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03 憧れの騎士団長様
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それとなくイザベラは視線を走らせた先には、任務中なのか誰とも話すこともなく、周囲にそれとなく警戒している様子の……とっても有名な騎士団長ハビエル・クラレット様。
ハビエル様はさらさらとした黒い髪と青い目を持ち、そして、端正に整った顔立ちで女性に人気がある方だ。
特筆すべきは、騎士として鍛え上げられた長身の身体。恐らく、彼には普通にしているつもりでも、接している側は、ただ居るだけで威圧されているように感じてしまうだろう。
「ああ……あの方は……すごく、その有名な団長様よね」
社交界デビューしてから、まだ三回目の夜会だけど、ハビエル・クラレットの名前は、何度も何度も噂話に聞いたものだ。
王家の血筋、先の王弟の息子で、公爵家の三男。現王の覚えもめでたい、近衛騎士団団長。
誰でも伴侶にと望めるのなら、きっと、高い身分を持つ王家の姫や公爵令嬢を妻に迎えるから、私たちなんて話しかけても無駄なのよ……と。
それも確かに、そうだろう。
高い身分に整った容姿、その上に公爵家の令息だからという訳でもなく、団長にまで登り詰めてしまう確かな実力まで兼ね備えている。
何でも持つ男性ハビエル・クラレット様なら、彼の望みうる最高の妻を迎えるはずだわ。それは、子どもでも理解することの出来る、簡単な道筋。
「……ええ。彼ならば正直なところ、私たちみたいな伯爵令嬢などより王家の姫や公爵令嬢でも妻にと望めるお方だし、全く望みがないならば、逆にシャーロットも気軽に話せるのではないかしら?
「……逆に?」
これは良いことを思いついた思ったのか、イザベラは可愛らしい顔でにっこりと微笑んだ。
「そうよ! シャーロットが異性と話すことに緊張してしまっているというのは、もしかしたら……自分と恋人になれるかもと、そう思っているからでしょう?」
「え……? ええ。そうね」
「使用人では、そういう対象になり得ないのだから、会話の練習をすることには何の意味もないわ。けれど、恋愛に発展するかもしれないという望みもなく、ただ仕事でその場にいらっしゃる男性と話す練習をすることは、別に許されると思うもの……喋る石像と思えば、それで良いのよ」
……喋る石像……!!
そうね。美々しいハビエル様は、彫像として形作られていてもおかしくないわ。
筋の通ったイザベラの提案に、私は何度もこくこくと頷いた。
そうよ……! そうだわ。
イザベラの言うとおり身分の違う使用人の男性ならば、貴族の私とは話すことも向こうから遠慮してしまうはずだけど……ハビエル様は貴族は貴族だけど、平凡な伯爵令嬢の私には望みはない。
望みはゼロだもの。いっそ気楽だわ。
「そうよね。ハビエル様が私のような、デビュー仕立ての伯爵令嬢を相手するはずもないんだから、気軽に話しかければ良いのだわ」
「ええ! そうよ。シャーロットだって、会話の練習が出来れば良いのよ。王家の王子でもなく、身分上は貴族ではあるけど、私たちなんて相手にしない、大人気の騎士団長様。なんだか、ちょうど良いわ」
彼に対し少々失礼なことを言いつつ、イザベラは悪気なく肩を竦めた。
「ええ……イザベラ。本当にその通りだわ」
女性に好かれそうなハビエル様ならば、絶対に女性慣れしているはずだし、迷惑ならば、適当にあしらってくれるだろうという勝手な安心感もある。
だから、私はそんな彼を会話をするための練習台にするため、なけなしの勇気を出して話しかけてみようと決心したのだった。
ハビエル様はさらさらとした黒い髪と青い目を持ち、そして、端正に整った顔立ちで女性に人気がある方だ。
特筆すべきは、騎士として鍛え上げられた長身の身体。恐らく、彼には普通にしているつもりでも、接している側は、ただ居るだけで威圧されているように感じてしまうだろう。
「ああ……あの方は……すごく、その有名な団長様よね」
社交界デビューしてから、まだ三回目の夜会だけど、ハビエル・クラレットの名前は、何度も何度も噂話に聞いたものだ。
王家の血筋、先の王弟の息子で、公爵家の三男。現王の覚えもめでたい、近衛騎士団団長。
誰でも伴侶にと望めるのなら、きっと、高い身分を持つ王家の姫や公爵令嬢を妻に迎えるから、私たちなんて話しかけても無駄なのよ……と。
それも確かに、そうだろう。
高い身分に整った容姿、その上に公爵家の令息だからという訳でもなく、団長にまで登り詰めてしまう確かな実力まで兼ね備えている。
何でも持つ男性ハビエル・クラレット様なら、彼の望みうる最高の妻を迎えるはずだわ。それは、子どもでも理解することの出来る、簡単な道筋。
「……ええ。彼ならば正直なところ、私たちみたいな伯爵令嬢などより王家の姫や公爵令嬢でも妻にと望めるお方だし、全く望みがないならば、逆にシャーロットも気軽に話せるのではないかしら?
「……逆に?」
これは良いことを思いついた思ったのか、イザベラは可愛らしい顔でにっこりと微笑んだ。
「そうよ! シャーロットが異性と話すことに緊張してしまっているというのは、もしかしたら……自分と恋人になれるかもと、そう思っているからでしょう?」
「え……? ええ。そうね」
「使用人では、そういう対象になり得ないのだから、会話の練習をすることには何の意味もないわ。けれど、恋愛に発展するかもしれないという望みもなく、ただ仕事でその場にいらっしゃる男性と話す練習をすることは、別に許されると思うもの……喋る石像と思えば、それで良いのよ」
……喋る石像……!!
そうね。美々しいハビエル様は、彫像として形作られていてもおかしくないわ。
筋の通ったイザベラの提案に、私は何度もこくこくと頷いた。
そうよ……! そうだわ。
イザベラの言うとおり身分の違う使用人の男性ならば、貴族の私とは話すことも向こうから遠慮してしまうはずだけど……ハビエル様は貴族は貴族だけど、平凡な伯爵令嬢の私には望みはない。
望みはゼロだもの。いっそ気楽だわ。
「そうよね。ハビエル様が私のような、デビュー仕立ての伯爵令嬢を相手するはずもないんだから、気軽に話しかければ良いのだわ」
「ええ! そうよ。シャーロットだって、会話の練習が出来れば良いのよ。王家の王子でもなく、身分上は貴族ではあるけど、私たちなんて相手にしない、大人気の騎士団長様。なんだか、ちょうど良いわ」
彼に対し少々失礼なことを言いつつ、イザベラは悪気なく肩を竦めた。
「ええ……イザベラ。本当にその通りだわ」
女性に好かれそうなハビエル様ならば、絶対に女性慣れしているはずだし、迷惑ならば、適当にあしらってくれるだろうという勝手な安心感もある。
だから、私はそんな彼を会話をするための練習台にするため、なけなしの勇気を出して話しかけてみようと決心したのだった。
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