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終わりからの始まり

自分が消えた後の世界

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呆然としていると、頭の中で誰かも分からない何かが俺に話しかけて来た。

「おい、お前」

???

目の前に誰かがいる訳でもない。

意識の中で誰かが俺に訴えかけるような感覚。

「名前は…橘 祐樹??と言ったか。

 お前は特に目立った悪行も特にない。
真面目に生きて、最後は見知らぬ子供の為に命を落とした。
お前には現世ではもう死んでしまったが、その行いに免じて、新たにこの人間界に転生する選択肢が与えられる」

は????
なんだよ、アニメやラノベみたいな展開かよ。転生???笑わせんなよ。

っていうかお前誰なんだよ。
顔も見えねーし、勝手に人の意識の中に入ってくんな。怖ぇよ。

「死者を送る使いのものだ、こちら側は死者に自在に干渉して脳内の意識から語りかける能力が備わっていいる」

聞こえてんのかよ!声出してねーぞ。

って事は神様とかそういうんじゃないんだな…

「この世に神などおらぬ、人間が言う天国や地獄なども存在せぬ」

「人間が作り上げた模造の信仰だ」

そうなのか…そんなものはないのか。

恥ずかしながら少しはあるかも知れないなどと生きていた頃は考えていた。

考えている事が読み取れるようなので意識の中で会話を続ける。

転生してどうすんだよ、別に俺この現実世界でやり残した事なんてねーぞ。

嫌いな上司に頭下げて毎日残業して、安い給料で働いて生きてて何も楽しくなかった。

もうやり直すのも面倒なだけだ、もう人生終わりでいい。

転生した所で何になる、また同じような人生歩むかもしんねーし、もしかしたらもっと不幸かもしれん。


やめだ、やめ。

「俺、転生とかする気ねーから」

「消えるならそれで良い、このまま幽霊でも構わねーけど」


死者の使いとやらが動揺した様子で語りかけて来た。

「確かに転生したからと言って幸せが約束されるわけではないが…お前、このまま幽霊として現世を彷徨ったまま成仏出来ぬぞ?」

幽霊として彷徨うかぁ…転生とかしたくもねぇし、それもアリかもな。

いいんじゃね?

「じゃあそれで良いっす」

そう吐き捨てて面倒くさそうに俺は話を終わらせた。

死者の使いは腑に落ちない様子だったが、

「まだ猶予はある、少し冷静になって考えてみるが良い。」

死者の使いとやらの意識は頭の中から完全に消えた。
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