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6.悪戯
ピザ
しおりを挟む「…マジで言ってる?」
「うん。」
付き合ってもない男の家に泊まるってこいつどういうことかわかってる?
「いや、あのさ…。」
「早く住所言って。」
俺の声を遮った未蘭乃の声に迷いはなかった。
俺が運転手に住所を伝えると、運転手は頷いてナビを設定した。
「なんで盗撮が投稿されたと思う?」
「あー、イタズラ?注目されたい、とかいいねがほしいとか承認欲求?」
それもそうだけど、と未蘭乃が口を開いた。
「自分だけが知ってる何かに優越感を得るためってあたしは思ってる。」
「はーん、なるほど。」
未蘭乃は実は勉強ができるできないに関わらず頭がいいんじゃないかと思っている。
賢いというか頭がキレるというか。
俺の住んでいるマンションの前に着くと未蘭乃が振り回して悪いからとタクシーの料金を払ってくれた。
「さすがエース。
やっぱり結構いいところに住んでるんだね。」
「いいところって言っても高校入ってからずっと引っ越してないよ。」
玄関はオートロック。
未蘭乃に番号を教えて部屋に案内する。
部屋は3階。
このマンションは15階建てだからこの中では家賃はかなり安い方だと思う。
上層階には若手のモデルやら俳優が住んでるって噂だけど一度も会ったことがない。
「散らかってるけど…入って。」
今日に限って…家出るとき急いでて寝間着もソファにぶん投げてあるし、ゴミ箱からゴミが溢れそうだし、昨日読んだ雑誌もテーブルに広げたままだ。
「お邪魔します。」
未蘭乃は珍しそうに部屋を見回した。
「テキトーに座ってていいよ。
なんか飲み物出すわ。」
「わかった…。」
未蘭乃はペットキャリーに手を伸ばし、おもちを部屋に出した。
「おもち。いい子にしててね。」
おもちは未蘭乃の膝の上に乗り、キッチンから見たところ取りあえずは落ち着いているようだった。
「炭酸、飲める?」
「うん。」
冷蔵庫にあったサイダーをコップに入れて未蘭乃に渡す。
「それで?
お前なんで家出したの?
親父さんと喧嘩?」
「…違う。
パパがあたしのいない間に家に女の人招いていわゆるそういうことしてた。」
さすが元日本代表。
やっぱモテるんだろうなとは思ってたけどやることなかなかだな。
「…あー、俺は親のそういうのに出くわしたことないけど普通に見たくないよな…。」
未蘭乃は首を横に振った。
「いや、見てはないんだけど。
隙を見て入ったリビングにバスローブ脱ぎ捨ててあったし…。」
未蘭乃が俯いた。
「パパが…。
本当は女の人招き入れたこととかセックスしてたとかそんなことよりもその人にこの家に一緒に住もうって言ってたのが一番悲しくて辛かった。
あたしとママと過ごした思い出のある家のはずなのに。
…なんで簡単にそんなこと言えるのって…。」
ポロポロと涙が溢れておもちの頭に落ちた。
おもちが心配そうに未蘭乃の顔を見つめる。
「おまけにおもちのことも締め出して。
色んなことが重なって飛び出してきちゃった。」
馬鹿でしょ、あたし。
そういって笑った未蘭乃の顔は今までに見たことがないくらい悲しい笑顔だった。
「飛び出してきたのは俺も同じだよ。
ジャンに色々言われてブチ切れて出てきた。 」
「そうだったんだ。
ハルキがブチ切れるなんて相当ムカついたんだね。」
未蘭乃、お前が原因だよ。
あいつがお前のことを貶すようなこと言うから頭にきたんだ。
「あー、まあな。
てか疲れたし腹減ったからなんかデリバリーして今日はゆっくり映画でも見よう。
俺は今最高にピザとビールの気分。」
「ピザか。いいね。」
未蘭乃がごめんね、といっておもちを膝から降ろして俺の隣に座った。
「どれにする?」
「えー。
シーフードかマルゲリータかな。
ポテトも食べたい。」
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