病弱な私はVRMMOの世界で生きていく。

べちてん

文字の大きさ
189 / 193

188話目

しおりを挟む
天からマップを見れば、あれほど離れていて戦闘にはならないだろうと思われていたユウヒと魚肉ハンバーグとの距離がどんどんと縮まっていく。

ただ、それはフィールド上にいる者たちからは一切わからない。







序盤の方に獲得した超加速。

さすがに長期間使っていればその速度にも慣れてくるわけで、馬が見れば涙を流してひれ伏しそうな速度で湿地帯を駆けていく。

(うーん、なかなか敵がいないなぁ……)

付近に1つや2つパーティーあるだろうから、人数少し削って帰ってこようと思ってたんだけど、どうやらいないみたいだ。

戦闘の音もしない。

(そろそろ引き返す?って!発見!)

引き返そうと思ったその時、一瞬だが敵の姿をとらえることができた。

数は4で、おそらくメアリーのチームではない。

(やるか?やろう!)

私はメアリー以外は、いや、メアリーにも負ける気はないので。

サクッと倒して手柄をゲッチューしていきたいと思います。

「みんな!敵が来たよ!」

「periさん、頼んます!」

「頼まれた!……けど、もしかしたらちょっと厳しいかも……」

「どうしたんすか!?」

「……ユウヒ選手だ」

「「「あ」」」

そんな自身を怪物か何かとでも言いたいような会話が繰り広げられているとはつゆ知らず、着々と距離を詰めていく。

periはRayWaysEsportsというプロチームに所属している正真正銘のプロプレイヤーだ。

サンライズファンタジーにやってきて初めて発揮されたそのゲームの腕前は、数多くのプレイヤーを魅了するという。

FoxAgain、CentresGamingに次ぐ国内第3位のチームの司令塔で、主に遠距離攻撃を得意とするプレイヤーだ。

「よしッ、やりますか!」

そう気合いを入れ、アイテムボックスから双剣を召喚してはいつも通りに逆手に握る。

ほう、と息を吐いて集中力を高めて相手を眺める。

1対4で、1人はプロ。

気を抜いていては倒されてしまう。









「さぁ!ついに今大会初の戦闘が始まります!初戦はRWEのperi選手率いる“魚肉ハンバーグ”対“NiceNeet”です!ただ、“NiceNeet”側はユウヒ選手ただ一人!」

「いやぁ、さすがのユウヒ選手と言えど、いきなり1対4はなかなかにハードなのではないでしょうかね」

「はい!こちらから見れば圧倒的不利状況なのはユウヒ選手であり、相手は国内屈指の司令塔率いるチームです!1人でどこまで張り合えるか!」

:まさかの1人凸!
:おおおおおおお
:ユウヒちゃんがんばえ~!
:まじでがんばってくれ
:第1回大会、第2回大会を思い出す
:さすがに魚肉が勝つだろ
:無謀
:がんばれ!
:さすがに無茶では?

見たいところを的確に映し出す配信カメラは、1対4の激闘を角度を変えながら映し出している。

periの放つ鋭い魔法をぬかるんだ地面をものともせず、軽々とかわしては、流れ際に攻撃を重ねていく。

踏み込んできた片手剣使いは足をぬかるみに持っていかれ、それを待っていたかのように地面から現れたツルによって縛り付けられてしまった。

藻掻こうとしても、完全に腕をロックされてしまっているために抜け出すことができない。

藻掻いている間に、どこからともなくやって来た短剣が首元を引き裂く。

そして、流れ作業のようにほかの2人も倒してしまった。

「……まじですか」

「ちょっとこれは信じられません!4対1の圧倒的不利状況が、あっという間に1対1の状況まで持ってこられてしまいました!しかもperi選手は遠距離攻撃を得意とする魔法使いであり、形勢逆転です!」

「いやぁ、明らかに無謀かと思ったんですけどね……。さすがはゲーム最強と呼ばれるだけありますね」

「そうですね。これを見せられてしまえば、もう全国の双剣使いがゲームをプレイできなくなりそうですね」

:ま???
:はぁぁぁぁああ??????
:まじでどゆこと?
:おかしいだろ
:うますぎる
:はやすぎだろ
:どうやってるんだ?
:ええ?スキルほぼ使ってないやん。あれプレイヤースキルってこと??
:マジでうますぎるだろ
:参考にならねぇ……

一瞬向き合ったユウヒとperi、ただすぐさま始まった戦闘は圧倒的としか言えなかった。

魔法使い対双剣使いでは、明らかに魔法使いが不利すぎる。

この圧倒的に力でねじ伏せる1対4の戦闘は、瞬く間に切り抜かれ、様々なところへと拡散されていくこととなる。




☆------------☆
いつも読んでくださりありがとうございます。
先日、私のTwitterアカウント(@bechiten)を作成しました。くだらないことばかり呟いて、小説関連はほんとにわずかになるかと思いますが、もしよろしければ覗きに来てくださるとうれしいです。よろしくお願いします。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...