お前なんかに喰われてたまるかコノヤロー!

只野ぱんだ

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赤い糸

気配 その1

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時は戻って前日の夕方...

暫く部屋に篭っていた近衛はふと起き上がる...何かの気配に気がついてだ...

「...蜘蛛か...」

その視線の相手は知っていた...何故ならこの地に棲まう『祟り神』でもある大蜘蛛の怪異『夜都賀波岐』の伴侶を掠め取るつもりなのだから...

怪異...俗に言う妖怪の括りになる化け物を指す。

怪異の中には同じ土地で長い年月『神』とし崇められるモノもいれば、恐怖の対象とし言い伝えられる存在もいる...そして時代に合わせて人と混じって生きているモノのである。

そして怪異は基本雄しか産まれない...だから人の女を伴侶する必要がある。

もし女の怪異が存在するなら、人がその怨念などで変幻した存在である。雄は腹から怪異として産まれ、女は生きながら怪異になるのである。

夜都賀波岐は300年に一度その身体を維持する為に人から伴侶を選び、贄とし自身の子を産ませた上、母体を食い、子と同化の外法を用いて新たな身体を得る必要があるため。

怪異が伴侶と選ぶのは、自らの子を孕むに相応しい血、子供を孕むに耐えうる女を本能的に選ぶのだ。

本来ならばその土地の怪異と別の怪異は縄張りがあるため、その土地の怪異の伴侶と選ぶ者を奪いあう事は無い...

しかし近衛や春信のような人に混じって生きる存在はそれが出来ない...だから『成人』と判断された際に自身の伴侶を探し歩くのだ、場合によってはその土地の怪異の伴侶を攫う事も厭わない。

怪異にとって伴侶を得るのは本能、抗う事の出来ない感情であり、我慢すれば狂いそれこそ理性のない化け物となってしまう。

近衛の一族の中でもそうやって伴侶を得られず狂って化け物となり、一族総出で殺す事もあった。

近衛は外に出る...きっと夜都賀波岐が自身を狙いに来たからだ。

近衛は史絵を本能的に『喰おう』とした...その時点で向こうも近衛の事を怪異と気づかれたかもしれない。

そう夜都賀波岐はこの短い期間に3人を殺し、それ以前にも史絵の為と言い多くの人間を殺している...それも近衛は直感的に気がついていた。

確かに史絵に危害を与える人間を殺したい気持ちも湧き上がるも、近衛は人と混じり生きる道を選んだ怪異の一族...決してそれだけはしなかった。

高島には大人しく教師に注意される様に暗示をかけただけだし、伊藤に関しては通常の人の力以上の力で扉を壊し、史絵を襲っていた伊藤を跳ね除けただけである。

夜都賀波岐は外法を用いて自らの子すら犠牲とし1000年近く生きている怪異...その伴侶と目をつけられた史絵を近衛は夜都賀波岐から奪うと決めたのだ

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