る限り君に好意を伝えたはずだ。そうしたら、いつか別れなければならないから、冷たく見えるように演技していたことを知ったんだ」
「え。嫌です! はっ……恥ずかしい……」
嘘でしょう。ギャレット様、それは当然のことのようにそう言ったけど、私は本当に必死だったのに!
「嫌ですって……まあ、もう良いだろう? 俺たちはもう名実ともに婚約者で、誰にもそれを阻まれることはない。結婚式を済ませれば、君にも公務を手伝ってもらうことになるだろうが、心配しなくて良い。祖父と父のおかげで、我が国は平和で当分安泰だ」
ギャレット様は安心させるように笑ったけど、やっぱり私はあの人の存在が心配だった。
王妃アニータ様は私がとある人物に脅されて婚約者を辞退するしかなかったという話を聞いていた時も、鷹揚に頷きそんな人物がいたのかと白々しく心配する振りもしていた。
きっと演技の上手い彼女は夫であるイエルク様にも、ギャレット様にも自分が何をしたかを知られていることを知っている。家族間だというのに、腹の内を探り合っているのだ。
悪事を知られていると知りつつ、何事もなかったかのように振る舞えることに、私は恐ろしさを感じていた。
「そう……そうですね。私も、早く王妃様の件も、片付いたらと……思います」
「ああ……ローレンは何も心配しなくて良い。行こうか」
◇◆◇
心地良いゆっくりとした揺れの中、私は目を覚ました。
ギャレット様の愛馬の上で、寝てしまっていたらしい。ギャレット様はどこに行ったのだろうと顔を上げれば、彼は手綱を持って馬の隣を歩いていた。
「遠出をして疲れただろう。まだ、寝ていて良いよ」
ミズヴェア王国の城の裏手にある山は、本来なら禁山とされていて、猟が許されるのは、年に一回だけだ。
ここに自由に出入り出来るのは王族のみとされていて、何度か誘われていたけれど、なるべくギャレット様の傍に居ないようにしていた時は、行きたいけれど断っていた。
けれど、こうして心を通わせてから二人で来ることが出来て、本当に嬉しい。
ギャレット様は何を当たり前のことを言っているんだと言いたげだけど、私には信じがたいことだった。
「まっ……ままま! 待ってください! 私が……ギャレット様のことを好きだと、皆が知っていたって……本当なんですか!?」
嘘でしょう。私たちのやりとりが周囲から微笑ましいと思われているのは、なんとなく察していたけれど、そんなにまで私の気持ちがダダ漏れだったなんて。
ギャレット様は不思議そうな表情で頷いて、微笑んだ。
「知っているよ。だから、俺だってなんで好きなのに心を開いてくれないんだろうと思い、自分に出来る限り君に好意を伝えたはずだ。そうしたら、いつか別れなければならないから、冷たく見えるように演技していたことを知ったんだ」
「え。嫌です! はっ……恥ずかしい……」
嘘でしょう。ギャレット様、それは当然のことのようにそう言ったけど、私は本当に必死だったのに!
「嫌ですって……まあ、もう良いだろう? 俺たちはもう名実ともに婚約者で、誰にもそれを阻まれることはない。結婚式を済ませれば、君にも公務を手伝ってもらうことになるだろうが、心配しなくて良い。祖父と父のおかげで、我が国は平和で当分安泰だ」
ギャレット様は安心させるように笑ったけど、やっぱり私はあの人の存在が心配だった。
王妃アニータ様は私がとある人物に脅されて婚約者を辞退するしかなかったという話を聞いていた時も、鷹揚に頷きそんな人物がいたのかと白々しく心配する振りもしていた。
きっと演技の上手い彼女は夫であるイエルク様にも、ギャレット様にも自分が何をしたかを知られていることを知っている。家族間だというのに、腹の内を探り合っているのだ。
悪事を知られていると知りつつ、何事もなかったかのように振る舞えることに、私は恐ろしさを感じていた。
「そう……そうですね。私も、早く王妃様の件も、片付いたらと……思います」
「ああ……ローレンは何も心配しなくて良い。行こうか」
◇◆◇
心地良いゆっくりとした揺れの中、私は目を覚ました。
ギャレット様の愛馬の上で、寝てしまっていたらしい。ギャレット様はどこに行ったのだろうと顔を上げれば、彼は手綱を持って馬の隣を歩いていた。
「遠出をして疲れただろう。まだ、寝ていて良いよ」
ミズヴェア王国の城の裏手にある山は、本来なら禁山とされていて、猟が許されるのは、年に一回だけだ。
ここに自由に出入り出来るのは王族のみとされていて、何度か誘われていたけれど、なるべくギャレット様の傍に居ないようにしていた時は、行きたいけれど断っていた。
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