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第1章 存在の意義
43話 その手をとれたなら
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☆
ペンネの時とは段違いに深い意識の海を潜っていく。寒さと空腹感のおかげで、上手く身体が動かない。
それでも、泳ぎは止めない。
きっとこの意識の海のそこに魂がいると信じて。
・
・
・
あれから半刻(30分)程は潜っただろうか。道中、光の粒子が舞っていたが暫くすると消えてしまった。
嫌な感じを抱きつつも泳いでいくと、真っ黒な底に辿り着く。一息つきつつ、辺りを見渡すと、小さな光がゆらゆらと浮いている。
これが彼女の魂かな?と思いつつ、触れようとする。
すると、光から糸のようなものが出てくる。太くないその糸により、あっという間に触れようとした右腕が極められていく。
驚きつつも光に声を掛けてみる。
「君を助けに来たよ、何もしないからこれを解いてほしいな」
「其れは無理な話じゃな、小僧」
光の後ろから7歳程の少女が姿を表した。不思議なヒラヒラした服を腰にある大きな帯で締めている。黒髪は腰まで伸び、その目には怒りが浮かび上がっている。
「出来ればこの糸を解いて欲しいんだけど・・・」
「嫌じゃ、分かったらとっとと帰れ。妾はユラとこのまま此処でずっと遊ぶのじゃ」
「この子はユラって言うんだね?ねぇ、ユラさん。もう一度生きてみたくない?」
光が迷いを表すように揺れる。それを見て慌てたように少女が口を開く。
「止せ、ユラ。お主も忘れたのか、あの者共による愚行の数々を!
お主が腹を空かしても、怪我をしても放っといたあの者達の冷き目を。
妾はもうお主のそんな姿を見たくないぞ!」
少女は大きな声で諭している。でも、僕が聞きたいのは・・・
「ねえ、ユラさん。多分だけどその人たちはもう、この世にはいないよ。それに、現世に帰っても僕と仲間が君の力になる。絶対に。
だから、あなたの声でどうしたいか聞きたいな?」
光はより強く揺らいだかと思えば弾け、朧げだが遺体の少女の輪郭を取っていく。
「止せ、ユラぁ・・・!・・・貴様ぁぁ!!」
少女は鬼のような形相でこちらを睨み、手の指から出ていた糸を引き締めていく。
ギリ、ギリ・・・。メリメリッッ。
僕の右腕は既に鬱血が始まり、小麦色だった腕は今や真っ黒に近い。
「何故、ユラなのじゃ・・・」
糸を操りつつポツリと呟く。その瞳からは涙が流れる。
「答えよ!!何故、ユラなのじゃ!
ユラは、家族からも冷たく接され、人の温かさも知らぬまま育った不運な子よ。
何故、またあんなに辛く、険しい世界に戻そうとする!」
やはりと、確信を抱く。この少女はユラを守り、気遣う優しい子なのだ。彼女にも声を掛ける。
「生きたいとユラさんが思ったから、かな。ユラさんは亡くなっても魂が冥界には行かずにずっと自身の遺体の近くを彷徨いていた。まだ、生きたいと思っていると考えるのは不自然かな?」
「な、何故じゃ、ユラよ」
少女は驚きながら光の輪郭に向かって問う。ユラを見守り、気遣ってきた少女のことだ。まさかこの世には未練を残しているなんて思わないだろう。
「・・・から」
小さく澄んだ声が意識の海に木霊する。
「え?」
「お守り様が泣いちゃうから」
「ば、馬鹿者。お主がいなくとも・・」
「お守り様、私のためにいつも泣いてる。私がいなくなったらもっと泣くと思ったから・・・」
そう言うとみるみる内に光の粒子が辺りからユラの輪郭に向かって集まってくる。ユラは光の涙を流しながらお守り様に向かい優しく話す。
「だから、そこの貴方。私を元の世界に連れて行って。まだお守り様から離れたくないの。お願いします」
「分かりました。・・・お守り様、彼女は貴方のためにもう一度、生きてみたいと強く思っています。何卒・・」
お守り様は、その服の袖で目元をグシグシと擦ると、ユラを見つめ無理矢理笑って言い放つ。
「愚か者め、お主が妾から離れられないのじゃろ。良い、良い。思う存分、今世をこの者と楽しんでくるが良い。
お主、名をなんと言う。」
お守り様が僕の目を見つめ静かに問う。
「アイル、アイル・トワイライトと申します」
「そうか・・・アイルよ。
ユラを頼むぞ。妾は此処から見守ることしかできぬ。何かあれば絶対に許さんからな。死ぬ気で守り抜け」
上から光の柱が降り注ぐ。それを見ながら僕は微笑み、
「何を言っているのです。お守り様も此処から出て一緒に行くのですよ」
「えっ?」
そう言うや否や、僕は自由の効く左手でお守り様の手を掴み、右手でユラの背中を押して光の中に入った。
視界が白く反転する中、お守り様の慌てふためく声が響く。
前が駄目なら以前よりももっと近くで見守ればいい。彼女たちの背中を見つつそう思い、身を閉じた。
