病弱な私はVRMMOの世界で生きていく。

べちてん

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138話目

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兄の速度は相当なものだった。

エフェクトが出ていたためにおそらく何らかのスキルを発動したのだろう。

そこそこの距離まで飛ばしていたはずがあっという間に私の元までたどり着いている。

金属が擦れ合う音が広大な森の中に響く。

後方から爆発音が聞こえた。

おそらくあちらも戦闘を始めたのだろう。

あいつらが3対3で負けるわけがないのでそこまで心配はしていないが、万が一のためにできるだけ早く戻りたいところだ。

ただ、この楽しい戦いを早く終わらせるのはもったいないなとも思ったり。

「ずいぶん余裕だね。」

打ち合いのさなか、わずかに残った脳のストレージを使って語り掛けてきたのであろう兄は振っても振っても弾かれる攻撃に苛立ちを隠せていないようであった。

しかし、振るペースが崩れない。

安定して一定のペースで攻撃を加えられるのはいいことだ。

いいことなのだが、彼の弱さはそこだろう。

一定のペースで攻撃すると、相手も一定のペースでそれを防げる。

ただのリズムゲーになってしまうのだ。

変則的な攻撃を加えること、戦いはリズムゲーから変化する。

様子をうかがうために軽く握っていた双剣を強く握り、一気に力を籠める。

引き付けるようにして横に流していた攻撃を真正面から受け止め、一気に兄を後ろへと押し込む。

突然やって来た私からの攻めにより体勢を崩した兄は、地面を蹴り、大きく弧を描きながら1度後ろへと下がっていった。

ただ、私は一気に兄のところまで再び攻め、問題点を教えるかのように変則的な攻撃を繰り出した。

リズムや力、攻撃の位置や角度をずらしながら何度も何度も打ち付けていく。

兄は私の動きを観察してその攻撃を防ぐだけで精一杯になってしまったようで、あちらから反撃してくる気配はない。

左足に一気に力を入れ、右足を大きく斜め上に振り上げる。

その先にあったのは兄の顔だ。

兄の顔の上で跳躍を発動するイメージで一気に回し蹴る。

もろに受けた兄はのけぞるような格好で一直線に後方へと飛んで行く。

10mほど空中を進んだ後、大きな木にぶつかって止まった。

私は近づきながら投げナイフを兄に向かって飛ばす。

あたまをめがけて飛ばした短剣は先ほど兄がぶつかった大きな木に突き刺さり、スキルの効果で手元に帰って来た。

兄は私がナイフを飛ばした瞬間に横に飛び、勢いを殺すように地面に左手をついた。

そして、両足で一気に踏み込み、今度は左右に飛び跳ねながらこちらへと飛んでくる。

ただ、先ほどの単調な攻撃とは異なり、独特な読みにくいリズムを刻みながらこちらへ向かってくる。

自身の弱みをこの一瞬のうちに克服したのだ。

きっとこれから私の兄はもっと上まで上がってくるのだろう。

そう心の中で思いながら一気に兄の方へと走っていき、すれ違いざまに首を刎ねた。
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