花は風と共に散る【美醜逆転】

本編

現実

「ガードルート」
「フィース」
私は振り向いた。さっきまで同じ顔の人と居たからなんだか変な気がしてしまう。青空と同じ薄い青の目が私を見ていた。

「どうだった？」
相変わらず意地悪なことを言ってにやっとした顔をして私を見てくる。
「聞きたい？」
私も軽口を返した。フィースはうっと詰まった顔をすると降参という風に手を上げてふぅと息をついた。
「いや？イアンを殴って良いなら別だけど」
フィースは殴る程度で済むんだな。私はなんとなく最中に言っていたイアンの言葉を思い返していた。やっぱり、ちょっと、驚くよね？

「殴ったらダメだから言わない」
「…あいつ、笑ったりしたか？」
私は驚いた。なんでそんなこと聞いてくるかよくわからなかったからだ。
「えっと…うん」
「そっか」
フィースは噛み締めるように言うと、少し笑顔になって言った。
「あいつ、多分満面の笑みは10年は浮かべてないから、今頃顔の筋肉驚いているかもな」
「10年？」
私は信じられない、と固まってしまった。

「ガードルートのおかげだよ。俺もあいつも、今は君が居るから笑えるんだ。…ずっとそうしたかったのに」
「10年前に何があったの…？」
フィースは真面目な顔をすると言った。
「母さんが死んだ。あの人だけが醜く生まれた俺達を守ってくれていたからな。すごくショックだった。…あいつ、イアンは一時期本当に喋れなくなったしそれに笑えなくなった」
「そんな…」

「今はガードルートが居るから、もう良いんだよ。だから、俺達にとって君は絶対に失えないんだ。イアンは…二度は耐えられないと思う」
「フィース、私はどこにも行かないよ」
うん、とフィースは頷いた。
「わかっている。でもガードルートにだけは知っていて欲しかった。これからずっと一緒に、居るんだから」
「フィース」
胸が痛かった。幼い頃からイアンはずっと辛かったんだと思う。

それに、態度には絶対見せないだろうけど、フィースだって。