病弱な私はVRMMOの世界で生きていく。

べちてん

文字の大きさ
148 / 193

147話目 最後

しおりを挟む
Sakuraの武器は以前も言っている通り刀だ。

軽く上方向にしなった西洋風の刀とは異なるこの日本風の刀、和のテイストを感じる浴衣風のその戦闘服、長髪の黒髪をなびかせながら美しい型を披露する姿は眼福である。

いやいや、そんなこと言ってられない!

今は戦闘中である。

戦闘相手に見とれるとか阿保かいッ!っていう感じだ。

Sakuraは真面目な性格だ。

それ故しっかり型にはめた攻撃が来る。

大きく振りかざした刀を一直線に下に下げるあのやり方、素早いその動きと正確な狙い方。



柔道と剣道は密接な関係がある。

戦国の時代、自身の持つ槍や刀などの武器が折れたり使い物にならなくなってしまったとき、どのようにして相手を倒すかと言えば、柔術である。

柔道とは、剣を使わない剣道である。という言葉も存在する。

実際、日本刀などは一度相手を切るとこれ以降はほとんど使い物にならないといったこともあったらしい。

ゲームだからそのようなことはないが、Sakuraは柔術の練習も欠かさずしている。

メルとSakura、メインで使っている武器は違うものの、2人も格闘技ができるということを考えると似た者同士なのかもしれない。

音符猫がこちらへ向かってきているSakuraとメルの足元1歩手前辺りに火球を落とす。

それを軽々ジャンプで避けると、その先には私が待っている。

通常の火球では起きないような爆発が起きていることに気が付いたのはSakuraだけであり、メルはどうやら気が付いていなかったらしい。

Sakuraは舞い上がった砂の中から私が出てくることを予想し、横に一気に逸れた。

ただ、メルはその判断が遅れてしまった。

双剣使いらしからぬ蹴りを脇腹に入れてくるユウヒ、メルはそのまま左方向へと吹っ飛んで行った。

跳んだ先は左方向、私と音符猫は左、飛んで行く先であるメルから見て右方向ではなく、メルから見て前の方にいるため、ただ吹っ飛んで行くだけでそこまで大したことにはならない。

そう判断したSakuraはカバーに駆け寄る選択を取らず、再び私に突撃してきた。

ただ、その選択は吉とは出ず、凶と出る。

私から見て左方向、その先にあるのは雪山と、そのふもとに広がる暗緑色の樹海。

その樹海の中にメアリーとアルミが隠れていることをCentres Gamingは知らない。

Sakuraはメルから目をはなし、自身の敵であるユウヒの方へと向き合う。

ただ、何もないと思っていた樹海側、視界の端に映ったのは前回大会で見た、一緒に狩りへ行く仲の存在、メアリーであった。

Sakuraの頭の中を様々な思考が駆け巡る。

先ほどあった「そちらと同じだよ。」という返事、どうやらあれは“そちらと同じで2人だよ”という意味ではないらしい。

いや、その言葉可笑しいんじゃないのか?

そちらと同じだよ、というなら、4人組パーティーのFoxAgainは私たちと同じように2人が落ちていると考えるのが普通の話だ。

全く同じではないじゃないか。

8人の敵の中に2人で突っ込ませるFoxAgainのイカれた戦い方、明らかに4対4対2では不利なことはメアリーもわかっているはずだ。

ただそれをさせる。

前回私たちをボコしたSunsetの2人でそれをやるならまだわかる。

ただ、1人は今回新規でSunsetの2人と合流した音符猫である。

何もかもがおかしい。

ただ、そう思ったところでもう遅い。

「それが狙いだったか……。」

茂みの中から出てきたメアリーは手に大剣を握ってメルの着地点まで向かう。

メルは空中で方向を転換するスキルを持ち合わせてはいない。

そのまま地面に対して弧を描くように落ちていき、倒された。

それが合図だったかのように、一気にこちらに詰めてくるFoxAgain4人組の姿がSakuraの目には映った。







「試合終了ッ!!SF祭バトルロワイアルプロの部、優勝はFoxAgainだッ!!」
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

処理中です...