おしゃぶりを咥えたイケメン

ハル

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地の巻

7. 天災の時

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 いつものように3人で帰っていると、バスの横を走るトラックの運転手が僕たちに手を振っている。

「ソラ、あんたガンつけた?」

「バカ、何年前の言葉だよ…それに眼つけられて手をふるか!」

「中井舗装?…って書いてたね…誰か知り合い?」

「ひょっとして、4人目の仲間?…」

「まさかぁ…」

そのまさかだった。

トラックを運転していたのは、中井大地なかいだいちソラ達より2歳年上の20歳の青年だ。

何故手を振ったかって?、それは彼の特殊な能力によって同じ仲間だと解ったからだ。

大地はイヤホンを付けると、振動による音を拾う事ができ、たまたま3人がバスの中で会話していた話を聞いてしまったと言う訳なのだ。

「この間テレビで、先頭のトラックの運転手を呼んで謎の女子高校生を探す番組やってたよ…それでね、運転手の人の話を聞いて似顔絵を描いてるんだけど、それが結構炎佳に似てて笑っちゃったよ。」

「え~、そうなの困るよぉ」

「大丈夫だよ、暫くは特殊能力封印しとけばいいじゃない…そしたら普通の女子高校生なんだから…」

「そうだね、その話が出る度にビクッとしちゃう」

「人前で使っちゃったからね…仕方ないよ」
と言う会話を大地が聞いて手を振ったのだった。

3人とは違い大地はというと、自分の能力の事を知ってから、その能力を活かした仕事で儲けられ無いかと考え、道路舗装の会社を立ち上げた。

イヤホンをしながら街中を走って、老朽化した道路の悲鳴を感じ取り、市に報告して事前改修することで、役所では大惨事にならずに行政を行えるので、重宝されているのだ。

そんな時に、あの大雪の渋滞を解消したのが、自分と同じように特殊な能力を持つ人間で、しかもその子達に会えて嬉しかった。

数日後の週末、大地は焦っていた。
近く大きな地震が起こる兆候を感じながらも、何処で起こるのかもわからないし、何処に連絡したらいいのかもわからずやるせ無い気持ちになっていた。

気象庁に電話をかけ、新潟方面で地震の予兆がないか尋ねてみても、とくにそのような報告は無いとの事だったので、仕方なくSNSに"#2日後新潟方面で大きな地震起こります。"とあげた。

流石にひどいコメントばかりが返ってきたが、今の大地にはそれくらいしか出来る事が無かった。

前日にはテレビのワイドショーまでもが、こんなイタズラは辞めて欲しいと取り上げてくれたのが功を奏した。

テレビを観ていた視聴者からそっち方面の知り合いに連絡する人もいてくれたからだった。

「テレビで地震の事やってだからさぁ、まさか無いとは思うけど気おつけてなぁ…」

そして地震が起きた。
大きな揺れで家屋の倒壊もあったが、地震の規模の割には、比較的怪我や火災は少なく難を逃れた人が多くいたようだ。

そして、怒りの矛先は検証もしないで笑いのネタにしたテレビ局や、ひどいコメントを送りつけた人達に向けられた。

大地としては、怪我や亡くなった人が少なかったと聞いただけで良かったと思えた。
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