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180話目 フレンチ
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「おまたせ」
しばらくリビングでだらだらとテレビを眺めていると、2階からのとことこと響く足音とともに夏海がやって来た。
「お疲れ様」
「ありがと。もう指輪完成したから明日取りに来てね」
「もう!?早いね」
あまりの完成の速さに驚き間髪入れずに返事をすると、まあ指輪は小さくて作りやすいからといいながら手をひらひらと振り、着替えるためにリビングを出て行った。
双剣の時もそうだが、この作業スピードからは考えられないほどの素晴らしい装備を作る能力は、彼女がゲーム内最高レベルの鍛冶師なのだと思い知らされる。
それに、その鍛冶師としての実力を、スキルのおかげで戦場でも披露できるというチート、そして彼女自身もアタッカーとしての役職をしっかりと担えるほどの実力の持ち主。
化け物だといわれる私からすると、そして一部の詳しい人間からすると、夏海、もといメアリーの方が化け物じみているということは明らかだろう。
まあ、実情はただのお怠けな奴だけどね。
「うい、おまたせ」
またしばらくぼうっとテレビを眺めていると、扉が開いていつもより多少おしゃれをした夏海がやって来た。
「あれ?まだ着替えてなかったの?」
「え?着替えてるけど……」
外用にしっかりと着替えをしたつもりでリビングにいたのだが、どうやらこの服ではいけないらしい。
そして、彼女はそんな服では入れないほどの高級店予約したから、しっかり着替えるように、と言ってくる。
そういうときは毎回相談をしてほしいと思うのだが、思い立てば流れに身を任せる彼女を止めることはできないのだ。
いつもの数倍は気合いを入れた服にササッと着替えてしまうことにする。
「私、電車って初めてなんだけど……」
「うそ!?まじで!?」
「うん。まじで」
どうやら今日はいつもの同じマンション内のお店というわけではないらしく、17歳にして初めての電車を利用する日らしい。
駅の中は新層が解放されたときのボス部屋前のような込み具合で、人の多さにくらくらとしてくる。
とてつもない爆音を立て、5メートルくらい離れていないと危ないのではないかと思うレベルの速度で駅へと入って来た電車に乗り込んで数駅で降りる。
その駅からしばし歩いたところに今回の目的地があった。
「えぐ」
その1言でしか表せないような外装をしたフレンチ、それはあの服装ではダメだったと今になって思わせる。
「さ、いこ」
「え、ちょ!」
ためらっていると、夏海が手を引いて一気に私を魔境へと連れ込んでいってしまった。
「美味しかった……」
ちまちまと出てくるフレンチ、早く全部出してくれと思うのを抑えながら食べた食事は、そんな愚考を吹き飛ばすような圧倒的な味であった。
完全個室でゆったりと、暖かみのある照明の下で食べる高級フレンチ。
あまりにも印象が強すぎて、今ここで明確に思い出せと言われれば思い出すことは優に可能だろう。
ただ、それを言葉に表せと言われればそれは厳しいかもしれないが。
食後にあまり長居しても雰囲気で委縮してしまうだけなので、ササッといつもの家に戻り、またいつもの定位置に着席する。
横で夏海は日本酒をちょびちょびと飲んでいる。
まだ飲むのかと言いたくはなるが、まあいつも通りの飲兵衛なので写真を撮ってSNSにあげるくらいにしてあげた。
『また飲んでるよこいつ』
『リアル写真感謝です』
『飲みすぎ』
『ユウヒちゃん、ほどほどで止めてあげてね……』
やはり夏海は人気のようで、上げてすぐにファンだかアンチだかわからないような彼女独自のノリをマスターする視聴者の皆から返信が届く。
そんな返信をにやにやと眺めながらまた今日は終わりを迎える。
おそらく次のCGカップでは私と夏海は敵同士になるだろう。
実は今までそこそこ長くともにやって来たけど、ちゃんと戦ったことが無かったりする。
初めての戦いを、たくさんの人が見守る大舞台でできるのだから、今から楽しみだ。
「夏海、CGカップ私以外に負けないでよ?」
そう挑発的に言うと、ちびちびと動かしていた手を止めてこちらを見てはにやりと笑う。
