花は風と共に散る【美醜逆転】

本編

花畑

私はフィースと以前に来た森の中に広がるお花畑に居た。あの頃とは違う花が色とりどり咲き誇って目に眩しいくらいだ。

「はい、ガードルート」
「…これは？」
渡されたちいさな箱とフィースのしたり顔を見比べる。可愛い赤いリボンがついている長方形の紺色の箱だ。
「開けてみて」
言われてリボンをそっと取り、震える手で箱を開ける。
「…フィース…！」
私の恋人6人の目の色、青と茶色の宝石がちりばめられた腕輪だ。色を段階的に濃くしたり薄くしたり装飾も凝っていてすごく美しい。これは造るのに時間もかかるだろうし、それにとても高かったんじゃないだろうか？
「約束してただろう？ようやく完成したから、僕が勝負に勝って渡す役を勝ち取った」
「勝負って何したの？」
「内緒」
「フィース」
「冗談だよ。ポーカーだ。真剣勝負だし、ちゃんとイカサマなしだよ」
「…ああいうの得意そうだよね、フィース」
それには答えずに笑いながら腕輪を手に取って私の手首につけてくれた。

「よく似合う。綺麗だ。ガードルート」
「ありがとう。すごく嬉しい」
「お礼はちゃんと皆にも言うんだろう？…僕達を愛してくれてありがとう」
「フィース？」
「僕達は誰にも愛されることもないと思っていた。君に救われた」
「そんなこと…」
「あるんだよ、少なくとも僕は」
強い風が吹いて、彼のサラサラの黒髪を乱す。青空のような目には私しか映ってない。

「私はすごい幸せだよ」
ぽつりと正直な気持ちを言った。
「こんなに、素敵な人達に愛されて、幸せ、でもその分大きい不安もある。…だけど、こういう形で愛している証をくれてありがとう。不安になるたびこれを見ることにする」
「ガードルート、君は愛されるに値する人だ。強く優しく、誠実で、それにすごく可愛い」
「…可愛いのが良いの？」
ふふっと笑うとフィースは抱きしめて来た。
「もちろん、君は僕にとってとびきり可愛いし、それに目に見えて僕のことが好きだ。1人だけじゃないのはわかっているけど、それでも」

つよく吹く風に花びらが舞い上がって、そして、目には青空。
瀟洒な腕輪はしゃらんと澄んだ音をたてて私達の唇は重なった。