60 / 64
第2章 南方戦記編
第1話 シャーネ・ドライアド
しおりを挟む
☆
シャーネ・ドライアドはドライアド村出身である。ドライアド村はキロスカ村の南約50km程の位置にあり、この村の者は皆、姓にドライアドを名乗る。
先月辺りから増えてきた魔物の襲撃事件。このドライアド村も例外ではなく、魔物の襲撃により凄惨を極めていた。
・
・
・
「残るはこの北門の守備隊のみ。最早これまでか・・・」
疲労の色が濃く残る顔で老年の魔術師が呟く。魔術師を多く輩出してきたこの村は、殆どの者が魔術を使える。
守備隊を編成する際も100人規模の中隊を3つも編成し、防衛に当たってきた。
しかし、いくら魔術が使えるからと言っても能力は千差万別であり、満足のいかない訓練を積んだ後の実戦配置である。
村の為に使命感を燃やした若者が、一人、また一人と命を散らす。
100人でゆとりのあった交代制の防衛を続けていたが、被害にあった分だけ負担も増えて行く。ジリ貧の対抗策は今、崩壊を目前にしていた。
「皆さん、まだです。まだ諦めては成りません!」
老年の魔術師の隣で、若い女性が純白に輝く魔石が嵌められた杖を掲げて叫ぶ。
「シャーネ・・・、このままではどうしようも無い。南と東の守備隊も全滅した様だ。この状況でどうしろというのだ」
上空を飛んでいる鷲の視界を共有していた若い男性の魔術師が暗い顔で問う。
彼の魔術は戦闘向けではない為、サポートに徹していた。
上空から仲間の村人が殺される様を見ていたのだろう。顔が青くなっている。
「対抗魔術を撃てる者はこの場で防衛を継続、サポートは要りません。生き残っている村人を連れて北へ逃亡します。ここに居ても命は無いでしょう。この村を破棄します」
「馬鹿言え、歴史と誇りあるドライアドを捨てろというのか!俺は認めないぞ。此処で負けて逃げたら末代までの恥になる!」
「命もなく何が末代の恥ですか!死んでしまうのですよ!?私達の使命は村人の安全の確保。命あっての人生でしょう!」
「・・・」
「シャーネ、お主の案を採用しよう。・・・皆のもの、隊長として命ずる。村人の救助を急げ。
撤退戦に入るぞ、10分後。10分後に此処へ集合じゃ。殿はワシが務める。遅れるで無いぞ!」
そう老年の魔術師が宣言すると、皆の目の色が変わる。サポートに徹していた魔術師が一斉に駆け出し、村の中で避難している村人を救助しに向かった。
「お師匠様、ありがとうございます」
「お礼は良い。此処で防衛していても全滅あるのみじゃ。判断は早めに出さねばな」
視線の先には魔物、魔物、魔物・・・。
眠りについたら夢にまで出てきそうな大群だ。
奴等に向かって2人は火属性の師範級魔術、爆砕火炎弾を放った。
放物線を描いて着弾したそれは火炎の渦を巻きながら火柱が上がる。
魔物のものと思われる血液が降り注ぐ。火柱と相まって空が泣いてるかの様に思えた。
・
・
・
魔物の包囲網を、辛くも突破したシャーネを含めた50人程の村人が北へ向かって、逃亡生活を開始した。
殿や先頭は、特に戦闘が多く魔物に合わない日などはなかった。怪我人もいる為行進速度も遅く、その光景は水溜りで足掻く蟻のようにも見えた。
・
・
・
シャーネ・ドライアドはドライアド村出身である。ドライアド村はキロスカ村の南約50km程の位置にあり、この村の者は皆、姓にドライアドを名乗る。
先月辺りから増えてきた魔物の襲撃事件。このドライアド村も例外ではなく、魔物の襲撃により凄惨を極めていた。
・
・
・
「残るはこの北門の守備隊のみ。最早これまでか・・・」
疲労の色が濃く残る顔で老年の魔術師が呟く。魔術師を多く輩出してきたこの村は、殆どの者が魔術を使える。
守備隊を編成する際も100人規模の中隊を3つも編成し、防衛に当たってきた。
しかし、いくら魔術が使えるからと言っても能力は千差万別であり、満足のいかない訓練を積んだ後の実戦配置である。
村の為に使命感を燃やした若者が、一人、また一人と命を散らす。
100人でゆとりのあった交代制の防衛を続けていたが、被害にあった分だけ負担も増えて行く。ジリ貧の対抗策は今、崩壊を目前にしていた。
「皆さん、まだです。まだ諦めては成りません!」
老年の魔術師の隣で、若い女性が純白に輝く魔石が嵌められた杖を掲げて叫ぶ。
「シャーネ・・・、このままではどうしようも無い。南と東の守備隊も全滅した様だ。この状況でどうしろというのだ」
上空を飛んでいる鷲の視界を共有していた若い男性の魔術師が暗い顔で問う。
彼の魔術は戦闘向けではない為、サポートに徹していた。
上空から仲間の村人が殺される様を見ていたのだろう。顔が青くなっている。
「対抗魔術を撃てる者はこの場で防衛を継続、サポートは要りません。生き残っている村人を連れて北へ逃亡します。ここに居ても命は無いでしょう。この村を破棄します」
「馬鹿言え、歴史と誇りあるドライアドを捨てろというのか!俺は認めないぞ。此処で負けて逃げたら末代までの恥になる!」
「命もなく何が末代の恥ですか!死んでしまうのですよ!?私達の使命は村人の安全の確保。命あっての人生でしょう!」
「・・・」
「シャーネ、お主の案を採用しよう。・・・皆のもの、隊長として命ずる。村人の救助を急げ。
撤退戦に入るぞ、10分後。10分後に此処へ集合じゃ。殿はワシが務める。遅れるで無いぞ!」
そう老年の魔術師が宣言すると、皆の目の色が変わる。サポートに徹していた魔術師が一斉に駆け出し、村の中で避難している村人を救助しに向かった。
「お師匠様、ありがとうございます」
「お礼は良い。此処で防衛していても全滅あるのみじゃ。判断は早めに出さねばな」
視線の先には魔物、魔物、魔物・・・。
眠りについたら夢にまで出てきそうな大群だ。
奴等に向かって2人は火属性の師範級魔術、爆砕火炎弾を放った。
放物線を描いて着弾したそれは火炎の渦を巻きながら火柱が上がる。
魔物のものと思われる血液が降り注ぐ。火柱と相まって空が泣いてるかの様に思えた。
・
・
・
魔物の包囲網を、辛くも突破したシャーネを含めた50人程の村人が北へ向かって、逃亡生活を開始した。
殿や先頭は、特に戦闘が多く魔物に合わない日などはなかった。怪我人もいる為行進速度も遅く、その光景は水溜りで足掻く蟻のようにも見えた。
・
・
・
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
1歳児天使の異世界生活!
春爛漫
ファンタジー
夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。
※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる