お前なんかに喰われてたまるかコノヤロー!

只野ぱんだ

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赤い糸

気配 その2

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最初は偶然出会った幼い史絵を憐れんだ...泣きながら砂利を社にぶつける姿に...しかし本能的に血を見た時点で咄嗟に舐め...気がついてしまったのだ、その血を『甘く』感じた時点で、彼女こそ伴侶になるべき娘なんだと...

それ以降はだた史絵が大きくなるのを待ち、自身も『成人』と呼ばれる年齢なった為に史絵に近づいた...ただの人として出会い、信頼を勝ち得、そして真実を伝えてその上で『伴侶』となって貰う為に。

ただ史絵本人は近衛を恐れた...きっと『人を喰らう』怪異である自身を直感的に判断し恐れているのだ...

近衛は外に出て、人気のない道へと進みスマホを取り出す。

春信へ電話をかける...流石に1000年以上生きている怪異を相手には無理だ。

そんな時だ、周辺にふわりと何かが被さる感覚...蜘蛛の巣がまとわりつく感覚だ!

「しまった!」

足元にまとわりつく蜘蛛の糸の束...上を見ると白い蜘蛛の化け物...怪異『夜都賀波岐』がそこにいる。

『小鬼の分際で我が伴侶を掠め取るなど!』

夜都賀波岐が怒りの形相で近衛を睨む。

「時代に合わせようとせずに、ただ死ぬ事を恐れてこの土地にしがみついてる外法に手を染めた化け物が!」

近衛の瞳は赤く燃え、八重歯が鋭くなり、両手の爪がかぎ爪へと変化する。

近衛自身はきっと怪異『夜都賀波岐』を倒す事など出来ない...近衛が若すぎるのもだが、何より彼自身がまだ人の肉を『喰らう』事をした事が無い為だ。

ただ夜都賀波岐は祟り神としての依代である鏡を何者かにより壊されており、徐々に祟り神としての力が衰えている。

だから本来の姿である蜘蛛の姿を露わにし早々に史絵を捕まえて、夜都賀波岐の子を孕ませ産まれた子と同化しようと狙っているのだ。

そして大きな怒りをもって災厄を引き起こしこの土地の人間に甚大な災害を起こし、夜都賀波岐を人々が思い起こし再度恐れ慄き崇め讃えられ『祟り神』として再度強い力を取り戻す為でもある。

人の信仰心もまた『祟り神』としての力の源であるからだ。

近衛は蜘蛛の糸を爪で引き裂き夜都賀波岐の拘束から逃れ、何とか逃げる為の道を模索するも一帯が蜘蛛の巣まみれである。

しかし...諦めては、と思うのだ、自身の為だけでは無い...史絵をこの化け物から奪うと決めたのは自分自身、この化け物になどくれてなるものか!
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