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53 震え
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裏口はわかりやすくあって、とても都合の良いことにそこには人目がなかった。私の都合ではないことは、確かだけど。
「メートランド侯爵令嬢、来ていただけると思っていました」
裏口の扉を開ければ先ほどの女性が恭しく礼をして、私のことを待っていた。
とても白々しい笑顔で微笑み、彼女は私を近くの馬車へと導いた。
◇◆◇
私が馬車に乗り連れて来られた場所は、小さな庶民的な民家だった。
正直に言うと、拍子抜けしてしまった。
けれど、犯罪まがいのことをするのだから、足の付かない空き家でも見つけて来たのかも知れない。
扉を開くと見覚えのある姿を見て、うんざりしてしまった。いいえ。これまでの経緯から、彼女がグルであることもわかってはいたんだけど。
「久しぶりね。おばさん!」
「ペルセフォネ嬢、いらしたんですか」
私は久しぶりに会ったペルセフォネに、軽く挨拶をした。
彼女は脅されて来たはずの私が怯えた様子で泣き出すとでも思っていたのか、鼻白んだ表情になり、イライラとした様子で言った。
「はあ? あんた、自分の立場わかってるの? 自分も弟も、殺されてしまうかもしれないのに……」
落ち着いた私の行動や表情が彼女には不可解だったのか、ペルセフォネ様は面白くなさそうだ。私は肩をすくめて、家の中を見回した。
クインはどこにも居ないようだ。かと言って、犯人らしき人も……二階かしら。
「ここで、私が泣いたら二人とも解放してくれます? しないですよね? だから、無駄なことはしたくないです。クインは……何処ですか? 何の目的だか知りませんが、あの子だけは解放してください」
「なんでそんなに堂々としてるのよ。面白くない。おばさんは売られるんだって。おばさんはギャレットのお気に入りで、あいつが一番に傷つく方法がそれなんだって」
ペルセフォネはギャレット様に婚約者として認められなかったせいか、やたらと彼を嫌うようになってしまっている。好きだからこそ、拒否されたら必要以上に嫌ってしまうのかもしれない。
愛と憎しみは、表裏一体だと言うから。
「……そうですか。それでは、クインは解放してください。元々はギャレット様のことをお好きだったのに、ずいぶんな言いようですね……最初から、彼を貶めるつもりだったの?」
「好きだった訳ないわ。けど、私がおばさんの邪魔をするのは、最初から決まっていたから……ギャレットはおばさんが外国に売られたと知られたら、泣くでしょうね。慰めてあげようかしら」
くすくすと笑ったペルセフォネを、私は心底軽蔑した目で見たつもり。
けれど、私は本当はドレスで見えない足は震えているし、手をぎゅっと握りしめて震えを隠すことで精一杯だ。こんな状況で平静に居られる訳はない。
私は売られてしまうかもしれないけど、ペルセフォネはクインの身柄については言及していない。だから、あの子は助かるかもしれない。
自分だけならこれから待ち受けるものの恐怖に、気を失っていたかもしれないけど、クインがもし助かる方法があるのだとしたら、私がしっかりしなければならない。
借金があったって、誰になんと蔑まれようが、弟のあの子が居たから頑張って来られた。
犯人は誰で、何を目的をしているかを知り……交渉する余地があるのだとしたら、クインだけは助けなければ……。
「メートランド侯爵令嬢、来ていただけると思っていました」
裏口の扉を開ければ先ほどの女性が恭しく礼をして、私のことを待っていた。
とても白々しい笑顔で微笑み、彼女は私を近くの馬車へと導いた。
◇◆◇
私が馬車に乗り連れて来られた場所は、小さな庶民的な民家だった。
正直に言うと、拍子抜けしてしまった。
けれど、犯罪まがいのことをするのだから、足の付かない空き家でも見つけて来たのかも知れない。
扉を開くと見覚えのある姿を見て、うんざりしてしまった。いいえ。これまでの経緯から、彼女がグルであることもわかってはいたんだけど。
「久しぶりね。おばさん!」
「ペルセフォネ嬢、いらしたんですか」
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彼女は脅されて来たはずの私が怯えた様子で泣き出すとでも思っていたのか、鼻白んだ表情になり、イライラとした様子で言った。
「はあ? あんた、自分の立場わかってるの? 自分も弟も、殺されてしまうかもしれないのに……」
落ち着いた私の行動や表情が彼女には不可解だったのか、ペルセフォネ様は面白くなさそうだ。私は肩をすくめて、家の中を見回した。
クインはどこにも居ないようだ。かと言って、犯人らしき人も……二階かしら。
「ここで、私が泣いたら二人とも解放してくれます? しないですよね? だから、無駄なことはしたくないです。クインは……何処ですか? 何の目的だか知りませんが、あの子だけは解放してください」
「なんでそんなに堂々としてるのよ。面白くない。おばさんは売られるんだって。おばさんはギャレットのお気に入りで、あいつが一番に傷つく方法がそれなんだって」
ペルセフォネはギャレット様に婚約者として認められなかったせいか、やたらと彼を嫌うようになってしまっている。好きだからこそ、拒否されたら必要以上に嫌ってしまうのかもしれない。
愛と憎しみは、表裏一体だと言うから。
「……そうですか。それでは、クインは解放してください。元々はギャレット様のことをお好きだったのに、ずいぶんな言いようですね……最初から、彼を貶めるつもりだったの?」
「好きだった訳ないわ。けど、私がおばさんの邪魔をするのは、最初から決まっていたから……ギャレットはおばさんが外国に売られたと知られたら、泣くでしょうね。慰めてあげようかしら」
くすくすと笑ったペルセフォネを、私は心底軽蔑した目で見たつもり。
けれど、私は本当はドレスで見えない足は震えているし、手をぎゅっと握りしめて震えを隠すことで精一杯だ。こんな状況で平静に居られる訳はない。
私は売られてしまうかもしれないけど、ペルセフォネはクインの身柄については言及していない。だから、あの子は助かるかもしれない。
自分だけならこれから待ち受けるものの恐怖に、気を失っていたかもしれないけど、クインがもし助かる方法があるのだとしたら、私がしっかりしなければならない。
借金があったって、誰になんと蔑まれようが、弟のあの子が居たから頑張って来られた。
犯人は誰で、何を目的をしているかを知り……交渉する余地があるのだとしたら、クインだけは助けなければ……。
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