「そっちこそね」
そう一言告げて、またルーティンを再開する。
しばらくリビングでだらだらとテレビを眺めていると、2階からのとことこと響く足音とともに夏海がやって来た。
「お疲れ様」
「ありがと。もう指輪完成したから明日取りに来てね」
「もう!?早いね」
あまりの完成の速さに驚き間髪入れずに返事をすると、まあ指輪は小さくて作りやすいからといいながら手をひらひらと振り、着替えるためにリビングを出て行った。
双剣の時もそうだが、この作業スピードからは考えられないほどの素晴らしい装備を作る能力は、彼女がゲーム内最高レベルの鍛冶師なのだと思い知らされる。
それに、その鍛冶師としての実力を、スキルのおかげで戦場でも披露できるというチート、そして彼女自身もアタッカーとしての役職をしっかりと担えるほどの実力の持ち主。
化け物だといわれる私からすると、そして一部の詳しい人間からすると、夏海、もといメアリーの方が化け物じみているということは明らかだろう。
まあ、実情はただのお怠けな奴だけどね。
「うい、おまたせ」
またしばらくぼうっとテレビを眺めていると、扉が開いていつもより多少おしゃれをした夏海がやって来た。
「あれ?まだ着替えてなかったの?」
「え?着替えてるけど……」
外用にしっかりと着替えをしたつもりでリビングにいたのだが、どうやらこの服ではいけないらしい。
そして、彼女はそんな服では入れないほどの高級店予約したから、しっかり着替えるように、と言ってくる。
そういうときは毎回相談をしてほしいと思うのだが、思い立てば流れに身を任せる彼女を止めることはできないのだ。
いつもの数倍は気合いを入れた服にササッと着替えてしまうことにする。
「私、電車って初めてなんだけど……」
「うそ!?まじで!?」
「うん。まじで」
どうやら今日はいつもの同じマンション内のお店というわけではないらしく、17歳にして初めての電車を利用する日らしい。
駅の中は新層が解放されたときのボス部屋前のような込み具合で、人の多さにくらくらとしてくる。
とてつもない爆音を立て、5メートルくらい離れていないと危ないのではないかと思うレベルの速度で駅へと入って来た電車に乗り込んで数駅で降りる。
その駅からしばし歩いたところに今回の目的地があった。
「えぐ」
その1言でしか表せないような外装をしたフレンチ、それはあの服装ではダメだったと今になって思わせる。
「さ、いこ」
「え、ちょ!」
ためらっていると、夏海が手を引いて一気に私を魔境へと連れ込んでいってしまった。
「美味しかった……」
ちまちまと出てくるフレンチ、早く全部出してくれと思うのを抑えながら食べた食事は、そんな愚考を吹き飛ばすような圧倒的な味であった。
完全個室でゆったりと、暖かみのある照明の下で食べる高級フレンチ。
あまりにも印象が強すぎて、今ここで明確に思い出せと言われれば思い出すことは優に可能だろう。
ただ、それを言葉に表せと言われればそれは厳しいかもしれないが。
食後にあまり長居しても雰囲気で委縮してしまうだけなので、ササッといつもの家に戻り、またいつもの定位置に着席する。
横で夏海は日本酒をちょびちょびと飲んでいる。
まだ飲むのかと言いたくはなるが、まあいつも通りの飲兵衛なので写真を撮ってSNSにあげるくらいにしてあげた。
『また飲んでるよこいつ』
『リアル写真感謝です』
『飲みすぎ』
『ユウヒちゃん、ほどほどで止めてあげてね……』
やはり夏海は人気のようで、上げてすぐにファンだかアンチだかわからないような彼女独自のノリをマスターする視聴者の皆から返信が届く。
そんな返信をにやにやと眺めながらまた今日は終わりを迎える。
おそらく次のCGカップでは私と夏海は敵同士になるだろう。
実は今までそこそこ長くともにやって来たけど、ちゃんと戦ったことが無かったりする。
初めての戦いを、たくさんの人が見守る大舞台でできるのだから、今から楽しみだ。
「夏海、CGカップ私以外に負けないでよ?」
そう挑発的に言うと、ちびちびと動かしていた手を止めてこちらを見てはにやりと笑う。
「そっちこそね」
そう一言告げて、またルーティンを再開する。
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