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ペンネの時とは段違いに深い意識の海を潜っていく。寒さと空腹感のおかげで、上手く身体が動かない。
それでも、泳ぎは止めない。
きっとこの意識の海のそこに魂がいると信じて。
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あれから半刻(30分)程は潜っただろうか。道中、光の粒子が舞っていたが暫くすると消えてしまった。
嫌な感じを抱きつつも泳いでいくと、真っ黒な底に辿り着く。一息つきつつ、辺りを見渡すと、小さな光がゆらゆらと浮いている。
これが彼女の魂かな?と思いつつ、触れようとする。
すると、光から糸のようなものが出てくる。太くないその糸により、あっという間に触れようとした右腕が極められていく。
驚きつつも光に声を掛けてみる。
「君を助けに来たよ、何もしないからこれを解いてほしいな」
「其れは無理な話じゃな、小僧」
光の後ろから7歳程の少女が姿を表した。不思議なヒラヒラした服を腰にある大きな帯で締めている。黒髪は腰まで伸び、その目には怒りが浮かび上がっている。
「出来ればこの糸を解いて欲しいんだけど・・・」
「嫌じゃ、分かったらとっとと帰れ。妾はユラとこのまま此処でずっと遊ぶのじゃ」
「この子はユラって言うんだね?ねぇ、ユラさん。もう一度生きてみたくない?」
光が迷いを表すように揺れる。それを見て慌てたように少女が口を開く。
「止せ、ユラ。お主も忘れたのか、あの者共による愚行の数々を!
お主が腹を空かしても、怪我をしても放っといたあの者達の冷き目を。
妾はもうお主のそんな姿を見たくないぞ!」
少女は大きな声で諭している。でも、僕が聞きたいのは・・・
「ねえ、ユラさん。多分だけどその人たちはもう、この世にはいないよ。それに、現世に帰っても僕と仲間が君の力になる。絶対に。
だから、あなたの声でどうしたいか聞きたいな?」
光はより強く揺らいだかと思えば弾け、朧げだが遺体の少女の輪郭を取っていく。
「止せ、ユラぁ・・・!・・・貴様ぁぁ!!」
少女は鬼のような形相でこちらを睨み、手の指から出ていた糸を引き締めていく。
ギリ、ギリ・・・。メリメリッッ。
僕の右腕は既に鬱血が始まり、小麦色だった腕は今や真っ黒に近い。
「何故、ユラなのじゃ・・・」
糸を操りつつポツリと呟く。その瞳からは涙が流れる。
「答えよ!!何故、ユラなのじゃ!
ユラは、家族からも冷たく接され、人の温かさも知らぬまま育った不運な子よ。
何故、またあんなに辛く、険しい世界に戻そうとする!」
やはりと、確信を抱く。この少女はユラを守り、気遣う優しい子なのだ。彼女にも声を掛ける。
「生きたいとユラさんが思ったから、かな。ユラさんは亡くなっても魂が冥界には行かずにずっと自身の遺体の近くを彷徨いていた。まだ、生きたいと思っていると考えるのは不自然かな?」
「な、何故じゃ、ユラよ」
少女は驚きながら光の輪郭に向かって問う。ユラを見守り、気遣ってきた少女のことだ。まさかこの世には未練を残しているなんて思わないだろう。
「・・・から」
小さく澄んだ声が意識の海に木霊する。
「え?」
「お守り様が泣いちゃうから」
「ば、馬鹿者。お主がいなくとも・・」
「お守り様、私のためにいつも泣いてる。私がいなくなったらもっと泣くと思ったから・・・」
そう言うとみるみる内に光の粒子が辺りからユラの輪郭に向かって集まってくる。ユラは光の涙を流しながらお守り様に向かい優しく話す。
「だから、そこの貴方。私を元の世界に連れて行って。まだお守り様から離れたくないの。お願いします」
「分かりました。・・・お守り様、彼女は貴方のためにもう一度、生きてみたいと強く思っています。何卒・・」
お守り様は、その服の袖で目元をグシグシと擦ると、ユラを見つめ無理矢理笑って言い放つ。
「愚か者め、お主が妾から離れられないのじゃろ。良い、良い。思う存分、今世をこの者と楽しんでくるが良い。
お主、名をなんと言う。」
お守り様が僕の目を見つめ静かに問う。
「アイル、アイル・トワイライトと申します」
「そうか・・・アイルよ。
ユラを頼むぞ。妾は此処から見守ることしかできぬ。何かあれば絶対に許さんからな。死ぬ気で守り抜け」
上から光の柱が降り注ぐ。それを見ながら僕は微笑み、
「何を言っているのです。お守り様も此処から出て一緒に行くのですよ」
「えっ?」
そう言うや否や、僕は自由の効く左手でお守り様の手を掴み、右手でユラの背中を押して光の中に入った。
視界が白く反転する中、お守り様の慌てふためく声が響く。
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