選ばれた天職は✳︎✳︎✳︎です!! 〜剣と魔術の世界で生き残れ!〜

Nishy

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第1章 存在の意義

34話 横槍

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「うおおおおぉぉぉぉっ!!!」


 広場に野獣の様な咆哮が響き渡る。無意識に声帯魔術を使い、紅狼の動きを鈍くする。


 紅狼は見た目が変化し、禍々しくなったアイルの姿に動揺していた。


 なぜ奴が声帯魔術を使える?


 そんなことを考えながら回避運動を取ろうとする。


 しかし次の瞬間、黒の魔力が竜巻の如く襲いかかってきた。





 様々なイメージで奴に魔力を叩き込んだ。スピアの様に鋭く尖った魔力で脚を貫いたかと思ったら、ハンマーの様に面のある打撃技も同じように繰り出す。高速回転する風の塊を投げつけ、奴の足を実験にどれほど威力があるのかなども行った。


 気づけば紅狼は脚だけ凄まじいダメージを負っていた。胴や頭などは無傷に近いのだが脚だけは出血が夥しい。


 紅狼の身体からは紅の瘴気が溢れ出ていたはずだが今ではそれも見当たらない。


「これで最後だ」


 目の前でヒトだったものがタクトを突きつけつつ言い放つ。


 理性の戻りつつある頭で死期を悟った。奴のタクトが天を向く。次に来るであろう死を目を瞑って待つ。


『「怠惰の感情スロース!!」』


 怪我でボロボロの娘が、奴に向けての魔術を繰り出す。

 
 呆気に取られた私は見ているだけしかできなかった。





「何のつもりだ、ペンネ」


 しわがれた彼の声が聞こえる。以前と違い、今は彼の動きを止めるので精一杯だ。


『「アイルさん、やり過ぎです!もう彼は理性的に戻っています!」』


「何故・・」


『「今のあなたは私の知るアイルさんではありません。目を覚まして!」』


「ふふっ、今の僕がアイルじゃないって?君が僕の醜い心を知らなかっただけじゃないのか?


 今まで、本当に辛かった。周りの人は其々の天職ジョブを伸ばしていく一方、僕はずっと日陰者として生きていくしかなかったって。


 ようやく能力を使える様になったのに、成ったのに・・・」


 そこまで言った時、彼から出る黒の魔力が深い蒼色に変化していく。黒の旋風が蒼の水飛沫へと変わっていく。


「何でそんなに僕を否定する?僕は皆んなの役に立ちたかっただけなのに」


 アイルから出る蒼の魔力がまさに波紋の様に広がる。ソレが私の体に入ってくる。青の波紋は体の末端から胸まで伝わると胸がキュッとなる様に感じた。


『こ、これは一体?』


『これは~・・・。説明は後です。まずはさんを止めましょう』


『どうやって止めるの?私は怠惰の感情を唱えるので精一杯だし』


『それは理性の戻った彼でしょう』


 其方に目を向けると、紅狼から元の姿に戻った巨狼がいた。足は重症だが何とか立っている。


『さっきまで殺し合いをしていたのに手伝うと思う?』


『でないとこの世界が滅びてしまうわ~』


 焦った声でベルフェゴールが念話を送る。書物を捲る手が止まらないみたいなのでこれ以上は邪魔をしてはいけないと思い、巨狼に声を掛ける。


「ねぇ、狼さん。協力してくれないかしら?」


「何ぞ、私が役に立つとは思えないが」


「今助けてくれないとこの世界が滅びるって」


「ふむ・・・。まぁ、がそういうのであれば微力ながら手伝おう。して、何をする」


「ちょっと待ってね、今解決策を探してるから」


 そうは言いつつもそろそろ詠唱が弱まってきた様に感じる。ベルフェゴールによって魔力の量も質も桁違いに強くなったが相手は地獄の王サタンと同調しているアイルだ。消費する魔力も莫大だ。


 しかし、これは私だけで無く彼にも言えることのはず。あれだけ魔力を消費しているのならそれ程続かないだろう。ベルフェゴールから念話が入る。


『ペンネ、あの子の頭にある光の輪が見える?』


『えぇ、あの紅の輪ね。まるで天使の様な・・・』


『あれは未だ未完成の代物だよ。あれを何とか破壊するんだ。急ぐんだ、私の魔力もそれ程余裕がないからね』


『破壊は物理でもできるの?』


『問題ない。あれは魔力の生成によって形が取れているものだからね』


『分かったわ、やってみる』


 念話を打ち切り、巨狼に声を掛ける。


「今から彼の頭にある紅の輪を破壊するわ。そうすれば彼の暴走は終わるみたい」

「あの輪か、分かった。必ず噛み砕いてこよう」


 そういうと、巨狼は蒼の波紋を出し続けるアイルに正対する。







「遠い、な。」


 波紋は彼の体の中心から出続けており、中心に近ければ近いほど蒼の濃淡が濃い。どれほどの力かはわからない。見たこともない魔術であった。


 彼からは15mほど離れた位置にいる。今は胸に振動が来る程度であるが中心ではどれだけの振動が来るかは未知数だ。


 私のせいで彼がこうなってしまったのは明白である。ならば、せめて元の優しい気遣いのあるヒトへ戻すために、私は生を全うしよう。


 そう意気込んだ私は血の滴る足を彼に向けて歩み始めた。

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